宝石の価値



「紂王さま

耳元を舐めるような声をわらわ自身にも心地よく聞きながら、囁く。
「あそこに見える妊婦の胎の児が欲しいわんv」
「何・・・?」

あはん。わらわの功夫もまだまだ足りないのねんv
久しぶりに紂王さまが浮かべた戸惑い。
くすくすと笑いながらわらわは羽衣を振ろうとして、止めた。

その表情を堪能する。

そうしながらも、上目づかいの視線を向けて、すこし瞳をうるませて。
凝とみつめて三瞬の間。
陛下が視線を外したそこへそっと声を重ねる。しおらしさに満ちた風情が肝要だわん。
「わらわのお願い・・・聞いてくだらないの?」

そしてとどめに、一粒の涙。

「・・あ、ああ」
ちょろいわんv
誘惑の術に頼らない久々のお遊びに、わらわは満足を覚えた。

手に入れたモノはその瞬間興味を覚えなくなったけど。
ちょっと便利な武器を使い過ぎたかしら

もしかすると術より強い最大の武器。瑞々しく零れるそれは宝石。
手強い男の前で流すのは愉快だわん。
けれどこれに弱い男の前なら。

たぶん流すほどの価値もなくなってしまうわねん。


バレンタイン、なんですけどそうなってないですね・・・。
涙は男性の最大の武器だと女性が言うなら、 それは男性蔑視だと思っています。
涙は男性の最大の武器だと男性が言うなら支持します。
短いけれど書きたかった政治ものでした。ネタそのものは安能先生版です。

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