井の頭線の富士見ヶ丘の駅の近くに、みよし書店がある。
別にふつうの本屋さんなんだけど、私は、このみよし書店が好きです。
東京に出てきてはじめての夏、少し元気がなかった夕焼け時、みよし書店の前を通りかかると、おばさんが外に出て屋根の方を見ていました。何気なく私も見てみたら、
「あっ、つばめだ!」
おばさんは、「毎年来るんだよ。」と言って、笑っていました。
つばめの巣の下には、ちょうど雑誌が置かれています。うんち攻撃にあってしまうため、雑誌の上に透明のビニールシートが置かれてありました。
つばめの顔とおばさんの顔を見て、ちょっと元気になりました。
毎年、ちゃんと来ている。
私は、また、元気をもらいました。
ある年の春、いつものように、みよし書店で立ち読みをして帰ろうと思ったら、年配のおじさんが本屋のおじさんに、へ−ルボップ彗星の話をしていました。何気なくダンボ耳になっていると、突然おじさんが、
「君もあと一時間したら、空を見上げてごらん。星が見えるから。」
と言って、へ−ルボップ彗星ガイドというのをくれました。
ある時はコンビニで、おかしをいっぱい買い過ぎて、ビニールの袋がやぶれてしまいました。
自転車だからいいや、と思っていたけれど、みよし書店のおじさんとおばさんが、セロテープを貼ってくれました。
都会は、みんな知らんぷり、と言う人もいるけれど、ちがうと思います。
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