＋アイドルなんて吹き飛ぶ勢い＋

「あ、先輩！」
「あれっ、日比谷君」

ここは、はばたき市にあるＣＤショップ。
大ブレイク中のアイドル「小川ひらり」のアルバムが今日発売ということで、
さっそく買いに来ていた日比谷渉は
店内で自分の所属する野球部のマネージャーを見かけ、声をかけた。

「先輩も買い物ですか？」
「うん。あっ日比谷くん、さては小川ひらり買いに来たね？」
「へへっ、そうっス〜。先輩お見通しっすね！やっぱかなわないや・・・」
なんとなく気恥ずかしくて、うつむいて右手で髪の毛をくしゃくしゃかき回す日比谷。
そしてふと先輩が手にＣＤを持っている事に気付く。
「あれっ！先輩のそれ、SUPER CHARGERのアルバムじゃないッスか！？」
「え？うんそうだけど・・・よく知ってるね日比谷くん」
彼女が驚いた様子を見せると、日比谷はちょっと得意げに
「あったりまえッスよ！ジブン、流行には敏感なんス！
今ラジオでヘビーローテ中ですよね、ジブンも良いなって思ってたんス！」
と、嬉しげに語りだした。

「あ〜、今度の新曲ね。私も好き」
「いいッスよね！なんかこのバンド、大物の予感ビンビンするッスよ！」
「うん、ボーカルがなんか気迫がこもってるっていうか、こう、力があるよね」
「声、良いスよね！圧倒されるっス」

・・・すっかり二人は意気投合、しばらくSUPER CHARGER談義に花が咲く。
その場でしばらく話し込んでいると、
「あ〜、そういえば今度ライブあるんだよ。知ってた？」
と、ライブの話に。
「そうなんスか！？知らなかったッス」
「うん、この近くのライブハウスでね、２４日に。
あ、日比谷くんも好きなら一緒に行く？」

・・・・えっ！！！

思いがけない誘いの言葉。
コレが同級生や部活の先輩なら何でもない事だが・・・
（せっ、せせ先輩に誘われた！！？？い、一緒にって事は・・・・
それって、デ、デ、デート！！？？）

-----実は彼は、ひそかに彼女に憧れを抱いていた。

とたんに頭の中がグルグル、クラクラ。
心臓はバクバク。
「せ、せんぱ・・・・あ、ああのそれって・・・・・」
憧れの先輩からの突然の誘いで、軽いパニックに陥る日比谷。
言葉が上手く出てこない、そもそも何と言おうとしているのかもよく分からない。
あわあわと口をパクパクさせる彼に、彼女もあわてて、
「・・・ひ、日比谷くん？いやあの嫌なら別に・・・」
と、言った事を取り消そうとするが、

「いっ行きますっっ！！！！」
やっとのことで一言ひねり出せた日比谷。

（うわぁぁぁ〜！な、何着て行こう！！ああ雑誌見て研究しないと！！）
すでに小川ひらりのアルバムの事はすっかり忘れた彼は、
即効本屋でファッション誌を一通り買って帰ったのだった・・・・。

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