テニス部はみんな仲よしだ。
どのくらい仲良しかって言うと、挨拶でハグするくらい。
「〜おはようさん!」
「…………」
もちろんそれぞれ、ハグする相手は選ぶわけなんだけど。
後ろから抱きついて来たのは白石だった。まるひえもーしょん!
―だーいすき!―
「あーハイハイ、おはよう、お母さん」
いい加減白石のハグ攻撃にも慣れ、抵抗するのも面倒くさくなっていた。
白石がハグするのは、基本みんな。(大抵みんなキモがってる)
金ちゃんもそう。ハグというか、首に巻きついてくる感じだけど。(苦しい)
逆に銀や小石川は誰にもしない。
でも、されたら相手の背中を優しくポンポン叩いてくれる。
小春ちゃんはハグでなく、擦り寄ってくる。
誰限定というよりは、格好良いものや可愛いものを見つけた時に。
光がメガネかけてるのを見た時に、これまで見たことがない位の勢いで頬ずりしていた。(その後光はもちろん憔悴)
ユウジは言わずもがな。
小春ちゃん以外の人に抱きつかれるとすごく嫌がる。
ちっちゃいものが大好きな千歳は、私と金ちゃんに良くハグをする。
ぎゅっとされて「むぞらしかね〜」っていつも言われるけど、どういう意味?
謙也は自分の兄設定が気に入ってるらしくて、兄貴面で私と光をハグ。
私はそんな‘お兄ちゃん’に甘えるのが好きで受け入れてるけど、光はいつも「うざいすわ」の一言で一蹴。
そんな光は、唯一私にだけハグをする。
ハグと言える代物なのか分からないけど。
肩から腕を回されて、額をぱしんって叩かれたり、腕で目隠しされたり。
たまーに甘えたいのか、私の頭に顎を掛けて、両手を私の胸の前で組んで、頭上で「せんぱい、俺ぜんざい食べたいすわ。おごって」とかねだってくる。
そんな光が可愛くて、私も光にだけはハグをする。
「かわいいかわいい」って言いながらぎゅーーって抱きしめると、「暑苦しいすわ」とか「うざ」とか「離れろし」とか言い、嫌がりつつも少しだけ顔を赤くする。
ほんと、可愛い。
「自分ら仲ええなぁ」
白石にも謙也にも、いつも同じことを言われた。
小春ちゃんに
「もう付き合っちゃえばええやないの〜」
と言われたことも数知れず。
光は私にしかハグをしないし、私も今では光にしかしないから、私たちが特別仲が良いように見えるのかもしれない。
でも、かつては謙也にもしていた。
私が「お兄ちゃんお兄ちゃん」と言って後ろからぎゅっと抱きつくと、謙也は決まって回された私の両手を優しく掴んでくれた。
私はそれが嬉しくて、謙也の背中で何度も笑った。
別に恋愛感情じゃなくたって良かった。
大切に思われてることが、幸せだった。
だから、妹でも充分だったのに。
私たちのそんな“家族関係”に終わりを告げたのは、数ヶ月前。
謙也に、彼女が出来た。***
「私って、ブラコンだったんだなあ」
「…どっちの話スか」
「両方。…光は、彼女作んないでね」
「なんやねん、それ」
(ずるいわ)