Spirit of Wonder

<作> 鶴田謙二
講談社

 粋である

SFの世界というものは、科学技術へのロマンであると言えると思う。だから、実際の社会の技術進歩にしたがって、SFというものも進化していく。私はあんまりSF小説の類は読まないから本家のほうはどうなのか知らないけれども、漫画の世界ではここしばらくサイバー世界や生物工学とかをネタにしたものが話題を呼んだ。たとえば、これはアニメの話だけれども、押井守が『攻殻機動隊』を映画化して話題になったりしましたね。また、この作品が不定期連載されているアフタヌーンでも、生物工学技術を背景にした『EDEN』という漫画なんかが雑誌の看板作品のひとつになっている。

でも、一昔前のSFの持っていた味わいというものは、今人気の作品からは漂ってこない。科学技術への楽観的な愛情が、たとえばジュール・ベルヌなんかの古典的作品には溢れている。もうそれは古すぎて、我々にとってはむしろノスタルジーをかき立てられるものになっているのだが、逆にそれを利用したのがこの鶴田謙二の連作短編集だ。荒唐無稽な科学技術が通用し、人間への信頼が満ちているオールドSFの世界を見事に再現している。そこでは奔放な発想力こそが主役であり、あやしげな科学者たちが嬉々として駆け回る世界でもある。といっても、この漫画は、オールドSFそのものの世界ではもちろんない。確信犯的にやってるんだから。鶴田謙二は、それをひとつの味わいとして作品世界に昇華してしまったのである。

絵は確かに巧いのだが、わざとなのかどうなのか、ちゃんと正統的な絵の勉強をしたであろう絵柄の割には、微妙にデッサンがずれていたりする。あまりトーンは使っていない感じで書き込みが多く、立体的な図はよく描けている。全体的には、そのデッサンの狂いが逆に効を奏して、よくあるアニメ絵になってしまいそうなキャラクターを彼の漫画表現の中にとどめている(かも)。
そして、必ずといっていいほど出てくる博士たちやその助手たちも魅力的だが、女の子がよい。特に、この漫画の後半に載っているチャイナさんはいい。女性に限らず、人間の魅力って言うのは、ちょっと見かけよりずれてる方が飽きがこないような気がする。その意味では、力自慢の中国娘がイギリスで英語も苦手なまま店を切り盛りしている姿というのは、なんか変でよい。

この本を読んでいると、あの博士たちのように作者がいたずらっぽく笑っている姿が目に浮かぶ。そういう漫画です。

ずいぶん昔アニメ化されたものが近頃DVDで出回るという話なので、そっちもあわせて見てもいいかも。                      
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