「一緒に、暮らさへん?」



謙也の口からそんな言葉が出てくるとは思わなくて、私は咄嗟には反応が出来なかった。

まるひえもーしょん!

―るーむしぇあ!―


結局私は、大阪の大学に進学することになった。
関西ではまあまあレベルの高い外国語大学。
英語が一番得意だったのもあるし、英語以外の外国語にも興味があったからここを受けた。
関西の大学にしたのは、みんなと離れたくなかったからだったけど、やっぱり正解だったと思う。
だって、謙也の大学とも、結構近いところだったから。



謙也も無事医学部に合格できた。
私の大学から電車で30分くらいのところの大きな学校だ。
医学部の他に薬学部、臨床学部、看護学部などがあって、白石は同じ大学の薬学部に合格したらしい。
「また白石と一緒かいな」なんてぶつぶつ文句言ってたけど、内心は嬉しいんだと思う。




3月中旬で既に母と父は次の転勤先への引っ越しの用意をしていた。
それに合わせて私の一人暮らしが始まるわけだが、ここにきて母がいきなり心配し始めた。

ほんとに一人で大丈夫?とか、最近は物騒だから心配だわ、とか。
ともかく、ルームシェアとかしてくれるようなお友達いないの?という母の言葉が発端だった。



私と謙也が付き合うようになって、私はよく謙也の家に遊びに行っていた。
大学生活に入る前の少し長い春休みを少しでも一緒に過ごしたかったから。
私も謙也も、付き合っていることは家族には言っていなかった。
これだけ遊びに来てれば、謙也のお母さんは気づいてるかもしれないけど。



「それでね、うちのお母さんすごい心配してくるんだ」
「ま、そやろなあ。俺かて心配やし」
「え、そうなの?」
「当たり前やんか」


そう言って謙也の大きな手が私の頭をくしゃくしゃと撫でる。
その温かい手が嬉しくて、私は少し笑った。


「なんか、誰かと一緒に住んだらとか、言われて」
「ふーん…」
「心配しすぎだよね」


謙也の手に頭を擦り寄せて猫みたいにゴロゴロと甘えながら、その手の気持ちよさを感じながら目を瞑る。
頭上に感じていた髪を乱される感触が止まって、不思議に思って顔を上げると謙也がキスしてきた。


「ん…っ」


卒業してから今まで、キスは数回したけど、未だにこの瞬間はドキドキする。
相変わらず触れるだけのキスだけど、私にはそれが心地よかった。
ディープキスがどんなものか知ってるとはいえ、正直、まだ怖いし。
謙也も緊張してるのか、私にペースを合わせてくれてるのかは分からないけど、何にせよ私にはこれくらいの歩幅が丁度良かった。


いつもより少しだけ長く重なった唇を離すと、謙也がそのまま私の頭を引っ張って額をくっつけてきた。
目線を下に、というか、目を閉じたまま、「なぁ」と口を開く。



「…どうしたの?」
「そんなら……俺と一緒に、暮らさへん?」
「……え?」



呆然と謙也を見つめると、くっついた額を剥がし、今度は身体全体を優しく抱きしめられた。
それでも私はまだ状況の理解に頭が追いつかなくて、ただ少しだけ暗く染めなおされた謙也の頭を見つめていた。



「あかん、かな。やっぱ」
「え、えっと、いや、あの…私も、一緒に暮らしたい、けど」
「…ほんま?」
「う、うん。けど、親になんて言おう」
「あー…せやったな。まあ、うちはどうとでもなるやろけど」



「どのみち、実家からじゃちょお遠かってん」と言って謙也は笑った。
了承を得られたらという淡い希望を抱いて、私たちは一緒に住むことを約束した。
正直、かなりの説得が必要になるんじゃないかと思っていた。仮にも、一人娘だし。けれど、



「ああ!アンタのこと、妹だっていって可愛がってくれてる子ね!あんなカッコいい子、あんたになんか見向きもしないでしょうし、別に良いんじゃないの?」



あの強そうな男の子と一緒なら安心だし!といって母は笑うだけだった。そんなんで良いの?
父は少しだけ仏頂面をしていたけれど、「ストーカーとか遭ったら困るでしょ!」とかなんとか母に上手く丸めこまれて最終的には快諾(?)してくれた。




兎にも角にも、私たちは一緒に暮らすことになった。
同棲…っていうのかな、これ。
でもなんか恥ずかしいから、ルームシェアってことにしておこうっと。

***
「そいえば、謙也の家はなんて言ってたの?」
「…嫁に来てくれたら嬉しわぁ、やて」
「…………」
「来る?」
「知らないよ、ばか」


完全なるバカッポー(^ω^)
どうか簡単に別れてくれるな!

ブラウザバックプリーズ。

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