滴るひかり



さわさわさわ、と薫る風が頬を撫で、児は目を開けた。
慌てて起き上がり辺りをきょろきょろと見回している。
きっと眠り込んでいた自分に気がつかなかったのだろう。
そうして眼をこすり目覚めたことを理解すると、あらためて周りを見渡し羊を数えた。

羊は全部いたようだ。
幼い顔に安堵を浮かべて児はふたたび草の上に腰を下ろす。
やさしい風が変わらずに彼の身に吹きつけている。
我知らず子どもは笑った。

からだの内からわけもなく穏やかにこみ上げてくる笑いに任せながら、
けれど子どもは自分が笑う理由を知っていた。
だって、夏がきたのだ。
日が降りそそぎ雨が降り、草が生え伸び、羊が馬が肥えていく。
いま目の前で母羊に添うている乳飲み仔も、もうすぐ自分で草を食み、あたりを駈け回るようになるだろう。

広い草原、広い空。
笑い収めてころん、と児は体を倒す。
太陽は何時の間にかもうあんなにも高い。
記憶のなか凍える寒さに恋しく思ったそれはもっと大地に近かったはず。
見上げる瞳を光が刺して、彼は目を眇めた。
あんなに高いのに。あんなに遠いのに。
手が届かなければ届かないほど、ここには熱が確かに届く。


眼を閉じると頬にあたる陽をいっそう感じた。
それが嬉しくてそのままじっとしていると、ふと、ざらついた湿った感触。

「メェェェ」

吃驚して眼を開けた児に驚いた仔羊が、母親の処に跳んで戻った。
まだ乳しか知らぬ柔らかな舌で子どもは頬を舐められたのだ。
初めての夏を迎える羊にとって、世界は不思議なことばかり。
たくさんの好奇心が母から彼を一歩づつ切り離してゆく。
そのさまは子どもの眼にも微笑ましい。

濡れた頬にさわっと風が冷たくあたり、それすら可笑しくて児はまた笑った。
可笑しいのは夏のせいなんだとおもった。
あったかくって、すくすく伸びて、外へそとへと広がってゆく。
楽しくなくちゃうそだとおもった。

いちねんじゅう夏だといいのに。

そんな考えがふとよぎり、呂望は自分に慌てた。
ぐいっと袖で頬を拭い、首を振る。
そしてもういちど太陽を見上げた。

あれは欲しがるものではない。

その見上げる高さ遠さそして暑さが彼を肯定している。
夏はうれしい。
けれど手の内に握りこむものじゃない。


陽が降り注いでいる。
やさしい風が吹いている。
草がそよぐほど伸びている。

ただわけもなくからだのうちから笑いながら、手の届かない溢れる光を身に浴びて。
伸びてゆくのはひとの児も。


羊は春に生まれ、2〜5ヶ月で乳離れするとのこと。
乳離れ後1才未満の仔がいわゆるラムです。
あ、毛刈りの時期は出産のちょっと後くらいかな。
と言うわけで上記の彼らはまだつんつるてんだと思います。
一押しの羊サイトは羊のいる風景(八ヶ岳オーガニック)。
「ペレのあたらしいふく」から始まるところがいいですv
(追記:サイトはありますがそのページはなくなったみたいです(-_-;))

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