まるひえもーしょん!

―お兄ちゃんな、君―

Fr 忍足謙也
Sb おおきに
――――――――――――
心配してくれたんや?ありがとうな!
もう病院からは帰ってきてん。今は家で療養中やで〜!

−END−






『手術したって聞いた。大丈夫なの!?病院どこ!?』というメールを送ったら、謙也からはこんなメールが返ってきた。


「自宅療養だって」
「ハア?手術したんに入院ちゃうんスか?」



光と二人で携帯を覗き込みながら私たちはバスに乗っていた。

手術と言うからてっきり市の大きめの病院かと思い向かったのだが、入院者リストの中に謙也の名前はなく、もう一度学校への道を戻っているところだった。


「謙也さんちやったら、次の次で降りたらすぐっスね」


バスから降り、走る光を追いかける。



謙也の家のチャイムを鳴らすと同時に光が家に飛びこんだ。
そんな勝手に、と戸惑いながらも私は光の後を追う。

「アラ財前くん、いらっしゃい。謙也なら部屋におるで」

謙也のお母さんはほぼ勝手に家に上がったようなものである財前に特に驚きもせず、ニコニコと笑っていた。


「どうもっす」
「あ、え、と、お邪魔します」


私も光に続き階段を駆け上った。



「謙也さん!」
「謙也!」


バン!と部屋を開けると謙也が少し驚いてこちらを振り返る。


「なんや自分ら、ホンマに見舞い来てくれたんか」
「謙也ーーーーっ!」

私は窓辺に立った謙也の胸倉を掴んでそのままベッドに押し倒した。

「うわっ、ちょ、何すん…ギャーーー!」


謙也の抵抗も無視して私は謙也のシャツを捲りあげる。

包帯が巻かれていたり、縫った跡があったり、そういうのを想像していたのに、謙也の肌にはそういった類の物は一切見当たらなかった。普通に引き締まった、綺麗な腹筋があるだけだ。

きょとんとしてその腹を見つめる私を、謙也が口をパクパクさせながら凝視している。





カシャッ





「・・・は!?」


聞きなれた嫌な効果音に振り向くと、そこには携帯を構えた光の姿。


え、ちょ、今何した?


謙也の上に馬乗りになったまま私は茫然と光の手元を見つめる。



「ドッキリ大成功〜」

抑揚のない声でそう言った光の手に握りしめられた携帯の画面に目を凝らす。

提示された画面には、肌蹴た謙也の上に跨る私の姿。


ニヤリと笑う光の顔を見て、ようやく私は自分の置かれた状況を理解した。



「な、な、な…!」

混乱と驚きのせいでうまく舌が回らない。


「じゃ、部長に報告して、この写真はブログにあげときますわぁ」

ほんなら、と言って光はあっさりと部屋を出て行った。








さ、最悪だ。

明日から私の呼び名はエロ関連になるに違いない。

光があんなに心配するなんておかしいと思ったんだ!
謙也が捻挫して一週間練習を休んだ時も、「生き急ぎなんすわ」の一言で終わらせたような奴だ。


嵌められたことが悔しくて私の腕はプルプルと震えた。



「おーい、
「…は、」
「そろそろ、退こうや」
「ぅ、あ、ごめん…」


別に謙也の裸を見るなんて恥ずかしくもなんともないのだが(私が部室にいてもみんなお構いなしに着替えるから)、今回ばかりは少し後ろめたくて私は赤くなった顔を背けた。


「なん、その顔。誘っとるんか」
「誘っとらんわ!」


反射的に飛び出した否定の言葉は何故か謙也につられて関西弁になった。

未だ私の下で背中から上だけを肘で支えながら謙也は喉を鳴らす。



「こない体勢でもそんな気にならんて、さすがは‘妹’やな」

そんなからかいの言葉に、私は謙也に飛びかかった。


ぎゃはは、と笑い声が聞こえて、また私はこんな些細な幸せを噛み締めている。

同時に、さっきの謙也の言葉で自分の思いを更に深く押し込める結果になった。





結局手術と言うのはペットのイグアナのことだったらしい。
机の上に置いてあった謙也の消しゴム食べちゃったんだって。


なんて、紛らわしい奴!

***
「てか、その設定まだ引き摺ってたんだ…」
「お気に入りやねん」


兄妹フラグでした(嘘)

ブラウザバックプリーズ。

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