Love Letter

   Boy  Meets  Girl T

る晴れた日のこと。アークエンジェルは燃料補給とクルーの食料品調達のため、
地球のある場所に降り立った。
久しぶりに、クルーたちに休暇が与えられる。
トールとミリアリア達は恋人らしく町へ買い物に二人で出かけ、サイとカズイは
欲しい本があるといって、本屋に向かったようだ。
みんなを見送った跡、フレイもキラを誘って街に出かけようと思いさっそく制服を脱ぎ捨てた。
軍服で歩くことはもちろんできないし、たまの外出だ。目いっぱいお洒落してもバチなんて
あたらないだろう。
フレイは、お気に入りの少し大人っぽいワンピースに、はきなれないヒールの高いサンダルを履いてみた。
いつもと違うリップをつけ、鏡を覗き込んでみると少しだけ照れくさい。
「キラ、どう思うかな・・・」
フレイは、久しぶりに楽しい気持ちになって、廊下を走りながらキラの部屋へと向かった。

「キラッ」
「あ、フレイ」
キラは、部屋でパソコンに向かい、なにやら急がしそうにキーボードを叩いていたが、
フレイがやって来て、嬉しそうに優しく笑った。
キラの笑顔は、年上のくせに、いつも可愛いと思ってしまう。
フレイは一瞬、とまどったが、気を取り直していつもの強い口調で言った。
「キラ、今日お休みでしょ。私、買い物したいのよ。一緒に出かけましょう」
アークエンジェルに乗ってからというもの、女の子らしいお洒落もしてないし、
欲しい下着や化粧品、香水だってある。
軍人として命をかけて戦っているんだもの。これくらいの贅沢はいいはずだわ。
それに、何よりキラと一緒に外に出かけられることが嬉しかった。
ところが、肝心なキラというと。。。
「ご、ごめん!午前中はこの間の戦闘の時のストライクについての資料をまとめて、コジローさんに
わたさないといけないだ」
フレイは、こんな日まで、まじめに仕事に熱心なキラに腹が立った。
「なんですって。キラ、仕事の方が私より大切だって言うの?」
逆ギレだろうがなんだろうが、言ってやらないと気がすまない。
それに、せっかくお洒落をしているのに、全く気づいたそぶりがない。
今日を楽しみにしていただけに、余計に苛立ってくる。キラは楽しみじゃなかったのかもしれない。
楽しみだったのは私だけだったのかもしれない。妙な不安さえ頭に浮かんできてしまう。
「そ、そんなことないよ・・・。夕方なら大丈夫だからさ、どこか出かけようよ。ご馳走するし」
「嫌よ!仕事なんて後でやればいいじゃない」
「分かってよ、フレイ。僕たちは軍人なんだ。やらなきゃいけないことは守らなくちゃ駄目だろう?」
聞き分けのないフレイに、キラの口調も強くなる。フレイの心臓が少しだけキュッと痛くなった。
「もう、いい!知らない!キラの馬鹿!」
「フレイ!待ってよ!」
呼び止めるキラを無視し、フレイは部屋から走って立ち去った。
どうしてキラと話すといつもキツクあたっちゃうんだろう。
フレイは寂しい気持ちを押さえながら、アークエンジェルの外へ出た。
アークエンジェルは少し高くなった丘の森の中に隠れるように停まっていて、
そこから街の姿を一望できた。フレイは心地よい風邪に吹かれながら、下の街を眺めた。
幸いここからそんなに遠くないようだ。これならフレイの足でも30分くらいでたどりつけるだろう。
知らない街に一人で行くことに多少不安を感じたが、なんとなく一人で行きたい気分になった。
(ええい、行っちゃうか!)
フレイは、思い切って街へと続く道を歩き出した。

