MASTER KEATON

<原作>勝鹿北星/<画>浦沢直樹  
小学館  全9巻

博識な原作者と、エンターテイナーとしての漫画家の幸福な合作

SIS元曹長にして、オックスフォード大学出身の考古学者でもあり、更にはオプ(探偵)を副業として日々の糧を得ているという、どうにもスーパーな太一=平賀=キートンが主人公。キートン先生の気品を感じさせながらも飄々とした風体がかっこよい。そしてまた、優秀でありながら、学者としても兵士としても未熟であることに悩む彼の姿は、年齢を問わず好感を得られやすいかと。この漫画はキートンを狂言回しとして、毎回オムニパス形式で彼の周囲で起こる出来事を語るのだが、登場人物がどれも一癖あって見ていて楽しい。キートンの娘百合子、父親で動物学者の太平、幼馴染でやはり探偵のチャーリー、Mrs.バーナム・・・どれも一筋縄でいかない連中だが、なにより探偵業の相棒ダニエルとの掛け合いが面白い。彼らは毎日このような会話をしているのであろうか。

「青い鳥消えた」「エルザ・ランチェスターの思い出」のようなミステリー仕立てのもの、「交渉人のルール」にみられる探偵もの、「ハーメルーンから来た男」のような歴史もの、それに加えてキートンのちょっとした身の回りの出来事を描いたものなど、非常にバラエティに富んだ内容だが、流れとしては、キートンが自分の生き方を見つけるまでの話として全体を捉えることができると思う。特に恩師との再会を描いた「屋根の下の巴里」は名品。また、冷戦下での暗闘や、それの崩壊後広がった薄暗い世界を描いたものも多く、これが後に同じ雑誌で連載されることになる「MONSTER」へと繋がっているのだろう。

この作品は浦沢直樹の代表作だが、彼はどういうわけか原作がつくと俄然面白くなる珍しい漫画家である。この作品はもちろん、膨大な知識量を持つ原作者の勝鹿北星があってこそなのだが、見事にそれを消化し、自分の世界の中でこなしてみせた浦沢直樹の手腕は高く評価できる。

また、この人はとても外国人を書くのがうまい作家でもある。少なくとも、東洋人と白人の身体的な違いを非常に明確にかき分けている。白人はちゃんと鼻が高いし東洋人のその辺のおっさんも、ちゃんと五頭身だ。最近の漫画家は、人種的な身体的特徴を割とかき分けることができる人が増えているが、この世代ではかなり珍しい部類に入るだろう。遺跡や建造物も、非常に精緻に描けている。これはアシスタントに有能な人がいるからだろうか。壁画の絵など、割れ目やひびも書き込んでいて、感じが出ているし、建物もトーンの陰影をうまく使ってリアルな雰囲気を作り出すのに成功している。その中に人物を当てはめても、あまり違和感がなく、均整も取れているので、画面全体を安心して見ていられる。

後半になると少々ネタぎれの感もあるが、歴史好きならば読んでおいて損はないでしょう。
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