+洗面所でふたりきり+

季節は夏。
現在野球部は合宿中。
「ふぁ〜あ……起きないと……」
しばらく眠気と格闘しつつもなんとか布団から脱出し、
首にタオルを引っ掛け洗面所に向かう日比谷渉。
ちょっと早く起きてしまったようで、洗面所には誰も居ない。
蛇口をキュっとひねって水を出し、
勢いよく出ている水を思いっきり顔に浴びせ掛ける。
「ふぅ・・・・よぉ〜っし!」
頬を軽くパーン!と叩いて気合を入れた。
続いてシャコシャコと歯を磨いていると、
パタパタと足音が聞こえてきた。
(先輩かな、一年かな)
先輩だったら即効挨拶しないと。
日比谷は急いで口をゆすいだ。

しかし、やって来たのは
先輩は先輩でも、

「・・・・あ、日比谷くん・・・」
「せ、せせ先輩!!お、おはようございますっ!!」

憧れの人、マネージャーのだった。

「ん〜・・・・・おはよ・・・・」

はふらふらと洗面台に向かっていった。
まだ半分寝ているような感じで、ぼ〜っとしている。

(ね、寝起きの先輩・・・・うわっ、うわっ)

髪の毛は一応くしを入れてあるようだが、
どことなく寝起き特有のふわふわした感じが残っており、
目もとろ〜んとしている。
そしてなにより寝巻きにしたのであろう、Tシャツと短パンという格好に
日比谷はクラクラしてしまった。

(ど、どどどどうしよう、い、いや別にどうもしなくてもいいんだけど、
ああそんな格好だなんて、先輩ジブンどうしたら……って、ああ!)

「うわー先輩!!それ歯磨き粉じゃないッスよ!」
「え?」

寝ぼけて洗顔フォームを歯ブラシにつけようとした
あわてて止める日比谷。
「…あ、ほんとだ…」
「あぶなかったッスね、はいっこっちが歯磨き粉です」
そう言ってコップに立てかけてあった歯磨き粉を手渡した。
は、やはりぼんやりした顔で「ありがと…」と言って受け取る。
しかし半分寝ているようで、うとうとしながら歯を磨いており、
なにやらちょっとあぶなっかしい。

(…先輩って、朝弱いんだ……)

普段、しっかり者のマネージャーで通っている彼女の
知られざる一面を見た気がして、日比谷はむしょうに嬉しくなった。
(いつものりりしい表情もいいけど、このトロンとした顔もいいなぁ…)
眠たげなまぶたと乱れた髪、めったに見ることのないその艶っぽい姿に
ただ、ただ、見とれてしまう。

ひたすらじっと見つめる日比谷の視線に、が気がついた。

「……ふぁあひ?(なあに?)」
「え!?い、いや、ね、眠そうだなーって思って、あのその」
「ん…」
ひとまずコップに水を注いで口をゆすぎ、タオルで拭きながら
再び日比谷の方に向きなおる。

「昨日、暑苦しくてなかなか寝つけなかったのよ……
日比谷くんはちゃんと寝られた?」
「は、はいっ。爆睡ッス!」
「そっか、そりゃそうよね。練習メニュー厳しいもんね……う、ふあぁ〜」
「あはははっ、先輩大あくびッスよ」
「う、うるさいなぁ……、あ…日比谷くんってば…」
「え?」
「口元に泡ついてる…ちゃんとゆすいだの?」

そう言うと、のタオルを持った手が近づいてきた。

「わっ」
「ほら…」

そのタオルで日比谷の口元の泡をふき取った。

「せ、先輩……あ!!」
「え?」

途端、日比谷の脳内がグルグル動き出す。
(そ、そのタオルは、さっき先輩の口を拭いたものじゃ……と、ということは
か、かか間接キ……?うわぁぁぁぁ!)

「しっ、失礼しますっ!!」

そう言うと日比谷は、ものすごい勢いでその場から走り去ってしまった。

「……?」

そしてその日は、一日中口元からあのタオルの感触が離れなかった
日比谷なのだった。





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なんとか野球部ネタ、こしらえました。
合宿ってすごい魅力的な題材ですよね。
一つ屋根の下、ご飯作ってあげたりして…
ああ、擬似夫婦体験だわ(野球部員は大量に居ますよ森チトさん)
もっといろいろ書いてみたいですね、合宿ネタ。


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