「イザーク!これ見ろよ!」
友人の呼び止める声に、銀色の髪の少年はゆっくりと振り返った。
「うるさいぞ、ディアッカ」
あまりの声の大きさに、少しだけムスっとなる。誰だって自分の名前を街中で大声で叫ばれたら
恥ずかしいものだ。
「いやー、なんかさ珍しい食べ物が売ってるんだよ」
「そんなことでいちいち呼び止めるな」
「ははは、いやー悪りぃ悪りぃ」
ディアッカと呼ばれた少年は、口では謝っているものの全く悪びれた様子がない。
偶然にも、ザフト軍のクルーたちも同じ日に休暇をもらい、アスラン、二コル、ディアッカ、そして
イザークの四人も車で街へと遊びにきていた。
もっとも、アスランとニコルは二人で楽器を見に行ってしまい、しょうがないのでイザークは、
ディアッカと共に街の市場を見学しに来ていた。これといって買いたい物はなかったが、
イザークは市場の下町的な賑わいを昔から好んでいて、よく遊びに来ていた。
イザークの気持ちとは対象的に、ディアッカは市場よりも周りの女の子達に興味をひかれていた。
「イザーク、ナンパしてみないか?」
嬉しそうにディアッカが言う。
「馬鹿か!(怒)かってにやってろよ」
あきれたように、イザークは言った。女性に興味がないわけではないが、ナンパなんて軽い男がする
ことだ。プライドの高いイザークにとっては、とんでもないことだった。
「ちぇ、やっぱりな」
そう言って、またディアッカが軽快に笑った。
市場の奥の方まで行くと、さらに人が込み合っていて、進むことも困難になってきた。
「すごい人だな」
ギュウギュウと押されながら進むうちに、「キャッ」と小さい悲鳴がそばで聞こえた。
見ると、イザークの服のボタンに赤い髪の毛が絡まっている。すれ違うときにどうやらひっかかって
しまったのだろう。
「大丈夫か?」
イザークが髪の持ち主の安否を確かめるべく振り向く。瞬間、思わず息をのんでしまう。
黄色いワンピースを着た赤い髪の少女が、引っ張られた髪を触りながら、こちらを見ていた。
イザークの顔が赤く染まる。
「大丈夫」
少女は自らイザークの胸のボタンから自分の髪をほどき、一度、サラッとかぎあげて整える。
「じゃあ」
少女はニコリともせず、その場を足早に立ち去った。しばらくイザークは彼女の後姿を
見つめていた。
「・・・ク、イザーク!」
ディアッカの声にハッと我にかえる。見ると、ディアッカが案の上にやにやしながらイザークを
見ていた。
「さっきの彼女、すごい可愛かったな。」
「そ、そうか?」
イザークは平静を装い、再び歩き出した。
「知ってるぜ、俺。イザークのタイプだろ?」
「ち、違っ・・」
イザークは否定するが、ますます顔が熱くほてっていく。そのチャンスをディアッカは見逃さない。
「あーあ、行っちまったぜ。名前とか聞いておけばよかったのに。もう会えないかもよ」
「あー、もう煩い!」
イザークはディアッカのからかいに耐えながら市場を抜けていった。しかし、確かにディアッカの
言うことも一理あった。
自分は軍人だし、宇宙にいることが大半だ。もう彼女には二度と会えないかもしれない。
少しだけ残念な気がしたが、仕事のために何かを犠牲にすることには慣れている。
イザークは自分の選んだ厳しい道に改めて決意を固めるべく、そんなことを考えながら、
街の中心部へと歩いていった。

欲しい化粧品も買ったし、可愛い下着も買ったし、一目ぼれした服も買った。
今日のノルマは達成したにもかかわらず、何かが満たされない気持ちのまま、紅茶を啜った。
フレイは街の中心にある、若者たちに人気があるカフェに来ていた。
自分の周りには、楽しそうなカップルばかりだ。
本当は自分の隣にはキラがいるはずだったのに。

フレイは小さいため息をついた。
そのとき、横から男が二人、フレイに声をかけてきた。柄の悪い男たちだ。
「君、可愛いね。一人なの?これから、俺たちと遊びにいかないか?」
ブルーな気持ちがますますブルーになる。フレイは苛立つ気持ちをそのまま二人に投げつける。
「遠慮しておくわ」
勝気なフレイに、男たちはますます嬉そうに近寄ってくる。
「いいねー、気が強い女って。なぁ、いいだろ?」
無理やりフレイの腕を一人の男がつかんで席を立たせようとする。
「キャッ!ちょ、やめてよ!」
フレイは飲みかけの熱い紅茶を男の顔にかける。
「うわぁ!!熱い!!」
男は顔面を抑える。もう一人の男が、怒りを露にフレイの腕をつかむみあげる。
「こ、この女!!」
「キャッ!」
殴られる!フレイはそう思って、目を閉じた。
ドカッ、ガツッ!!
「わああ!!!」
自分に何も被害が起きなかったが、男たちの声と争う音が聞こえた。恐る恐る目をあけると、
二人の男達は下に伸びて倒れていた。
何事かと、フレイが振り返ると、そこには市場ですれ違った青年二人が立っていた。
「あ・・・さっきの」
銀色の髪をした青年と目があう。
「・・・大丈夫か?」
「ふふ・・さっきと同じセリフね」
とても怖い出来事だったが、なぜか青年の目をみてホッと安心した。
倒れている二人に罵声を浴びせていたもう一人の青年が、フレイの方に振り返ると、明るく
笑いながら言った。
「いやぁ、君が絡まれているのをみてさ、こっちのイザークが、どうしても助けたいって言う
からさぁ!」
「ば、馬鹿ッ・・ディアッカ!」

