数年前まで「モーニング」で連載されていた、割と人気のあった漫画。
この漫画は住んでいるところによって面白さの意味がだいぶ違ってくると思う。私みたいに関西は京都と大阪の境目あたりに住んでいると、作品の舞台がかなり身近に感じる。大体のネタに「あ〜あるある、そういえばあるわ、こういうこと。」という感想を抱くわけだが、ほかの地方、たとえば関東とかになると、「へー、あっちはこういう風な世界があるわけか。」となるんだろう。
一言で言ってしまえば、全巻通していかに大阪人がおもろい奴らかということがつらつらと描かれているローカルネタだ。ローカルな地方の話といっても、ほかの都市では12巻も続かなかった気がする。たしかに傍目から見て濃い連中が多いことは否めない(最近はそれが悪い方向にでてるみたいだが)。
一応いっておきますけど、この漫画で展開されている「大阪ネタ」は、多少郷愁を含んだ部分もありますからね。いくら市内だとはいえ、このまんまの世界ではないですよ。郊外地域だとか、あるいは周辺部の北河内や和歌山に近いほうに行くと、気風も変わってくるし。
それはそれとして、大阪の印象というと、少々下世話な『ナニワ金融道』みたいなものが漫画のパターンとしてある。吉本のお笑いのイメージもあって、現実の世間様の大阪に対する評価もそれに近い、と思う。しかし、この漫画に出てくるような生活も一方ではあるわけだ。だから、中流の上くらいのオオサカ人を描いた作品として、『大阪豆ゴハン』はとても貴重である。昔の小説なら『細雪』みたいなのもあったのに、なんでこんなことになったんだか。
あと、この人は絵が下手くそに見えて実はそこそこ上手い。まるでクラブやサークルのちらし、あるいはミニコミ誌に出てくるような絵柄だが、基本的な人間や物の描き方はちゃんとできている。
同じ大阪人の私としては、ぜひ多くのほかの地方の人に読んでいただきたいと思うのでした。