| ☆チャイナドレス |
|
最近、チャイナドレスっぽいシャツとかを、街でみかけたりします。
流行なのかな。
私は、ある北京料理やさんで、エレクトーンを弾いていたことがあるけれど、その北京料理やさんは、どういうわけか、途中から、チャイナドレスを着てエレクトーンを弾け!と言いました。
スリットというやつが、太もものあたりまでスーッと入っているチャイナドレスを着てエレクトーンを弾くと、北京料理やさんじゃないみたくなります。
ワタシノ、太ももショーになってしまうので、私は一生懸命考えて、裏っ側からガムテープを貼りました。
チャイナドレスは苦手です。
|
| ☆3日でやめたバイト |
|
私が、3日でやめたバイトのひとつに、鼻毛おじさんとの出会いがある。
別に出会いたくなかったけど、とある、名古屋の設計事務所で、おじさんと向かい合わせの席になった。
「よろしくお願いします。」と、挨拶した10分後に、私はこの場所に配置されたことを悲しく思いました。
おじさんは、鼻毛抜きをはじめて、ものさしに、鼻毛を並べていました。
次の日もしていました。
どこからふってわいてくるのかわからないけど、いっぱい並んでいました。
すごいことです。
私は、ワタシノ目の前に置かれるものさしのせいで、食欲がなくなってしまったので、3日で、おじさんの鼻毛とさよならしました。
私は、バイト、いくつかいくつか、してきたけど、鼻毛のせいでやめた、というのは、悲しい思い出です。
|
| ☆人生勉強 |
|
ワタシノ、父と母は、社内恋愛です。
私は、学生のとき、その社内恋愛仲間?の、田中さんちの喫茶店で、北海道に行く為にアルバイトをしました。
そこの先輩のひとりに、ショートカットで“おまえ”と呼び掛けてくる10個くらい年上のお姉さんがいました。
16才でかけおちして、子供がふたりいたお姉さんのだんなさんは、逃げていったといっていたけど、その時は新しい彼氏と同棲中で、あなかだけぽっこりーと出ていたので、その中に彼氏との赤ちゃんが入ってるんだと、てっきりてっきり、すっかり思ってしまって楽しみにしていました。
でも1ヶ月がたって、2ヶ月が過ぎて、3ヶ月も過ぎて、それなのに、その突き出されたおなかをそのままに、お姉さんは、タバコをプカプカさせて、「やってられねえなぁ」と言いながら、コーヒーをたてていました。
それでも、ぜんぜん疑っていなかった私は、お姉さんが「よっこいしょ」と言って腰かける時には、座布団を持っていったり、おなかが冷えるといけないと思って、ミルクをあたためて渡したり、お姉さんは、「こんなもの飲めねぇぞ」と言いつつ、「今度からは砂糖は抜いとけな」と言って、ちゃんと飲んでくれました。
私は。また1ヶ月が過ぎて、どうしたのかな、おかしいな、と、やっと思って、
もうひとりのお姉ちゃんに、こっそり聞いてみました。
「大きなお姉ちゃんの赤ちゃん、いつ生まれるの?」
すると、「え!赤ちゃん?入ってないよ。脂肪!」
と、言われてしまいました。
寂しかったです。ずっと、待ってたのに。
だけど、その数日後、もっとびっくりすることが起こりました。
大きなお姉さんの彼氏という人が、喫茶店にやってきました。
私は、超びっくりしました。
その彼は、ワタシノ同級生の彼氏でもありました。
注文をとりにいって、水を出す時、手がブルブルふるえて、ビチョビチョこぼしてしまったのでした。
大きいお姉さんは、「やーね、このこは、緊張してるの?いい男だから?へへへ」と言っていました。
私は、顔がひきつって泣きそうでした。臨機応変とか、取り繕うとか、今でもだけど、その頃は、もーーーっと苦手で、非常にわかりやすく、取り乱してしまったのでした。
彼が、気づいてない様子だったので、幸いだったけど、私は、お姉さんの顔を、まっすぐ見られなくなってしまいました。
でも、今思い出すと、大きいお姉さんは、心に、何の鎧もつけずに子供をヒョイと肩にのせて戦っているというイメージがありました。
