今は亡き月刊ノーラに長期連載されていたシリーズ。がさつだが剣の腕は一流のモカ、しっかり者で手先の器用なブルマン、優れた魔法の力と茫漠たる性格を持ったキリマンが主役である。その三人の、気ままな冒険劇といったところ。この三人に加えて、霊魂存在者エスプリがモカの剣に変化してくっついているのだが、エスプリ以外は別段何の目的もなく世界中を放浪して回っている。
中盤以降からは、竜の末裔たるロゴスと天上の英知を司るアストラルとの抗争が話の主流となっていくのだけれども、当の御三方のペースは終始ほとんど同じであった。いい加減な題名からも推測できるように、この漫画、どうせすぐに終わるだろうと作者も考えていたらしい。しかし、結果として10年以上も続いたのである。(正確にはコミックNORA1987年11月号〜1998年9月号まで)本誌の休刊がなければ、もっと続いていただろう。
ここまで長期の連載となった理由は、モカというキャラクターの素晴らしさに尽きる。知的精神の塊であるエスプリが、「勇気でも愛情でもない」モカの不思議な魅力に惹かれるところからこの漫画は実質上始まるのだが、それがストーリーの全てを引き受けた感がある。彼女の健全かつ正しい元気のよさが、読者にまで届いてくる。他のキャラクターも脇役から雑魚キャラまで十分個性が立っているので、読みやすい。気ままな生活と、三人の押し付けがましくない友情、基本的に三秒以上悩まない登場人物たち。少年漫画としては理想的かもしれない。
最初いい加減な設定をしていたおかげで、後の方になって辻褄の合わなくなる部分も散見される。特におざなり編最期の時間軸の話は、どうもなんか矛盾している。けれども、無理に凝ったくだらない漫画より数段面白い。設定のいい加減さをメインキャラクターの作り出した作品世界がカバーしているという、最近の漫画では珍しい形になっている。80年代に描かれたRPG的ファンタジー世界を舞台とする作品は失敗に終わったものが多い気がするが、これは稀な成功例になるのではないだろうか。
あと興味深かったのは、連載中の11年間の軌跡の中で、この漫画がただの冒険漫画という枠組みを少しづつ超えていこうとしているところ。この作品に限らず、最初はただ単にRPG世界やアニメを漫画化しようとした作家たちが、自らの中で世界観を育んでいこうとするのが、この時期の一つの流れであったと思う。その意味では、漫画史の文脈で見れば、象徴的な漫画の一つとも言えるだろう。
はっきり言って「なりきり〜」のほうは今ひとつなので、おざなりシリーズだけでいいかも。