動物のお医者さん

<作>佐々木倫子
白泉社文庫 全8巻

 大学ってこういうもんかと思ってました

H大学獣医学部に在籍する生徒たちと個性的な大学関係者が繰り広げるコメディ作品。ハスキー犬ブームの火付け役となり、モデルとなった北海道大学獣医学部の偏差値を押し上げた 、受験生泣かせな漫画でもある。佐々木倫子の出世作。

妙に冷静な主人公ハムテル、その祖母の痛快ばあさん、どうも落ち着きのないネズミ嫌いの二階堂、トロい割にはちゃっかりしている菱沼聖子、傍若無人な漆原教授、その横で胃を痛める菅原教授・・・・
周りにいそうでいない、でもこの世のどこかにはいるかもしれない登場人物たちが面白すぎる。結構忙しそうな理科系大学生のキャンパスライフも、彼らの活躍でやたらと楽しそうに見えてしまう。
そしてその横では、やはり個性溢れる動物たちが走り回って物議を醸し出す。おっとりしたハスキー犬のチョビを筆頭に、関西弁の猫ミケやら、やたら凶暴なニワトリなどなど、どれも好き勝手に生きている。

少女漫画でありながら、恋愛劇がほぼ出てこないのも異色。話題にのぼることも何度かあるのだが、ロマンチックな話にはならない。学生結婚の話などがでてきても、当該のカップルは全く登場しない。菱沼聖子のお見合い話の引き合いとして出てくるだけ。その菱沼さんのお話も、上手くまとまることは一度だってないままに終わる。本人も「結婚なんかにはにげないからね〜。」などといっている始末。

多分、集団劇の中で直接には関係のない話を切り捨てたために、こういうことになったのだろう。作者の佐々木倫子が書きたかったのはややこしい個人の感情ではなく、環境と状況からおきる面白みの部分だったわけで、あまりそういったことは描く必要などなかったのだ。というか邪魔だったといった方が正確か。菱沼のお見合い話なども、あくまで一種のイベントとして扱われていると見たほうが正しそう。動物の死が描かれないのも、同じ理由によると考えられる。

よく漫画評論家に言われていることだが、これはかなり画期的なことだったかもしれない。少女漫画雑誌において、身辺雑記型の漫画以外で恋愛話の出てこないものは、異色中の異色だ。菱沼というキャラクターは、フェミっぽく言えば等身大の働く女性への憧れが具現化した存在と見ることもできるかも。

絵柄は、動物はめちゃくちゃうまい。そのかわり他はいい加減である(特に初期は)。作者の性格もあるのかもしれない。後半に入ると周囲の景色などをかなり緻密に描いているシーンもあるのだが、全体としては余分なものは捨象されている傾向にあると思う。

色々な視点から読めるため、子供から大人まで多くの人が楽しめる名作。
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Copyright (C) 2001.10.23 Iwashi Hachiman 

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