李朝暗行記

<作> 皇なつき
角川書店

 朝鮮人の感想を聞いてみたい

なんとも珍しいことに、この漫画は李氏朝鮮が舞台である。李氏朝鮮というのは、お隣の朝鮮半島で高麗王朝の後に建国された国。1392年に創始し、1910年の日韓併合まで命脈を保った。ほぼ500年間朝鮮半島を統治したわけで、古代王国でならばいざ知らず、これだけ長く続いた国は史上稀有な存在だろう。そういう国のお話。四話収録されているうちの「貢院の鬼」のみ清朝の頃のもので、こちらは中国である。

物珍しさも手伝ってか、まあまあ面白く読めた。内容は暗行御史(アメンオサ)という地方官吏を隠密に偵察する役職の男が、各地の不正を摘発するというもの。作者も言っていることだが、要するに水戸黄門ですね。ただし、本当にちゃんとした役職としてそういうものがあったそうで、黄門さまというよりかは遠山の金さんかな?そこに李朝時代の社会矛盾、たとえば官僚制の不合理や北方騎馬民族の脅威などを取り入れて、ドラマを展開している。

絵は中々のもの。上手い。道原かつみに似ている気もするが、静止した絵柄などならば、こちらの方が上手いのではないかと思える。デッサンもきっちりしているし、見づらいシーンも殆どない。背景も手抜かりなく描けている。李氏朝鮮時代の風俗もよく調べているようで、服装などかなり精緻な描写である。が、どうもアクション部分になると、あまり動きを感じない。これは絵の上手い女性作家全般にいえる事であって、彼女だけの落ち度ではないのだが、やはり気になってしまう。第2話の「北辺の疾風」などいい作品なのに、戦闘シーンが淡白すぎるところが惜しかったりした。この部分をクリアすれば、もっといい漫画家になれそうな気がする。

この「北辺の疾風」みたいな雰囲気のものを作者は好きなようなので、元軍と戦った三別抄の物語や、元禄・慶長の役などを舞台とした歴史スペクタルを描いてみてほしいものである。この作品を見るまで全然知らない作家さんだったので、もしかしたら描いているのかもしれないけど。この本が出たは1993年だし。

角川系の作家さんにはあまり好きな人はいなかったけど、この人は久々のヒットでした。
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