先生は意地悪だ。
別に、もともと分かってた事だったけど、この行為の最中はそれが更に際立つ。
「ひぁっ、や、だ…!」
「シッ・・・人が来ちまうぞ。こんなとこ、見られてイイのか?」
言葉ではそう言っているのに、顔は正直だ。
声を出すまいと我慢しているあたしの敏感な部分を執拗に攻め、それに耐えられずあたしが声を漏らすと、毎回満足そうに笑うのだった。
愛虐症
薄暗い教室。科学室というのは常に独特なにおいがする。
薬品が混じり合ったような、くさいとも言えぬ、ただ頭がくらくらしてくるようなにおい。
放課後、用事があるというの代わりに科学室の片づけをすることになった。
親友の頼みだからと簡単に引き受けたのが悪かったのか、
たまたま廊下で捕まえた先生を引っ張ってきて手伝わせたのが悪かったのか、
また先生のくだらない冗談に翻弄されて、動揺してしまったのがいけなかったのか、
兎にも角にもあたしは実験器具(ビーカーやらなんやら)をいくつか割ってしまったのだ。
破片が膝の内側を擦って飛び散り、あたしの足には血が滲んだ。
「なにやってんの」と先生は教壇にあたしを座らせ、持っていたハンカチを濡らして血を拭き取ってくれた。
その優しさに惑わされたのがいけなかったのかもしれない。
いや、一番いけなかったのは、この後あたしが口にした言葉だ。
「唾の方が、効くかな?」
先生がぴたりと手の動きを止め、ゆっくりとあたしを見上げた。
流石に舐められはしないだろうと思って軽く言ってみただけだった。
「なんて、冗だ――わっ」
いきなり左膝をぐいと上に押し上げられ、腰が机にぴたりと密着する。
机はひんやりとしていて、腕に軽く鳥肌が立った。
「な――」
言葉を発する暇もなく、先生があたしの傷口に口付ける。
舌先を使って優しく舐めていたものが、次第に触れる部分が広がり、激しく舐めまわされた。
「わ、ぅ…!せん、せ・・・っくすぐった・・・」
キスする時も、エッチした時も思ったけど、先生の舌使いは本当にいやらしい。
先生の舌の触れたところ全てが一瞬にして性感帯になる。
そんな先生の舌が脚に触れている、そう思うだけで、下腹部が熱くなる。
ざらざらとした感触は傷口からどんどん逸れていき、いつの間にか太腿に達していた。
下着が見えているとか、もうそんなことも考えられなくなっていた。
足の陰に隠れてしまって、先生の頭がなんとなく動いている事しか分からない。
だが、舐められている個所が見えない事に、あたしは逆に興奮した。
刹那、太ももにチリッと痛みが走る。
「や…っ」
腰を机から離し、あたしは先生の頭に顔を近付かせた。
「いま、何したの」
先生は太腿から唇を離し、あたしの脚の間に割り込んだ状態でゆっくりと上体を起こした。
右手はあたしの膝に置いたまま、左手をゆっくりとあたしの肩に回し、軽く抱きしめられる形になる。
そのまま耳に唇を近付け、吐息と共に言葉が紡がれる。
「キ ス マーク」
そう言って先ほど痛みが走った部分を指の腹で優しく撫でる。
シルシを残されたという事実と、先生の熱い吐息、そして撫でられた指の感触せいで、顔の熱が上気していくのが分かった。
太腿の赤く染まっているであろう部分に触れた指が、ツツ、と肌の上を移動する。
ぬるりとした感触に、あたしはびくりと肩を震わせた。
「濡れてる」
あたしの状態を端的に、しかし的確にとらえたその表現で、あたしは消えてしまいたくなった。
「も、やだ…」
恥ずかしすぎて、先生の肩をギュッと掴み、軽く顔を埋めた。
先生はそんなあたしの仕草を見てフッと笑う。
「イヤ?」
下着越しに指を軽く押しいれられる。
ぬるりとしたものが邪魔をして、先生の指が直に感じられなくて、もどかしい。
「何が、イヤなの?」
何に対して嫌と言ったのかも、今この瞬間にそう尋ねられて答えが一つしかないことも、分かってるくせに、先生はそう簡単には満たしてくれない。
あたしは悔しさのこもった眼で先生を見つめた。
先生は何も言わず、ただ「ん?」とあたしの言葉を促している。
「その、触り、かた・・・やだ」
そう言うのがやっとだった。
それでも先生はまだ応えてはくれない。
「それで?」
「どうして欲しいの」と追い打ちをかける。
あたしは更に涙目になって、弱弱しく先生に抱き付いた。
「ち、直接・・・さわっ、て・・・ください…」
耳元で小声で囁くと「了解しました、お姫様」と言ってプツリと指を入れてきた。
「ぁ…っ」
ビクン、と身体が揺れ、あたしは先生にしがみつく手に力を込めた。
徐々にナカがかき乱されていくのが分かる。
「あ…っん、んっ」
