一陽来復



悲しいとはどういうことか、オレにはよくわからない。
ただそいつの虚ろな目が気になったのだ。


天化のヤツが死んだと知ってから、こいつは一言も話さない。
何も見ていない、聞いていない。
もとはこいつの家だったという壊れた屋敷でひとり一日動くことすらしないのだ。
なぜ天祥がそうしているのかオレには全くわからない。
わからないから近づいた。

オレを見た天祥は、耳を塞ぎ眼を閉じる。
なんだ。
オレが見えているのか。
聞こえるんだな。

それはオレにも理解が可能な世界。
だから声を出したんだ。
「まだウジウジしているのか? 背中に乗れ!」
こいつは嫌だと体で答える。
なんだ。
伝えたいことだってちゃんとあるんじゃないか。

で?オマエは何が言いたい。なぜいまそうしている?
「乗らんと殺す!」
こいつの望みがほんとうに、生きたくないとの死にたいとのことならば、 殺してやってもいいと思った。乾坤圏を構えてみる。

でもそうしたら天祥は顔を起こし手を伸ばした。
そうか。

ならオレがオマエを育ててやる。
底まで沈み込んだらあとは昇るしかないはずだ。


悲しいとはどういうことか、オレにはよくわからないが。
この先こいつは生きていくのだとオレはそう理解した。



一陽来復は冬至のこと、また春の到来。
12月22日、冬至。それは再生の祭り。それはクリスマス。
気がつくとはじめてのナタク視点。もっといろいろ書いてみたい。
一応これをクリスマス更新にするつもりはないのですが、どうなるか。

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