12星座の「窓から見える風景」
牡羊:雨降りの校庭
「よく降るな…」
体育は中止、部活も中止
おまけに傘も忘れてきた
借してくれそうなやつはいるけど…
……あーあ、走って帰るか
雨なんか嫌いだ
牡牛:海
「釣りにでも行きたいな」
波は穏やか、日差しも柔らか
外に出たら気持ちいいだろう
いっそこの窓を乗り越えて海まで走り出したい気分
客も少ないし、今日は早めに店じまいだな
海辺を散歩して、防波堤で夜釣りでもするかな
双子:人通りの多い道
「せわしないね」
みんな急いで歩いてるみたい
何を急いでいるんだかね
でも俺があそこに混じったら、やっぱり急ぎ足になるんだろうな
誰に置いて行かれるわけでもないのに
誰に追われているわけでもないのに
蟹 :家庭菜園
「実ったねー」
毎日ちゃんと世話してたからね
手入れは大変だったけど、嬉しいな
今日の夕飯は実った野菜を使ってみようかな
ああ、食べるのがもったいなく感じるよ
そうだ、お隣さんにもおすそわけしなきゃ
獅子:ビル街
「まったく味気ない」
無機質過ぎるんだよな
建物の中から眺めるにはあまりに安らぎがない、季節感も無い
毎日毎日代わり映えのしない風景
まったく、飽き飽きする
ただ…飽きはするが、嫌いじゃない
乙女:偶然見かけた友だち
「あいつと一緒にいるの、誰だろう」
隣には知らない人が居る
笑い合って、仲良さそうだね
眺めてるだけって、なんだか焦る
明日顔を合わせたら…気になるけど聞けないだろうな
ああ、イライラする…
天秤:夜景
「……」
明るい夜だ
いつから夜はこんなに明るくなったのだろう
付き合いで飲むには贅沢な場所だな
彼はここが特別な場所とでも言いたいのだろうか
本当は帰りたい
蠍 :雨の波紋の広がる池
「いつ見ても古風な庭だね」
自宅の庭はまるで日本庭園
訪ねてくる客人は見事だと褒めるけれど
僕には時が止まった虚ろな空間にしか思えない
こんな雨の日は人の感覚を狂わせていく
おまけに僕は、あの池に落ちたことがある
射手:水平線
「気持ちいいなあ」
目の前には水平線
昨日までは地平線を眺めていたよ
昨日会った人と別れて、今日は誰と出会うんだろう
さてと、これを食ったら出発しよう
せっかく見つけた美味い店だけど、しばらくは来られないな
山羊:夕日
「もう日が暮れたのか」
朝から机に向かってたらこんな時間か
だけど仕事はまだ終わらない
疲れた、疲れたけど口には出せない
この仕事を放り出して休めない、俺には責任がある
だけど今は…少しだけ、この夕日を眺めていたい
水瓶:真っ暗
「見事な暗闇だね」
町の灯りさえ見えない
家の中も薄暗く、音もない
ときどき、どこからか動物の鳴き声がする
真夜中だけど、時計を見る必要はない
僕がこの本を読み終わったら眠る時間だ
魚 :花が咲き乱れる花壇
「きれい…」
眺めているとほっとする
さっきからずっと眺めていたら、お茶が冷めちゃった
でも席を立つ気にならないんだ
このまま眺めていよう
あの人が訪ねてくるまで、このまま待っていようかな
場所は各自脳内補完で…