るきさん

<作>高野文子
筑摩書房

「Hanako」らしい・・・のかな?

るきさんの生活は病院の保険の請求である。自宅勤務である。先進的?かな。だから、たっぷり時間があって、図書館に行っては本を借りて読んでいるらしい。そういう彼女の生活日誌的作品。

秀作だと思います。なにより、るきさんの自由でゆったり生活を楽しむ人生が羨ましい。そうはこんな人生おくれそうもない。でも、彼女は金持ちでもなんでもなくて、基本的には一般的な社会人だ。るきさんの生活が楽しそうなのは、彼女自身の性格に殆どが由来する。のんびりマイペースで、生活の端々に起こること全てを楽しみに変えてしまう。

この漫画を見て、まず印象に残ったのはるきさんのおかしさだろう。最初はその辺にいるお姉さんといった感じだが、回を経るごとにその思いは募ってくる。どこか彼女はずれているのである。なにか変だ。考えてみるに、それは、彼女が人の目をあまり気にしないで行動するからだろう。多くの人間は、るきさん程度には「変」なところがある。しかし、大抵自分の意識の中で周囲を気にとめてブレーキをかける。だが、るきさんは、そういうことをほかの人よりも重要視していないようだ。彼女のずれかたは、その点で人よりも半歩ほどずれているのである。完全な不条理ではなく、変人といえばそうだけれども、その理屈は理解可能。そういう微妙な位置に立っている。ナメクジを退治するのに盛り塩してしまうところなんか、十分変なのだけれど、理屈は一応通ってるわけである。

友達のえっちゃんとの会話もいい。えっちゃんはどこかの会社のOLで、連載誌の読者に立場が近い。齢三十くらいで、二人は同年輩らしい。おしゃれに凝っていてどうも浪費癖があるようだが、それも含めて若い女性の代表者と言えるだろう。性格・生活ともに、るきさんとは正反対である。彼女のるきさんに向けるまなざしは、観察に近いような気がする。これは読者が彼女の視線を通して見るように設定されているからでもあるが、もとからそういう関係なんじゃないのか、この二人。男としては、女友達の生態が多少なりともわかったような気もした。

絵柄だが、イラスト的な感じが漂うシンプルなものである。サインペンか何かで必要最低限の線を書き、それにペイントカラーで要所要所に色を塗っている。最初のほうは、もっと水分の多い(多分水彩絵の具)色つけだったが、すぐにペタっとした配色に変えている。これが絶妙に上手い。やはり高野文子は只者ではないといったところ。まったくこの器用さには感心する。第3話のバーゲン会場において、人ごみに彼女たちが埋っているところの描写など、なかなかできないように思う。

この作品は雑誌「Hanako」での88年6月から92年12月まで連載されたものである。るきさんはバブルが弾けるころに、イタリアへと旅立っていったのだった。

ちなみに「Hanako」では、(当時)中堅どころの女性漫画家に一月2Pを割いて連載させていたらしく、彼女のほかにも吉田秋生、魚楠キリコといった面子がこの連載枠を担当している。今でもやってるんでしょうかね。      
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