眺めせし間に



雪が降り、世界が白く塗り込められていく。
何度も王奕はそれを見た。

白一色の世界はその度その度に美しい。
昨日も今日も、一年前も一昔前も。
手付かずの自然のままのあの時代にも、ひとの営みがあまねく広がるこの時代にも。
何度でも。

遠い遠い昔の、遠い遠い星のかなたでも。

遥か上空で昇華した繊細な六角の花が世界を染めた。
何度も王奕はそれを見た。

雪は何をも語らない。
そして熱く語る人々を静かに包む。
雪は何をも思わない。
ただ思いなす人々を美しく飾るのだ。

かくあれかしと思うのに。

「口惜しや」

彼方の呟きが聞こえる。
似た光景が目に映るほどに彼女には違いが際立って見えるのだろう。
雪見も忘れる強い想いがこの世界を動かしている。

「・・・・・」

王奕は未だ語らない。
美しい白い世界をただ眺める。
同胞の呻きを耳にしながら。

この世界を操ることは愚かしい。
そうは思えど強い意思は哀れでもあり愛しくもあり。
操られる世界も哀れで愛しい。そうは思えどまだ何も誰にも語れない。

あと幾度雪を眺めたら、語るべきときは来るのだろう。
語るべきときは来るのだろうか。
そのとき己は語るのだろうか。

どんな目をした誰に、この残酷な事実を告げることができるのだろう。
そして哀れな彼女の敵となるのだ。

「・・・・・」

雪は何をも思わない。己もそうであることを許されたなら、
黙って自然に溶け込んでしまえたならば幸せだったのかもしれないが。

彼女ともうひとたび心穏やかに雪見ができたなら。
強くしたたかな眼を持つひとにこの世界を委ねられたら。

思うことは希望でもあるから。
故に彼はいましばし、眺め語らず思いを抱える。
降る雪は故郷と同じく美しい。


旧正月も過ぎながらぎりぎり寒の内ですが。
お年始のご挨拶をくださったK.K.さまにお礼状です。
無表情のようなそれでも大きな眼が眺めるものを書きたくて。
でも頂いた絵の中でいちばん好きなのは太公望の眼なんですけど。

王奕といえばデンキヒツジ、連載当時封神サイトでご案内頂いて読んだのですが。
実はいまひとかけらも物語は思い出せず、あらすじを見てふーんと思うていたらく。
けれど漠として寂しい夢、という印象は強く、彼にもその印象を抱いています。

K.K.さま、素敵な絵をありがとうございました。

04.02.01 水波 拝

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