鬼やらい



一人が犠牲になって、二人を助けられるのなら、犠牲は必要だよね。
二人を助けるために、三人が犠牲になるのなら、僕はその二人を見捨てるよ?
そう言って、いつものように微笑んだ僕の目を、君はじっとじっと見て。
そして結局、何も言わなかったね。


君にとって残酷な言葉だってことなんて、十二分に知ってたよ。
僕が残酷さを承知で口に出していること、君だってもちろん、気づいてたでしょ?
気づかないには、君はあんまり聡すぎる。
そう、僕は、君を傷つけるつもりで言っているんだよ。
傷つかないには、君はあんまり脆すぎる。

君は聡いから、あんまりあんまり聡いから。
僕の言葉を受け流すことは出来ないね。
そこに真実を、見出してしまうから。

君は脆いから、あんまりあんまり脆いから。
僕の言葉を受け入れる自分に、傷つくんだ。


君は僕の言葉を受け入れる。
その決心はとうの昔に出来ている。
仙界にいるくせに、人間のいとなみのことばかり考えている君。
僕が言わなくたって、君は一人で何十回も、何百回も自分に聞いた。
そのとき自分はどうするか。



君は心を鬼にすることが出来るだろう。



君は脆いから、あんまりあんまり脆いから。
傷ついて、ひとり無言でうめくとき、鬼は君を呑み込まない。

君は聡いから、あんまりあんまり聡いから。
君が傷ついたことに喜んだ、僕の心を読んだろうね。

いつまでも聡く脆くあるように、心から祈ってるよ、望ちゃん。




節分です。みんなに豆まきをしてもらおうと思ったのですが、できず。
かわりにするすると鬼の話が出てきました。
最初のうちは、鬼は傷つけることをためらわない普賢くんだったのですが、
書いているうちに望ちゃんだったことが分かりました。
普賢くんは豆まきをしているのです。

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