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2006/3/22  :初書き
カリンの樹


「 Ultima Online 」という名前を、ゲームをしている人ならば一度は耳にしたことがあるだろう。
MMOの先駆けにして、もはや伝説的なゲームだ。(今も現役だが

Ultima Online(UO)には【カリンの樹】と呼ばれる話があるのをご存知だろうか?
烈風鯖の草薙ゆえさんが、自身のBlog「尼僧のココロエ」で紹介しているので、UO未経験者でも内容は知っているかもしれない。
この話は、「 現実世界(Real) 」と「 ネットワーク世界(Virtual) 」との関係について、少し考えさせられるものであった。
話の中身云々に関しては、もう自分で見ていただいた方が早いと思うので、さっそく始めたいと思う。
内容的に、一部ゆえさんのトコと被ってしまっているが勘弁していただきたい。

これは、オースティンで行われたというUOプレイヤー昼食会のイベントのスピーチであり、
後日、公式HPにアップされた開発者「デザイナー・Dragon」のコラムを、抜粋し和訳したものである。





■ ある樹のお話 〜Garden of Remembrance〜


今日は、とある樹のお話をしたいと思います。

この樹は、Ultima Onlineという、インターネット上にある言葉の世界に根を生やしています。
育つ場所は「 追憶の庭園 」という、花とチョコレートの箱と、
それを詠った心からの詩が綴られた紙片に囲まれた場所です。
そしてそこには、「カリンの想い出とともに」と書かれた飾り板が置いてあるのです。

これからお話する物語は、この飾り板と、この人物に関するものです。

カリンがこの世界にログオンしたのは、ずいぶんと昔の話です。
彼女はノルウェーからやってきました。
彼女は沢山の時間をこの世界で過ごし、友人たちを連れてくるようになりました。
そういった友人の中には、英語をあまり上手く話せない人もいましたが、
彼女は通訳として手助けを行ったのです。
そして、彼女の周りには沢山の友人ができました。
そして、彼女はホームページを運営するようになり、そのホームページに彼女自身の写真を載せました。
かわいらしく微笑んでいる写真でした。

彼女とこの世界との結びつきが強まり、やがて彼女はギルドをはじめました。
Norse Traders(ノルウェーの交易商人)と名づけられたそのギルドは、
沢山の厳しいクエストをこなし、ゲーム中で最も有名なギルドのひとつに発展しました。
このギルドは、皆で共に冒険をするための商人ギルドで、
すぐに人々は、友情という絆で結びつくようになりました。

今年の3月、そうした友人たちの中には、
ここしばらく、カリンの姿を見ていないことに気がつきました。
普通、このオンラインワールドにおいて人がいなくなってしまうことはなく、
単に姿を現すことができなくなっているだけなのですが、
何にせよ、その人がどうしているのかを知る手段はないのです。
しかしこの場合、彼女はホームページを持っていました。
ですから、人々はカリンを探しにホームページに度々足を運んだのです。

カリンの姿を見かけなくなってしばらくの時が過ぎた、ある日のこと。
一つの報せが、BBSやメール、住人のメッセージで広まったのです。
カリンは亡くなった、と。


彼女は、新車の試乗中に、正面衝突事故を起こして死んでしまったのです。
そして、この事故が起こったのは2ヶ月前の1月であったにも関わらず、
我々のうちそれを知る者は誰もいなかったのです。

彼女の両親は、娘にインターネット上での友人がいることを知っていましたが、
娘がインターネットで何をしていたか、
友人とは誰かといったようなことはまったく知りませんでした。

しかし、何処かの誰かが、この報せを知りたがっていることはわかっていました。
娘のホームページを探し、メッセージをアップする方法を知るのに長い時間がかかりましたが、
なんとか娘の自動車事故についてのニュースを、知らせることができました。
それはノルウェー語で書かれていました。

この世界に、瞬く間に悲嘆の声が溢れました。
数ヶ月にわたってログオンしていなかった人々にも、メールニュースでそのことを知りました。
数多くの友人達により、すぐに追悼式が計画され、
その結果、「 追憶の庭園 」が創造され、皆のカリンの想い出とともに一本の木が植えられたのです。
その後も、カリンと過ごした日々を懐かしむかのように、プレイヤーたちは、この樹の元を訪れ、
沢山の言葉とアイテムが供えられました。
これらのアイテムが、思い出と共に永遠にこの世界に残るよう、コードには変更が加えられました。


このお話はここで終わりですが、このお話から皆が共通した一つの想いを抱きました。
人は、直接出会ったことのない、この世界の人間に対しても深い感情を抱くのです。
それまでは、「ゲーム内で仲の良い友人」「よくパーティを組む人」という認識であった人が居なくなってしまったことが
これほどに自分の中で重く受けとめることになるとは、自分ですら思いもよらないことだったのではないでしょうか

Norse Traders(ノルウェーの商人)は、1月から人も少なくなり崩壊しつつありましたが、
今はそれが何故なのかを、皆は分っています。
中心人物であったカリンがいなかったのですから。
このコミュニティーが何かを失ったのが、彼女の死の報せが届いたときではなくて、彼女がログインしなくなった時からだと言う事実に
ようやく皆が気がついたのです。

その庭園と樹は、広く愛され、
非常に惜しまれる人物の想い出を残すだけではなく、
その瞬間、このゲームに参加しているプレイヤーが
「ゲームで遊んでいるのではない」
ということに気づいた瞬間の記念樹とまでもなっています。
「ゲーム」中に感じられる社会的な繋がりは、本物なのです。

Velveteen Rabbit(ベルベット・ラビット)という童話があります。
本物になりたいという、絶望的な望みを持つ剥製のウサギのお話です。
この話のおしまいには、持ち主の男の子の愛情が、この夢を実現させるのです。

最終的には、この世界に置ける人々の繋がりは、ゲームを超越するものであるのです。
それは、本物を作り出すのです。
自覚できることもあれば、悲嘆の時が来なければ気づかないこともありますが、基本的なことは常にあります。
友人ができたとき、
誰かの感情を傷付けたとき、
何かを失ってしまったとき、
この世界で何かを成し遂げたとき
そして貴方がこの世界を去るとき--
このとき、それは「ただのゲーム」ではなく、本物となるのです。

「追憶の庭園」は現実の物じゃないだとか、
カリンの死に対する悲嘆は、本当の気持ちじゃないだとか言って欲しくはありません。
そして、UOでの経験は本物じゃないという、
つまり「UOは所詮ゲームだ」的な言い方をしないよう、
プレイヤーのみなさんに望んでいます。
一部の人にとってはそうかもしれません、
しかし、我々はそうじゃないはずでしょう?
カリンのためにも、そして、我々自身のためにも。


May 5th, 1998 Designer Dragon からのコメント

















実は、このお話には続き(?)があります。


(SS拝借)




その話は、また次回の機会に・・・・。





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