ありのままにのろける時の、ガハハという嬉しそうな顔、子供には、すべてを見せる、すべてを話す、勝手に学んでいってくれればいいんだという、その様子が、その頃の私にとっては、大胆!と思えるものだったけど、今思うと、さらけ出せたお姉さんの堂々とした生き方が、すごく、気持ちよかった。
私が、バイトをやめて数年がたって、今度は、人の噂で、小ちゃいお姉ちゃんの方が、蒸発してしまった、と、聞きました。
子供とだんな様をおいて、男のひとと逃げてしまった、と聞いて、悲しいことだと思ったけど、小ちゃいお姉ちゃんが、狭い喫茶店の窓を開けながら、
「私はね、生きてる、ってカンジテ生きていたいから、悪いこともするかもしれないよ。」
と、言っていたのを思い出しました。
鳥かごの鳥を放してやるふりをしていたお姉ちゃん。
お姉ちゃんの選択は、羽をつけて飛んでいくことだったのかな、と思いました。
でも、お姉ちゃんは、その羽が、黒い羽だということを、ちゃんと知ってて、選んでしまった、という気がしました。
あれから、私にも、恋の事件が起きたり、泣いたり、泣いたり、笑ったりしました。恋に、結果というのはないから、人は、ずっと、生きるという川を泳ぎながら、恋をつかまえたり、逃がしたり、食べちゃったり???していくんだろうな。
私は、平泳ぎしかできなくて、ぶきっちょに川を泳いでいくけど、幸せのお魚と、手をつないでいたい、と、思いました。
人は、学校の教科書を使わなくなってからの方が、いろんなところに教科書があるような気がする。
|
| ☆いいこと、悪いこと |
|
|
人が決めた一律的な教えではなくて、見て学ぶ、感じて学ぶ教科書が、私のまわりにいっぱい歩いてるっていう気がする。
だから、明日は、心の中で、ちょっとだけ、冒険してみようかな。
|
| ☆うそ |
|
|
ある日、職場の仲間が大騒ぎしていた。
「どうしたの?」と、聞くと、社長の印鑑証明が出てきたということだった。
なーんだ、そんなことか、と思って、私もちょっと紙きれをのぞいて、生年月日のところで、釘付けになった。昭和17年○月▲日と書いてあった。
確か、社長は、昭和29年生まれのはずだった。社長の口から聞いた時は・・・
筆跡も誕生日も同じだったけど、生まれ年だけ、なんと、大胆にも、ひと回りも違った。
みんな口々に、ひと回りサバ読むとは上手いなぁ。干支間違えないもんなぁ、なんて言っていました。
事情があったかもしれないし、それだけで、全部が0(ゼロ)になるっていうことはないけど、嘘をつくということは、怖いことだと思う。
だって、あれから、事務所の空気が、少し薄くなった。
印鑑証明ひとつで、信頼関係のひとつが、ポキっと音をたてた。
|
| ☆おじさんの背中 |
|
|
少年の声が、涙を含んでいるように感じた。
「お父さん、いますか?」
沈黙の秒数が増えると、おなかの底から、重苦しい空気が積もる。
3〜4日前事務所で、わたしの後ろから声にならない声「ウギャア」を聞いた。
声の方に自然に振り返ると、先輩が札束(と思われるモノ)を持ったまま、固まっていた。
石のように表情の止まった彼女の顔と、指先を交互に見て、「あっ!」と気づいた私も、固まった。
札束と思っていたモノは、一枚のみが萬札で、その後ろから、きれいに切りそろえられた新聞紙が並んでいた。
パラパラパラと、何度めくっても、50枚あるはずのお札は先頭の一枚だけを残して、あとは、ぜーーーんぶ新聞紙だった。
何度みても、間違いなかった。
当然、社内で大問題になったこのコトは、犯人と思しき人の名を、私達もが知ることとなった。
小さな笑顔の距離の近い会社だったので、胸の奥で、事実の次の頁をなかなかめくることができず、憂鬱にパソコンをたたいたりしていた。そんな時、受話器の向こうで、少年の声を聞いた。
ずっと後になってわかったことだけれど、エリートという人種だった営業課長が、真面目を続けて20年目、はじめて経験した賭け事で両手いっぱいのお金を手にしたらしい。
課長の心の凧は、飛んでいってしまった。
一度、飛んでいってしまった凧は戻ってくることはないのか?
