夢見る惑星

<作>佐藤史生
小学館 全4巻

 誰か映画化して

滅亡する世界を舞台とした作品は、探せば結構あるだろう。光瀬龍原作で萩尾望都が作画を担当した『百億の昼と千億の夜』などが典型例だ。永井豪の『デビルマン』もそうかもしれない。文明の滅亡後を扱った作品となると、更に多そうだ。代表作は宮崎駿の『風の谷のナウシカ』あたりだろうか。

この作品もその部類に入るのだろうが、非常に独創的なところがある。世界の滅亡が近づいている中で、それぞれの属する立場に苦悩する人々の姿といった人間ドラマも巧みだが、最終話での終わらせ方が秀逸。実はここは・・・という決め方自体は古典的ともいえる手法かもしれないが、その辿る経過が面白い。猿の惑星の反対の発想なんだろうか、なんとお猿さんからやり直しと言う形をとるとは・・・。この気宇壮大さがなんとも心地よい。

それがただのアイデアだけでなく、作者である佐藤史生の持つ世界観と密接に関わっているところも高く評価したい。彼女はどこか冷めたような視線で世界全体を眺めようとする。そこには、世界が人間の営みを超越して動いていることへの感動が根本にあるように思う。その単純で、だがあまりにも荘厳すぎる現実のなかにロマンを見出しているのだろう。最終ページの「大地は夢みてやまず、時もまた流れてやまない。」は、さすがにジンときました。

この佐藤史生という漫画家は、多くの作品に「複合船」などの共通の小道具を用意する傾向にあって、連続する一つの世界を描きつづけている節がある。この作品も「複合船」ワールドの一つと言える。

欠点をいえば、絵だろうか。シンプルというよりも淡白で、上手いとはとてもいえない。個性はあるし彼女の理知的なストーリー展開にあってはいるのだけれども、デッサンが狂いまくっていたりする。コマの構図もときに単調なことも。ストーリー構成は、物語のうねりがラストに一気に収束していて素晴らしい仕上がりなだけに、もったいない。もう少し絵が上手かったら、もっとヒットしたかもしれない。これは作家としての彼女の立場に全て当てはまってしまいそうな気もするが。

あまり有名な作品ではないが、なかなかの秀作。80年代前半に女性が描いた本格的SF作品としても、特筆すべきものがあると言えそう。
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