さああああ、と雨が降り続いている。
止むことなく耳朶を打つ音が心地好い。
ふと蓬莱島管理コンピューターから目を離して外を見ると世界は白く煙っていた。
またすぐに視線は画面に戻る。
今日中に片付けておきたい仕事はまだまだあるのだ、と思いなおして。
管理システムの不具合を調整し、居住区の整地計画も仕上げて、と。
そう言えば最近C地区のトラブルが多いとパトロール部隊が言っていたっけか。
O-157もまだ少し流行っているみたいだし・・
仙人界の教主はなかなかに忙しい。
人の上に立って働くのは嫌いじゃないからね、と楊ゼンはくすっと笑った。
忙しいのも嫌いじゃない。
楊ゼンのヤロー、コキ使いやがって、と誰かが言っていたのも知っているけど。
本気じゃないって分かっているから気にもならない。
まあそもそも太公望師叔や師匠ならいざ知らず。
他の人の言うことなんてもともと気にはしないけれどね。
あ、でも。
「・・・あんたも1人で抱え込むタイプなんだな。」
そう言えば煩い存在がある。
「休みはちゃんととりなよ。・・・。なんでこうみんな無理するかな」
彼は途中の言葉を飲み込んだけれど。けれどそれは聞こえた。
「聞仲さまもそうだった」と。
彼は昔もそうして世話を焼いていたのに違いない。
そしてまた聞仲も、聞き流そうと考えつつも、ついつい彼の言葉に気を留めたろう。
きっとそうに違いない。
楊ゼンは席を立ち、窓を開けた。
何時の間にか雨は止み、世界は茜色に染まりはじめていた。
おまけ・・と言いますか、蛍を書き始めていたら、こんな風に話が転がって。
どうしても蛍とはくっつかないと早々に分かったので切り離し。
よって時は(亭主の中では)蛍の直前ですが、全くお話は繋がってません。
端折った、というか入れられなかったところもあるので、張奎くんと楊ゼンさんでもうひとつ書きたいな。