攻殻機動隊 

<作> 士郎正宗
講談社

 トグサの嫁さんが何故か印象に残ってたりする

この漫画についての評論や感想はおそらくネット上にいくらでも有ることだろう。まあでも、「アヴァロン」公開記念ということで取り上げてみることにする。

いろいろ話題になるだけあって、この作品が世に出るまでは見られなかった表現や特色が数多く盛り込まれている。いや、この作者が世に出るまでは、というべきですね。同じ作者の『アップル・シード』も似たような作品で、こちらの方が先にでている。が、後に書かれたこともあってか、『攻殻機動隊』のほうがより作者の意見・思索が整理されているように見受けられる。つまり、作品としてまとまっていて、背景となっている知識がなくてもそれなりに楽しめる。この作者にしてみれば、一般向けのつもりだったのかも。ヤングマガジンでの連載だし。
とりあえず特徴を挙げてみると、

1.その膨大な知識量が、もはや漫画の画面からはみ出してしまい、欄外にやたらと薀蓄が語られている点。
2.80年代初頭の段階で、ネット社会の到来を当然のものと見なし、それを視覚的に提示した点。
3.確実な画力をベースにしながら、コミカルな絵柄で描いている点。

などだろうか。
3についてから語ると、圧倒的な書き込み量という点においては、明らかに大友克洋の系譜を引いているが、人物に限らず車や建物などもかなりデフォルメされている。おそらくこの表現技法で彼を超えた人間は今のところいないだろう。カラーページが非常にふんだんなのも印象的だ。これの色づけはCGを取り入れているのだろうか。しかしまだCGの技術なんてそんなに高くなかっただろうから、これはペイントカラーなんだろう。しかし、う〜む、どうなんだろうか。誰か詳しい人教えてください。

2について。思うに、これが最もこの作品を特徴付けている点だろう。おそらくはアメリカのSF小説などである程度提示されていたイメージがあったのだろうとは思う。けれども、サイバー技術が実際の生活空間の中に取り入れられ、それがそれほど大した事のない既定の事実として受け入れられている世界を、漫画表現の中で明示した功績は、漫画文化においてきわめて大きいと言わざるを得ない。これに異を唱える人はあんまりいないように思う。マトリックスなんかは、この漫画を見てるとそれほど衝撃を受けないんじゃないだろうか。私は見てないけど。少なくとも、映画の宣伝を見て「おおすげえ。」とはあんまり思わなかったんですね、私は。その理由は、多分この漫画やら押井守の映画を見ていたからだ。押井守がこの作品を映画化してみようと思ったのも、この2番目の特徴があってのことだったんだろうし。

で、最後に1について。この作品では、作中での会話が普段の会話形式を崩さないように意識されている。そうすると、未来社会での常識的単語とか科学知識とかがまったく何の説明もなく出てきたりする。で、その説明が欄外についていたりするのだが、これが殆どの場合説明になっていない。いやはや、電気工学やら物理系の知識がないと、ちっともわからない。作者の独り言状態である。不親切なんてものではない。説明と先ほど書いたが、これは一般的な意味での教科書的説明というよりも、ある知識を前提としたまさに薀蓄なんだろう。わかろうとするほうに無理があるかもしれない。でもときどきはっとさせられることも書いてあったりして、それなりに私は楽しんで読んでしまった。わからない世界ってものが、それだけで魅力的に見える性質なので。

以上、この漫画の主要な特徴をあげてみたが(逆さになっちゃったけど)、主題としては、電子世界に新たなる「創造現象」が起こる可能性や、高度な情報社会における人間存在についての思索という風にまとめられるだろうか。しかし、この作者らしく、そこに広がるのは人間存在の消失に対する悲壮感ではない。割と楽観的というか、どこか超越的な姿勢が感じられる。「ええやん別に、人間なんて消えたって。」とでも言いたげである。

いろいろ考えさせられる漫画ではあった。が、まず間違いなく万人向けではないなあ。特に女性には面白くないかもしれない。
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