○家族思いの選手 ザザ・パチュリアはいつも父を尊敬し、愛していた。 10代になった時にはさらにその気持ちは強まっていた。 パチュリアは常に父がどんな行動をするか、どんな風に他人と 対話しているか、そして仕事に対してどうだったかを見て いた。 パチュリアは常に父が自分の妻と唯一の子供に対して、絶えず 注意を払っていたかということを感じている。 パチュリアは父の多くの振る舞いを心に残していた。 それがいつか自分自身に役立つかもしれないと理解していた が故に。 そういったものが、彼を父のような人間にさせた理由だと パチュリアは推測する。 ☆パチュリア 「俺の父は、ちっちゃい頃に、見て学んできた人間の1人 なんだ」 「父は徐々に俺に色々なことを教えてくれた」 「14歳の時に、彼は25歳でやるべきことを教えてくれた」 「父は未来のことを考えていた」 「俺の未来についてね」 しかし、パチュリアも彼の父親も、その未来がそれほどすぐ に不意にやってくるとは思ってもみなかった。 パチュリアが16歳の時に、検診のために父は病院にいった。 そしてそのまま家に帰ることはなかった。 パチュリアはこういう。 謎に包まれた致命的な心臓発作が彼の父を襲ったと。 彼によれば、彼の父は死ぬ直前に、一本の注射を打ったと。 それが原因ではないかと。 ☆パチュリア 「誰もなにもいわない」 「医者に行った時はまだ元気だったと思う」 「確かに顔色が悪い時もあった」 「でも、間違った注射のために、顔色は無くなってしまった んだ」 父の死は、母とパチュリアにとって辛いものだった。 アイドルともいえる存在を失ったパチュリアにとっては 本当に辛いものだったであろう。 しかし彼はそれをバネにした。 ちょうどトルコリーグでのプロ一年目で、彼はいいプロ選手で はなく、素晴らしいプロ選手であることを既に示していた。 欧州で長く活躍するよりむしろ、彼はNBAでやることを 望んでいた。 しかし、父が息子に教えたことは、「家族のことを第一に 考えること」だった。 パチュリアも父の意向を受け入れるつもりでいた。 おばと祖母、そして母親と・・家族に男はいなかった。 ☆パチュリア 「俺が家族で唯一の男だった」 「いうまでもなく、俺が彼女らの面倒を見なくてはいけなか った」 「みんなが俺が小さい頃にかわいがってくれた」 「でも、時が過ぎ、今度は俺が彼女らの面倒をみなくては ならなくなった」 「正直怖かった」 「どうしていいかわからなかった」 「財政面だけでなく、グルジアという誘拐や強盗がある状況 の悪い国家でどうすればいいのかと・・・」 「だから俺はバスケをやめるともいった」 「彼女らと一緒にいるために、学校にいこうと」 「彼女らを養っていくために他の道を探すつもりだった」 彼の母、マリナは彼の意向に特に疑問をもたなかった。 彼女は息子が自分たちのために何でもしてくれることを 知っていたから。 しかし、マリナはそういうことを望んでいなかった。 彼女はバスケが自分の息子にとってどういうものかを理解 していた。 バスケが、彼の人生にとってどんなに意味のあるものかを 理解していた。 マリナ自身もバスケをしていたため、パチュリアのジレンマに より、理解があった。 マリナも72年から80年の間、グルジアの代表チームの 選手であった。 息子と同じPFとして。 息子がバスケを始めて以来、息子の成長に熱心だった。 練習や試合の後に、息子に色々指導したりもした。 ☆パチュリア 「彼女はかなり厳しかったよ」 「俺にいいプレーをして欲しかったみたいだね」 ☆マリナ 「バスケは彼にとって本当に意味あるものなの」 「NBAでプレーすることが彼の最大の夢だったしね」 パチュリアはそのままトルコで5年間夢をかなえるために プレーした。 そして2003年の6月24日。 オーランドがパチュリアを2巡目で指名した。 しかしオーランドでの59試合での成績は平均3,3点3R。 オーランドはエクスパンションドラフトで彼をプロテクト しなかった。 シャーロットはパチュリアを指名するや否や、ミルウォーキー に2巡目指名権とトレードした。 ミルウォーキーがスティールしたのは既に明らかである。 6−11.240ポンドの身体はミルウォーキーの第一リザ ーブとしてプレータイムをもらっている。 彼の堅実な働き、そして成長に、ミルウォーキー関係者は 期待している。 ☆テリー・ポーター(ミルウォーキーHC) 「2巡目指名権でトレードなんて信じられないような活躍 だね」 「ドラフトで、インサイドプレーヤーを獲得できなかったから そのトレードは本当にエキサイティングなものだった」 「若いだけでなく、大きなサイズも兼ね備えている」 「インサイドで物怖じしないし、よく走れる」 「彼はさらなる進化を望んでいる」 「このリーグでいい選手になれるだろう」 母もそんな息子のために、マリナはグルジアを捨て、ミル ウォーキーのアパートで息子と暮らしている。 グルジアの料理やイタリアの料理を彼に振舞う。 ホームゲームには必ず行き、息子の支援をする。 ☆マリナ 「ザザを助けるために、ここに来たの」 「ザザは大きくなったけど、まだ私にとっては小さな子供 なのよ」 「ザザが私の全てであり、私の人生だわ」 そしてマリナもザザのものである。 パチュリアも母がいなければ、どうなっていたかと思うと ゾッとするという。 パチュリア自身、まだ父の死に苦しんでいるという。 決して埋められることのない空白かもしれないという。 ☆パチュリア 「ずっと考えているよ」 「調子がいい時は特に思い浮かべるね」 「調子が悪い時は逆に無理にでも思いださないようにしてる のかもしれない」 「ただ母が俺を助けてくれた」 「彼女の助けがなければ、今の俺はなかったかもしれない」 「だから俺は本当に幸せなんだ」 「そして自分自身、家族のためにいい仕事をしていると 思っている」 きっと彼の父も誇らしげに同意してくれるだろう。