見上げると、そこには光を遮る黒い影が見えた。
……アレ?
どうして私、押し倒されてるんだろう。
絡めた舌先
「あのう、晋助サマ。何故私の上に馬乗りになっているんですか」
「……わりィ、間違えた」
高杉は虚ろな目でを見つめた。
何をどう間違えたらいきなり人を押し倒すことになるのか。
「言っときますけど、私、起こしに来ただけですからね。殺しに来たんじゃないですからね」
「へェ…寝込みを“襲いに”来たんじゃねェのか?」
高杉は口の端を少しあげてニヤリと笑う。
目はまだ少し眠そうだった。
「っていうか逆じゃないですか、コレ。あんたが私を襲おうとしてますよ」
「だったら?逃げねェのか?」
「私をどうにかしても、何も得るものはないでしょ?」
は表情一つ変えずに高杉をじっと見つめた。
そんなを見て、高杉はまた少し笑う。
「さァな………快楽、かねェ」
高杉の前髪がサラリとの顔に触れた。
はゆっくりと目を閉じた。
数秒して、唇が重なった。
甘く、しかし噛みつくように、高杉は何度もの上に唇を落とす。
ピチャ、という音とともに舌が侵入してきた。
絶対に逃がさない、とでも言うように、舌はきつく絡みとられる。
がそれに応えると、高杉の舌から少しずつ力が抜けていった。
「は、ァ…っ」
唇が離れると、お互いの口から自然と息が漏れる。
高杉はそのまま視線を合わせずに、の肩の上にゴン、と頭を落とした。
「……眠ィ」
「…どうぞ、眠って下さい。大した用事じゃなかったですしね」
がそう言うと、高杉はの耳元で囁いた。
「…どこにも、行くなよ」
「はい、どこにも行きません」
は高杉の背中をきゅっと抱きしめ、頭を抱いた。
「傍にいますよ。ずっと、ね」
例え寂しさから来るものであっても、あなたが私を必要としてくれる限り。