イザークと言われた銀色の髪の青年は、顔を少し赤くしながら必死に反論していた。
フレイは、よく意味が分からなかったが、とりあえず二人のお礼を言った。
「どうもありがとう。おかげで助かったわ。紅茶が無駄になったけど」
「はは!どういたしまして」
ディアッカが得意気に言う。
「ここの紅茶おいしいの。お礼にご馳走するから一杯付き合ってくれる?」
フレイが言うと、ディアッカが何かたくらんだ笑みを浮かべながら、ひじでイザークをつっついた。
「いやぁ、俺は残念ながら用事があってお付き合いできないんだけど、こっちのイザークって奴が
付き合うってよ!」
「お、おい!ディアッカ!」
イザークが決める間もなく、ディアッカはポンっとイザークの肩を叩くと、小声で
(頑張れよ!)と耳打ちし、軽快な足取りでカフェを出て行った。
取り残されたイザークは一瞬、面食らっていたが、隣でくすくす笑っているフレイを見て、
ディアッカに少しだけ感謝した。
「じゃあ、一杯だけ」
そう言って、彼女お勧めの紅茶をご馳走になった。

彼女の名前は、「フレイ」と言った。歳はなんと二つも下だった。
大人びた態度と雰囲気はイザークと同じ歳くらいに見えた。
もともとよい教育を受けていたのだろうか?会話を通して賢いことが分かる。
たまに笑う顔は本当に可愛い。
ディアッカに突っ込まれていたことは、図星だった。
偶然にも彼女の名前を知ることができ、お茶を飲んでいるなんてまるで軌跡のようだ。
どこに住んでいるのか、何をしているのか聞きたいことはたくさんある。
イザークが彼女の仕事を聞こうとおもった、その時だった。
「フレイ!!」
後ろで男の声が聞こえた。息を切らしながら慌てて近寄ってくる。
額の汗は、そうとう走ってきたのか、運動してきたのかが伺える。
「キラ!」
フレイが、戸惑ったような、嬉しそうな顔を浮かべて、男にかけよった。
「さ、探したんだぞ!すごい心配したんだから」
「キラ、仕事はどうしたの?」
「それどころじゃないだろ?!急に居なくなるから・・・」
フレイはごめんなさいと小さく言うと、イザークの方に戻ってきた。
「ごめんなさい。私、もう行かなくちゃ」
嬉しそうにフレイが言った。イザークは少しだけ胸が痛んだ。彼女をこんな笑顔にさせる、
キラと呼ばれた青年を見ると、イザークと目が合った。
警戒した瞳で、黒髪の青年が会釈をした。イザークも軽くうなずいてみせた。
「ああ。分かった。ご馳走になった」
「こちらこそ、ありがとう」
フレイが荷物を持って離れようとした瞬間、イザークは自分でも無意識に彼女の腕をつかんでいた。
「え?」
びっくりしたようにフレイが振り返る。イザーク自身もびっくりしていたが、これで最後とは
思いたくなかった。
「また会えるかな」
一瞬の間をおいて、フレイが笑って答えた。
「ええ、イザーク。また会えるわ、きっと!」
とっておきの笑顔でそういうと、キラと呼ばれた青年の方へ走っていった。
イザークは彼女の後ろ姿を見送りながら、大胆な自分の行動に少しだけびっくりした。
が、悪い気はしなかった。
名前を知ることができたし、話をすることができた。それだけでも、随分チャンスは広がるというもんだ。
「今回ばかりはディアッカに感謝だな」
イザークは紅茶の残りを啜った。甘いバラの香がする味は、まるで彼女のようだと思った。

「ねぇ、キラ!ねぇってば。怒ってるの?」
さっきから怒ったように一言も口を聞いてくれないキラに、フレイは不安になった。
仕事を途中でほおってまで、自分のことを探しにきてくれたのだ。もっと優しくしてくれるかと
思ったのが大間違いだったのだろうか。
「ねぇ、キラ!」
「フレイ!どれだけ心配したと思ってるんだよ」
「ご、ごめんなさい。」
さすがに、悪いことをしたような気がする。フレイは素直に謝った。
「・・・さっきの奴、誰?」
「・・え?」
「・・・カフェにいた銀色の髪の・・・」
「ああ、彼?イザークって言うの。私が変な人に絡まれてるところを助けてくれたのよ」
キラはホッ・・・と息をはいた。フレイはなんでキラが怒っているかいまだに分からない。
キラは、そっとフレイの手をとる。
「キラ・・・」
フレイの顔が少し赤くなる。
「せっかくだから、街を散歩して、夕飯食べて帰ろう」
「うん!」
フレイがとても嬉しそうに笑った。キラもこの笑顔にはとても弱い。
ぐいっとフレイを自分のそばに引き寄せると、耳もとで誰にも聞こえないように言う。
「・・その・・今日の服、似合ってる」
気づいてないと思ってたのに、ちゃんと見ててくれたのだ。
 
「ありがと、キラ」
そういって、強く手を握り返した。
キラは真っ赤になって、フレイの目を見ようとしなかった。
いろいろなことがあったけど、フレイにとってはとても楽しい一日となった。


To Be Continued.


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