「先生と一緒」 星奏学院学内音楽コンクールが終わってからも、日野香穂子のバイオリン練習は終わらない。 「この間の課題を難なくクリアしたな、日野。最後の4フレーズも完璧だった。」 紘人がふと時計を見てみれば、時刻はもう18時になろうとしていた。遅くまで残っている生徒にも、帰るように義務付けられている時間だ。 「・・先生。私、帰りたくないです・・・」 紘人が面倒くさそうにそう言うと、香穂子は少し唇を尖らせて紘人を見つめた。 「・・先生は、私とこうしている時間が嫌ですか?」 紘人の言い分は最もなことで、責められるべき所は何もない。 「・・・私、先生と・・・・」 身長差もあることで、少しだけ瞳をウルウルさせながら上目遣いで紘人を見つめてくる香穂子は、紘人の中では反則事項でしかなかった。 「ハァ~・・・・日野。これでいいか?」 思い描いてなかった、紘人の腕の中。こんなに温かくて、優しいなんて・・・少しだけ煙草の匂いも感じられて、紘人の腕の中にいるのだなぁ、と感じられる。 「!!」 香穂子は、紘人にいわゆる『デコチュー』をされたことで、完全に思考が停止してしまっていた。まさか、まさかそんなことをしてくれるとは思ってなかったから。 「あ・・あの。せん、せ・・・」 紘人の言うことが、左耳から入って右耳から出ていってしまいそうだ。その位、香穂子の中では何も考えられなくなっていて、驚くことしか出来なかった。 「・・明日、また来るんだぞ?お前の為に、俺はずっとここで待っているから。」 香穂子の耳元で甘く囁かれる声。それが大好きな紘人のもので、『待っている』なんて言われたら『No』と言える訳がない。 「せ、先生・・・はい!私、また明日来ます!先生の為に、必ず弾きに行きます!」 このまま『大好きです、先生』と言いたかった香穂子だが、何とか押し止めた。喉元まで出かかっていたが、それは紘人との約束。想いは、口に出来ないから。それを音色に託す為に・・・・ 「おー。待ってるぞ、日野。また明日な。」 紘人とこうして一緒にすることに満足した香穂子は、笑顔で手を振って紘人に挨拶した。紘人もまた、そんな香穂子を笑顔で見送る。 「明日も頑張ろうっと!先生の為に・・・・」 紘人のことを思い浮かべるだけで、香穂子は楽しくて、幸せな気分になれてしまう。紘人には直接言えないけれど・・・・ 「・・先生、大好き。」 香穂子は小さくそう呟いて、自分で照れながらも、ずっと紘人のことを考えては、幸せに浸るのだった・・・・・ END. |
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