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<作> 萩尾望都
小学館
この人の描く涙は、何故か美しい
かつてコンピューターを扱うため、遺伝子改良を施された「一角獣」と呼ばれる種の、愛の軌跡を描いた連作。
誕生の理由がコンピーター技師としての能力を際立たせるためであったため、この種は無駄な感情を一切抱かないように「設定」されて作られたのだが、その結果生まれたのは、意外にも精神的衝撃に対して脆い種であった。結局、感情の制御などにおいてアンバランスな形になってしまったということだろうか。その後、この種は本来の人類の中に埋没していき、たまに隔世遺伝で生まれてくるのみとなっていった。この漫画はその時期を舞台としている。
種としてはもはや黄昏の時代を生き、人としても多くの場合孤独に生きなければならなかった彼らの人生は、とても儚い。本当に小さな、すぐ枯れてしまう草のようだ。しかし、だからこそ、その朴とつな愛情が実ろうとする瞬間は見ているものの胸を打つ。エスパーとしては半人前の少年が、一角獣の遺伝子を持つものと相互補完的関係となって、やっと何かを踏み出そうとするシーンもなかなか感動的。
感情の起伏をどう受け止めてよいかわからない変異種ゆえの悲しみをとおして、人間の純粋な愛情を映し出した佳篇。
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