萩尾望都の代表的作品の一つ。緻密なプロットと、非常に難解なストーリーが特徴で、一度読んだ程度では理解できないかもしれない。ちなみに私は何度読んでも理解しきれない。
しかし、それを補って余りある魅力を持っている。なんと言えばいいのだろうか、この作品を呼んでいると、子供時代に夜空の星を眺めたときの、その星の光が何万年も前のものだと知った、あのときに感じた気持ちを思い出す(と考えつつ読んでいたら、あとがきにはやはり星の話が出てきた)。多分、それは彼女の宇宙観のなかで練られた物語だからだろう。時空間のゆらめきの中で展開される物語は、永遠とも思える時間の中で生きている宇宙の鼓動そのものだ。
数万年前に滅んだ種族の悲しみと、毎日父王から殺されつづける一人の時空人の悲しみが頂点に達したとき、宇宙の摂理に微妙な歪みができてしまう、という発想自体、常人には空想すらしにくい。この幻想的な物語に、彼女の繊細だが熟練した絵柄がまたよくあっている。作者も相当気合を入れて描いたのではないだろうか。
この壮大でありながら優美な物語を編んだ萩尾望都と言う人は、やはりすごい人です。
しかし、ラグトーリンって結局なんだったんだろう・・・・彼女もまた、時空人の一人だったんだろうか。