思わず漏れてしまった声に、慌てて口を結ぶと、先生が意地悪く笑った。
「そのまま、我慢してろよ?」
悪巧みをした少年のような声。
その声を聞いて、ヤバイ、と思った時にはもう遅かった。
――ズプ、ともう1本指が挿入される。
背骨に電気が走ったような感覚。
それに伴い、先生の手が肩から離れ、腰に添えられる。
そのまま制服の中に侵入し、背中をなぞりながら上がってくる。
「んぁっ、」
ぞわっとした感覚と共に、背中が弓なりに反る。
先生の手に制服が引っ張られ、プチプチッとボタンが外れる音。
乱れた制服の隙間から突き出された胸の浅い谷間に、先生が顔を埋める。
ピチャ、という音を立てて舌で刺激される。
それに合わせ、動きを止めていた指が活動を始める。
2本の指があたしの中で蠢いて、時々敏感なところに触れられ、その度に小さな嬌声が漏れる。
でも、一番触ってほしいところには触ってくれない。
もどかしくて、あたしは息を荒くして先生を見つめた。
「せん、せ…っ」
「………なに?」
先生はあたしの頬に軽くキスをしてニヤリと笑う。
焦らして焦らして、あたしの顔が羞恥に染まるのを見てほくそ笑む。
その顔が憎らしいと思う反面、普段は見せない大人の男の顔に胸が締め付けられる。
この瞬間この目に射抜かれると、それだけでイキそうになる。
それ以上先生と目を合わせられなくて、もう一度首に手を回して抱き付いた。
「お願い、も、いれ、て…・?」
ギュッと目をつぶって懇願すると、目尻に滲んだ涙が頬を伝った。
「ハイ、よくできました」
先生は満足そうに微笑むと、あたしの中から指を引き抜いた。
代わりに、もっと重量のあるモノが宛がわれる。
「キモチ良すぎるかも知んねーけど、声は我慢しろな?」
「それ、……自意識過剰」
「ほおぉ、サンそういうこと言いますか」
先生は癪に障ったように顔を歪めた。
「自意識過剰かどうか、身をもって確かめてみれば?」
次の瞬間、一気に奥まで貫かれた。
「ひぁッ、やっ…あ!」
さっきとは比べ物にならない衝撃。
あたしは一際高い嬌声を上げた。
「声上げるなって、言ったでしょ」
注意しながらも、やっぱり顔は嬉しそう。
「む、り…ぃ、あっ、ゃぁんっ」
先生は声が上がっていることなど気にも留めずに何度も何度も突き上げてくる。
衝撃が頭まで響いてきて、簡単に意識を手放してしまいそう。
「ま、まって・・・銀・・・ッ」
「なんだァ?もう降参か、」
一度動きを止めたかと思うと、先生はゆっくりと上体を倒してきた。
首に抱きついていたあたしは必然的に押し倒される形になり、それに伴って先生自身も深く入り込んでくる。
ズププ、という音と共に硬くなったそれを惜しげもなく受け入れているのが分かる。
「あ、あっ、ぁ…っ、ん…ッ」
勢いで奥まで貫かれるのとはまた違った快感があたしを襲った。
入ってくればくるほど息が荒くなっていく。
「あ、ぁあッ」
奥まで達したとき、お腹の中心に衝撃が走った気がした。
「」
先生の声に反応して、潤んだ眼をゆっくりと開ける。
先生の息も、少し上がっていた。
「俺の、ぜーんぶ飲み込んでるけど、見える?」
熱い吐息でそう囁かれた。
「ば、かぁ」
あたしの眼からまた一筋涙が流れる。
先生はそんなあたしの表情を見て軽く笑い、唇を重ねてきた。
繋がってる状態でのキスは、何よりも興奮する。
「……もっとお前を苛めんのも良いけど、先生も…もー限界」
え、と聞き返す間もなく、先生が激しく腰を打ちつけてきた。
「ふぁッあ、や、あぁん!」
もう、声なんか抑えられない。
私の口から、こんなに厭らしい声、出るんだ。
こんな場面が誰かに見られたら、どうなっちゃうんだろう。
教師と生徒で、科学室っていういかにも怪しい場所で。
中途半端に乱れた服が余計にいやらしく映る気がする。
でもこの快感のなか、もうそんな事どうでも良かった。
「も・・・っ無理ぃ・・・っ、あっ」
「く・・・っ出、る…ッ」
「あ、あ、や・・・せんせ、ぁッ―――っ!」
「先生って、やっぱり変態だよね」
乱れた服を整えながらそう呟くと、先生は驚いた様子もなく一瞥をくれた。
「それ、俺には褒め言葉だぞ?」
「褒めてない!前もそうだったけど、何で半裸なんですか…」
「ふーん、全部脱ぎたかったの、お前」
「そ、そう意味じゃない!」
顔を真っ赤にして手を振り上げると、その腕を先生に掴まれる。
「別にイイけど?第2ラウンド、イっとく?」
少し笑った先生とは対照的に、ものすごく可愛くない顔で睨んで――
「いくわけないでしょ!」
散々苛められたお礼も兼ねて、先生のお腹を思いっきり蹴ってやった。