自慢の息子の涙は、課長の手で拭かれることはなかったのか?
課長は、本当に、やさしい笑顔のおじさんだった。
わからないことを尋ねると、何でも丁寧に教えてくれた。
知らないことなんて、ひとつも、なかった。
|
| ☆おじさんの背中。パート2 |
|
|
もうひとり、会社に、水戸黄門に、悪徳商人役で出てくるようなおじさんがいた。
悪徳商人だけど 憎めない。ネズミ男のお父さんのようなおじさんは、社長だった。
社長は、ちょっとかわいそうな、天真爛漫なヒトだった。
|
| ☆バレンタインデー |
|
|
社長は、あんまり女の子に好かれていなかった。
嫌われていたわけではない。
突拍子もないことを言ったり、突然立ち上がったり?楽しい人だった。楽しい男の人はモテル。でも、社長は短気だった。
いっぱいイバッテしまった。
右の課長も、左の課長も一日に2回くらいは困った顔をしていた。
短気の人は好かれない。
でも、バレンタインデー。
私達は近くのコンビニでチョコを買った。申し訳ないけど、300円くらいのものだった。赤い包装紙にピンクのリボン。笑顔だけたくさんつけた。10代、20代のさきっちょの頃って、目や鼻、口がついてるのと同じくらいのところ、ほっぺの辺りに、無邪気、悪気はない、ほんとはそんなこと思ってないけど笑顔というのを持っていて、瞼を開けるようにピカッとフラッシュをたいてみたりする。
今思うと、あれはいつの頃まで有効だったのか。
社長は、いつもの調子で書類を受けとるように「ありがとう」と受けとって、私たちの儀式は終わるはずだった。のに、その後、私たちはスコオシ複雑な思いをすることになる。
社長は、自分の机に近づく人、社内の男の人、或いはお客さん、来る人来る人にチョコを見せびらかしていた。
「女の子がくれた」と言って、ほんとにうれしそうに笑っていた。
はじめて見る社長の顔だった。
ひとしきり自慢をして、誰も来なくなった夕方近く、社長はジーーーーっとチョコを見つめていた。穴があくほど見つめたあと、楽しそうに食べてしまった。
食べてしまった直後、大得意先のお客さんがやってきた。
社長は素早かった。
ゴミ箱からさっき食べてしまったチョコの包み紙をひろっていた。そして、それを「これ、今日、女の子がくれたんだ」と言ってみせていた。
クシャクシャになった包み紙をみせて笑っている社長が、私はうれしかったけど、せつなかった。申し訳なかった。
一ヶ月後、もっと申し訳ないことが起こった。
ホワイトデーに、社長は、女の子用に軽自動車をプレゼントしてくれた。
社用に使うのは当然のこと、プライベートに使用するのもOKで、ガソリン代も会社持ちだった。
雑魚で鯛を釣ってしまった。
私は、社長の喜びが、車を買ってくれるのと同じくらい大きかった、そんなにも喜んでくれたことはうれしいと思ったけれど、「この程度で、イイ」と買ったチョコの、その時のこの程度に対して何となく後味の悪い、申し訳なさを持った。
社長は、今年、チョコを誰かからもらったのだろうか。
|
| ☆事件 |
|
|
私達は思わず目を合わせた。
おかしい。
社長が、コソコソと引き出しに書類をしまいこんでいる。
トイレに行くたった2〜3分の間でも、その場所に露呈することのできない書
類というもの、愛人からの手紙でさえ封から出し、その場に置いてけぼりして
しまう社長が、しまいこまなければいけない書類には、何が書かれているのか。
先輩が、トイレに行く社長が戻って来ないかとドアの前で見張りに立ち、もう
ひとりの先輩は引き出しの中から素早く書類を取り出す。
私は、その書類を受け取って、ドキドキしながらコピーをした。
犯罪だ。社長に見つかったらただではすまされない。
だが、その書類自体が、とても大きな犯罪の図面であった。
|