◎不器用な男、ロン・マーサー 彼はボストンに1997年ドラフト6位指名を受けた。 出身大学であるケンタッキー大学のHCリック・ピティーノ、そして 同僚のアントワン・ウォーカー、ウォルター・マッカーティーがチーム におり、大学時代のチームの再ユニットだった。 しかし、NBAは大学とは違った。 マーサーはすぐに放出され、5シーズンで4チームを渡り歩いた。 ☆マーサー 「不満はあったさ」 「でも、すぐになれた」 「トレードされるのもビジネスだとすぐに学んだよ」 マーサーは、ボストン、デンバー、オーランド、シカゴ、インディアナと NBAらしい経験をしている。 1つのチームにいることができるのは、ほんの一握りのエリート選手 だけだと。 マーサーはインディアナで骨を埋める覚悟を持っている。 実際のところ、レジー・ミラー引退後のSGのポジションを彼が受け継ぐ 可能性もある。 その通りに行かないことは本人が一番よくわかっているが。 数年前、マーサーはボストンに居続けると思っていた。 大学1年の時にチームを優勝させ、2年生の時には大学のファーストチ ームに選ばれたエリート選手だっただけに。 1年目は平均15点でルーキーファーストチーム、2年目はロックアウトに より試合が少なかったとはいえ、17点を稼いだ。 しかしGM兼HCのリック・ピティーノは、サラリーの高騰を防ぐために、 マーサーのサラリーに関して、市場価値よりも低い提示をした。 ☆マーサー 「ピティーノに正当な契約条件を出すように要求した」 「しかし彼の答えはノーだった」 マーサーはその夏、6人のトレードでデンバーへ放出された。 それが彼の下り坂の始まりだった。 彼はデンバーでのプレーを望まず、最初のプレスカンファレンスをパスした。 半年でデンバーから、自ら望んでオーランドへ移籍。 その夏に再度FAとなり、またピティーノの下への移籍も考えた。 しかし、ちゃんとした結果を残せないピティーノを取り巻く環境が、その話を 頓挫させた。 マーサーは、シカゴ再建の切り札として4年28ミリオンの契約で移籍した。 チーム1の平均20点近いポイントなどで貢献したが、ケガで61試合の出場 におわった。 そして今シーズン。 彼はサラリー軽減のために、インディアナへ放出された。 マーサーは、チームメートのマククラウドに「ワガママ」といわれ、メディアなど にも「傲慢」などと叩かれた。 しかし彼はそれを受け流す。 ☆マーサー 「大半のライターがたいしたリサーチもしないしね」 「人からの話で話を作りあげる」 「ちゃんと話がくれば俺は話すよ」 「でも、話がこないからなにもいうつもりはないよ」 マーサーは、クールな外見とは裏腹に優しさを兼ね備えた男だ。 新人の時、彼は母親にキャデラックを買ってあげた。 シカゴ時代、サンクスギヴィングデーのチャリティー夕食会のスポンサーを努め たりもした。 故郷のナッシュビルの800人の子供にバックなどを買ってあげたりもした。 ☆ジャマール・クロフォード(シカゴ・元同僚) 「マーサーはなかなか人を信用しないけど、一度信用すれば、とても親切に してくれる」 「マーサーは優れた人間なんだけど、一歩退いて状況を確認するタイプだから、 みんながそれに気付かないんだ」 マーサーはインディアナでの6週で、周りの人間にもやれることを示した。 ☆ウォルシュ 「想像していた以上に、シュート能力がある」 「一生懸命守備をする」 「全ての面においてプロフェッショナルなんだ」 「本当に心地良い選手だ」 マーサーは過去全297試合中271試合でスターターを努めていた。 現在はミラーのリザーブになっている。 ☆マーサー 「別に気にならないよ」 「なぜなら、そのうち俺の時が来るはずだからね」 「勝っていることが重要なのさ」 「俺にとって重要なのは、スターターとかでなく、チームのみんなで勝利を 得ることなのさ」