人を好きになって、それを表に出せる人が羨ましいと思った。

私はそういう「特別な感情」を伝える術を知らなかったから。

まるひえもーしょん!

―変態な同級生―

「さいあく!ばれた!」

放課後、私の所に来て突然肩を揺さぶってくる
そのまま人の机に突っ伏して、「さいあくさいあくさいあく〜〜」と連発している。

周りは何事かと一瞬こちらを気にしていたが、私が無反応だったせいか、すぐに興味を失って自分たちの会話へと戻ったり、下校の準備をしたりしている。


「なに、どうしたの?」

に顔を近づけて小声で尋ねると、ぐすぐすと鼻を啜りながらが顔を上げる。

あー、なんかもう化粧がぐちゃぐちゃだ。
見れたものじゃない、とは言わないけれど、マスカラが落ちて目の下が少しだけ黒くなっていた。


「白石くんに…っあ、あたしの気持ち、バレてもうた、かもっ」

ひっくひっくとしゃっくりを上げながら言葉を紡ぎだす。


「いつ?」
「さ、さっき…!」



の話はこうだ。

放課後に、女子同士で白石の話題で盛り上がり、うち一人に「ってホンマに白石くんのこと好きやんな〜」と言われ、顔を真っ赤にしたところに、本人登場、と、なんともまあお約束なパターン。

きょとんとする白石の次の反応を見るのが怖くて、そのままうちのクラスに逃げてきたらしい。


はすぐに顔に出る。
まあ、その赤面顔を見たのなら間違いなく白石は気づいただろう。


「そんなん…、振られるって決まった訳じゃないんだし」
「決まっとる!やって、白石くん好きな人おるて、噂やん」
「………はぁ…」


私は溜息をついての頭を撫でてやった。


「アンタも何であんな男に惚れちゃったんだか」
「だってカッコええんやもん…」
「いい、。あんな綺麗な顔してるけどね、白石って変態なんだよ?」
「変態とは言うてくれるなぁ」
「!」


後ろから聞こえてきた声に慌てて振り返るとそこには当のご本人様の姿。
も机に突っ伏していたせいで気付かなかったらしい。


「し、白石く…ッ」
「なんや、さっき急に飛び出してったからびっくりしたわ。どないしたん?」
「え、いや、あの…」

再び顔を真っ赤にする


退散したほうが良いかもしれない。
私はそう思って机にかけてある鞄を持って席を立ちあがった。


「お、、部活やろ?一緒に行こうや」
「え、でも、」
「自分迎えにこんクラス来たんやし、ホラ、行くで」

ぐい、と腕を取られ、私はそのまま白石に引き摺られてしまう。


「ほんなら、またな」

笑顔でに手を振って、教室を後にする白石。
は涙を浮かべたままぽかんとした表情で教室に取り残されていた。












「白石、ちょ、痛いまじで!」
「ん、ああ、スマン」

掴んでいた腕を離され、そのまま横に並んで廊下を歩く。

無駄な脂肪が許せん!ってくらいに肉を掴まれた気がする。
なんか恨みでもあるのかこのやろう。

私は少しだけ赤くなった腕を擦りながら白石の横顔を見やった。


「…ホントは、聞いてたんじゃないの?」
「なん?」
と、友達の会話」


そういって白石を見ると、彼は目を細めてくすりと笑った。


「知らんフリしたるんが、優しさっちゅーもんやろ」

応えられへんのやから、と言って白石は私をじっと見つめる。


「自分やって、そうやん?」
「なにが?」
「ホラ、気付いてへんフリする」

かなんなあ、と白石は笑う。



もちろん白石の気持ちには気づいている。
だって、分かりやすい。

でも、私は今の関係を壊したくないから、白石の気持ちを「迷惑だ」って表に出すことはない。
白石もそんな私の気持ちを分かってるから、その感情を言葉に表すことはしない。



「おー、お二人さん」
「謙也」

廊下の曲がり角から現れた謙也はこちらを見てひらひらと手を振っている。

「なかなか来ぉへんからオサムちゃんが探しとったで〜」
「ごめん、ちょっと、ね」

私が言葉を濁すと謙也は両腕を組んでニヤニヤ笑い出した。

「なんや、二人きりで何しとったん?やらしーなぁ」
「謙也、ばか!気持ち悪い想像しない!」
「んんーっ、最高にエクスタシーな時間やったわぁ」
「お前も悪ノリするな!この変態!」


私の反応をみてけらけらと笑う謙也と白石。

こんな風にからかわれるのも、いつものこと。



「ま、ええわ。早よコート行くでぇ!」
「け、謙也!走るのナシ!ついてけるわけないでしょ!」
「俺も無理」
「イヤ、あんたは頑張んなよ、テニス部員…」
「さっき体力も精力も使い果たしたわぁ、自分とのセッ」
「さあ謙也行こうかー!」

謙也の腕を取って走り出す私を「ちょ、ひどない!?」と追いかけてくる白石。



こんな風に自然と手を取れるのは、友達だから。

きっと謙也も同じ気持ち。




そう、
いつだって、ただの。


それ以上を求める気持ちがどれだけ燻っていようと、私はそれを明るみに出すことはしない。





その気持ちを否定されることよりも、

無に帰してしまわれるのが怖いから。






自分も、そうして生きているくせに。

***
「なぁ、まさかホンマに白石とヤっとらんよな?」
「殴るよ」


今回の連載の目標。「暗くしない」。
さっそく暗い気がするが。

ブラウザバックプリーズ。

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