◎本当の評価を得られなかった男 各NBAチームはスカウト活動に何億円もかけ、多大 な時間を費やす。 各スカウトは、選手達の試合、練習を見るために各地 を転々とする。 噂を聞き、色々な面から選手をテストしたりする。 アイオワ大のPG、ジャマール・ティンスリーは、去年の 6月コンセコフィールドハウスでプレドラフトワークアウト に参加した。 アイザイアはその時にティンスリーを見て感じた。 ☆アイザイア 「ティンスリーは私が好きなタイプな選手だと思った」 今年、ドラフト1巡目ピックを所有していなかったインディアナ は、ティンスリーを獲得するために、メンフィス、アトランタとの トレードで未来の1巡目ピックと27位のジャマール・ティンス リーを交換した。 ティンスリーを高く評価するインディアナは、ティンスリー獲得 のため、GMであるデヴィット・カーンは各チームに電話をかけ トレードの申し込みをしたといわれる。 ジャマール・ティンスリーはもともと高い評価を浴びているPG であった。 しかし、即戦力PGともいわれたティンスリーはいつのまにか評 価を落とし、1巡目27位までドラフトされなかった。 ドラフト中のティンスリーはジキルとハイドのようだった。 多くのチームがティンスリーを規律を持たないトラブルメーカー になりうる選手と評価する中、インディアナは今のチームには いなく、チームに大きな有益をもたらせるタフで才能のある選手 といった評価を示した。 他のチームの評価はどれも悪い印象ばかりだった。 ○高校中退で、刑務所経験を持つ選手。 ○インタビューを無視した選手。 ○シャーロットのワークアウトをさぼった人間。 ○オフシーズンでの食生活がいい加減で、体重を増えた選手・・ ☆ティンスリー 「自分についてのことを色々聞いたよ」 「まるで犯罪者のようにいわれたし、ドラッグもやっているみ たいにいわれたね」 「でも、そんなことでイライラしてたら、強い人間でないしね」 インディアナは、ティンスリーは母親が教育のために刑務所 にいれたことを知っていた。 ティンスリーがワークアウトに出られなかったのは、肘や足首 の怪我と、天候上の理由であることも知っていた。 アイザイアも噂や評判で評価する人間ではなかったこともティ ンスリーの指名をさせた大きな理由だった。 アイザイアもユダヤ系の出身であることを理由に差別などを受 けたこともあった。 アイザイアは、シーズン終盤にティンスリーのビデオを見て、一 目惚れした。 そしてワークアウトでのワンノンワン、そして練習試合で、ティ ンスリーのリーダーシップ、パスセンス、状況判断能力といった 素晴らしい才能を見出した。 ティンスリーに対しては、オーランドのドック・リバースHCも同様 の評価を示しており、またリバース本人も同じ様な立場に立った ことがある。 1983年のドラフトで、リバースは態度が悪いとの理由で2巡目 まで指名されなかった。 ☆リバース 「噂はどんどん大きくなっていく」 「一回流れてしまうと、それらはコントロールできないほどに大き くなっていく」 「だれもそれが本当かどうかなどはチェックしたりしない」 「なぜなら、そんなことを調べている時間がないからね」 リバースはスカウト陣に、ティンスリーがアームストロングやハ ドソンのサポートが出来る選手であることを伝えていた。 しかし、6−6のジェリル・ササーを指名する計画が既にあった。 ☆リバース 「スカウト陣達が、私にこういった」 「『ディフェンダーが欲しいんだろ?』ってね」 「私はこういった」 「『もちろんそうさ』」 「『でも、ティンスリーは将来素晴らしいPGになると思うんだ』と」 結局、オーランドはティンスリーを指名せず、インディアナにティ ンスリーが来ることになった。 ティンスリーの悪い噂のおかげでインディアナは、リバース曰くの 「素晴らしい将来を持ったPG」を獲得することが出来た。 ☆ティンスリー 「理由があるから、こうなったのさ」 「俺には理由があったから、よりよい評価を得られなかったんだ よ」