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【家庭訪問!?】 サンプル(オフ/フルカラー/A5/32P/400円)

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蒼月柊香

鈴木笑

水津奈未

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 家庭訪問!?表紙 



【常套句】(蒼月柊香)

 ついこの間まで日差しがキツイなどと思っていたのに今日はやけに冷え込む。煙るような霧雨と微かに髪を揺らす風のせいかもしれない。こんな日は客の入りはいまいちだろう。
 開店の準備をしながら普段あまり店ではかけないレコードを手に取った。マレーネ・ディートリッヒ、伝説の域にはいるような女優であり、歌手。低く、嗄れたような独特の歌声が退廃的な雰囲気を作り出す。ちょっとアンニュイな日にゃぴったりだ。
 歌声に耳を傾けながらグラスを磨いていると、店のドアが遠慮がちに細く開く。まだ、開店前なんですよと声をかけようとして、俺は入ってきた人物が零一であることに気付いた。
「なんだ…お前かよ。寒いから早く入れ」
 零一の髪にもコートにも霧雨が作った細かいビーズのような水滴が吹き付けられていて、ライトの光を受けてキラキラと小さく反射した。
「なにか暖かいものをもらえるか」
「酒がいいのか? それとも酒じゃなくてもいい?」
 零一はちょっと考えて、酒じゃなくてもいい、と小さく答えた。
「んじゃ、レモネードな。思い出の」
 からかうように言葉を投げたがのってこない。黙って頷くだけ。ケンカでもしたんだろうか?
「彼女元気?」
「ああ…元気だ…」
「なんだよー。もっと景気のいい顔しろよ。こんな天気の日に図体デカイ男がしけた面すんなって!」
 少し強い口調でそう言うと、零一は驚いたように顔を上げて俺の目を捉え、それからまたふうっとため息をつく。なんなんだ、いったい。
「…明日、彼女の家に行く」
 今までも何回も行ってるだろうに…。なにをいまさら?
「なんだ、デートか? うまくいってるならいいじゃないか。俺はてっきり大ゲンカでもしたのかと思ったよ」
「…お前の両親って恋愛結婚だったか?」


 

【注文の多いあなた】(鈴木笑)

 もともと、はばたき学園高等部において、家庭訪問の実施は伝統的に無い。
 小等部、中等部には確かにある。それはもちろん、児童(生徒)の家庭環境、家族を知る上で成長過程にある児童(生徒)をより深く知り、教育に役立てる……という建前の元、どちらかというと伝統的に行われている。
 結局のところ、教師もひとつの機構の中の歯車であり、通常(特に磨耗した教師は)それらに何か手を加えたり、自ら変革するということは無い。
 何故なら、極めて乱暴に言うなら「面倒だから」だ。
 だがしかし、時にはそれらを「面倒だから」で済まさない人物もいて、世間から「聖職者」と呼ばれたり「金パチ先生」と呼ばれたり、同僚や学校の管理を預かる方々から少し困った視線を向けられたりする。
 とどのつまり、伝統的に無いはずの家庭訪問を実施しようとしている者がいる。
 はばたき学園高等部に在任する数学教師、氷室零一は先ほどの「良い教師の素養」を持つ人物であり、そういった教師が皆そうであるように、少し熱血漢だったので、問題児のレッテルを貼られた女子生徒を放っておくことができなかったのだ。
 なにしろ問題の女子生徒は、氷室の担任するクラスに在籍し、さらに氷室の顧問する自慢の吹奏楽部にも在籍しているのだ。
 彼女は目立っては荒れていない。ここで指す荒れているとは、要するにあからさまに『不良ルック』であることだが、二十一世紀に入った現代、都会の部類であるはばたき市においてその存在はマイノリティーであり、学園の高等部にはいない。では、たとえば教師の目を盗んで授業中にメールを送りあったり、マスカラを短いまつげに塗りたくったりしているかというと、そういうわけでもなかった。なかったのだが、彼女は少し、いやとても奇行の目立つ少女なのだった。


 

【確認】(水津奈未)

姉ちゃんが階段を降りてくる音がする。
 大学生はもっと朝が遅くて遊ぶものだと思ってたけど、姉ちゃんは違うらしい。
 俺はわざとらしく、テーブルにつっぷして姉ちゃんが来るのを待った。
「尽。あんだ朝から調子でも悪いの?」
「姉ちゃん、これ頼む」
 俺が差し出した紙をみて、姉ちゃんはびっくりしていた。
「あんた、今日家庭訪問なの?」
 両親は、昨日から海外に旅行中だ。懸賞が当たったとかで、いそいそと出かけていった。
「だって、言ったら悪いだろ? せっかくの旅行なのにさ」
「……尽、あんたけっこういい奴ね」
「まあね。」
 姉ちゃんは本気で感心しているみたいだったから、俺は胸をなでおろした。
 ここで計画に気付かれたら、全てがおじゃんだ。
「わかったわ。私が先生の話聞くから、先生にもそう伝えておいて」
 お姉さんだもんね、と自分を励ましている。
「でもさあ、姉ちゃん一人で大丈夫か?」
「そうねえ……」
 少し不安げになっている姉ちゃんにさりげなく言う。
「やっぱこういう時には、大人の人がいてくれるとなあ」
「大人……。」
 そういわれて姉ちゃんの頭に浮かぶのは、1人しかいない、はずだ。


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