◎逆境の男。 休みはジャミソンブリュワーにとって楽しい思い出を 浮かばせることはできない。 ☆ブリュワー 「ない物事に興奮できなかった」 「サンクスギヴィングに夕食を食べたり、クリスマスに プレゼントを開く楽しみってものはテレビの中だけの 物に思えていたよ」 「それらは俺にとって関係のないものだった」 ブリュワーの幼少期はほとんどホームレスに近い生活 だった。 ブリュワーの知る母親は薬物中毒の母親だ。 成長するにしたがい、親戚や友人の家での生活を強いられる ことが多くなった。 母親はアパートの家賃すら払うことができなかった。 当然、サンクスギヴィングもクリスマスも彼にとっては 現実的なものではなかった。 彼の幼少期は恐怖と注意で費やされていった。 ☆ブリュワー 「8、9歳で平気で家に3、4日放置された」 「気の狂うような毎日さ」 父親に頼るという選択肢も彼にはなかった。 一度だってあったこともない。 自分の父親の名前も知らない。 唯一わかることは「プロフットボール選手であったジャマイカ 人の気取り屋」ということだけだった。 ☆ブリュワー 「俺の身体能力の高さは父親ゆずりなんだろうね」 母親が教えてくれた父に関する唯一の情報であった。 ☆ブリュワー 「誰かにわびてほしいなんて思ってないよ」 「俺が厳しい中で育ったっていうのかい?」 「確かに」 「でも、俺は自分よりも厳しい環境で育ったやつがいる」 「俺は幸運さ」 「バスケをさせてもらったし、面倒見てくれる人もいた」 「別に母親をうらむつもりもない」 ブリュワーは母親と親密な関係にはない。 たまに便りはあるが、その関係はすでに修復されるもの ではないのだろう。 ========================================= 同じく厳しい環境で育ったアンダーソンもこう語る ☆ケニー・アンダーソン 「彼の状況を本当に理解し、彼の環境などを理解することは 彼の特徴を示す大きな要素になりえるだろう」 「俺と俺の母親、いとこ、親戚と一緒に生活していた時期 がある」 「俺たちが立ち退かされ、頼んで一緒に住むようになった」 「他の人の規則で生活する現実は自分にとつて、すくなからず 影響がある」 「まぁ路上生活よりはマシだけどね」 「そういった状況を乗り越えて、いまのよりよい環境がある」 「多くの人間がそういった環境にいけないことを考えれば 神に感謝すべきことさ」 ブリュワーは多くの助けの元に今の環境にいる。 母親の親友の一人ガーサー・コーディは彼を中学に進学させた。 コーディーはブリュワーにスポーツに専念させ、母親との距離を 離そうとした。 コーディーと母親はそれについてもめ、結局コーディーはブリュワー を追い出さざるを得なくなった。 ブリュワーのサマーリーグコーチ、ウォレス・プラザーも彼を市立 小学校にいれ、また大学入りなどに貢献した。 オーバーン大学2年でサウスイースタンカンファレンスのアシスト リーダーになり、彼はアーリーエントリーを決意した。 ☆プラザー 「私は彼を8歳のときから知っているが、彼の才能に疑いはない ことはわかっていた」 ブリュワーのつらい幼少期は、精神面、感情面などで影響を残している。 小学校時代のスケッチブックなどはない。 インディアナに加入するとき、彼の出生証明書もなかった。 インディアナがどうやって彼のパスポートを取得したかは興味深い ものである。 ☆ドニー・ウォルシュ 「彼の出身を法律的に証明するものがなにもなかった」 「信じがたいことだったし、初めての経験だったよ」 ============================================ インディアナに合流して以来、アーテストにとって、ブリュワー は兄弟に近いものであった。 2人とも貧困層が集うニューヨーク、クィーンズヴィレッジ出身。 ☆アーテスト 「ブリュワーがPGで俺がSF以外は同じような経験をしている のさ」 「ブリュワーがインディアナだろうと他のチームだろうと、プレー する機会を得られれば、シーズンに4,5回はトリプルダブルを 取れると思っているよ」 ブリュワーは総計23試合123分。 ほとんどがIL入りで、今年もILにいることが多いだろう。 しかし、彼のいきさつを知っているカーライルには慕われている。 ☆カーライル 「彼にはそういった強いハートを持っているから、選手としての 評価はどんどん私の中で上がっているよ」 「練習だろうが、試合だろうが、彼は貢献しようという気持ちが すごく感じられる」 「あのやる気とハートを持っていれば、まだまだ彼はNBA選手 としてやっていきつづけるだろう」 ブリュワーには、バスケにおける明るい未来があってもまだ孤独 である。 幼少期のつらい過去がいまでも残り続ける。 他の選手が家族や友人と、会場を後にするが、ブリュワーはいつも 一人で会場を後にする。 ブリュワーには所有する家がない。 アトランタに所有していた分譲アパートも手放した。 シーズン中に今の場所を借りていた。 またシーズン後に家を探さなくてはいけないかもしれない。 ☆ブリュワー 「(家探しは)あせらないよ」 「そのときがくれば、考えるさ」 「今はとにかくバスケに集中し、チームが必要なときに自分の プレーを見せられる準備をしておくだけさ」