「ポストシーズンのカギはしばしばディフェンスにあり」 ブルース・ボーエンは、80年代レイカース最強時代の カルフォルニアで育った。 多くのファンが、マジック・ジョンソンのノールックパス、 ジェイムス・ワーシーのダンク、カリーム・アブドゥール ジャバーのスカイフックに憧れる中、ボーエンは違う 人間に興味を覚えていた。 6−7・170ポンドのマイケル・クーパーだった。 マイケル・ジョーダンやラリー・バードといったエースを常に 密着してマークする選手を見ていた。 ☆ボーエン 「俺はマイケル・クーパーが好きだった」 「マジック達もスゴイと思う」 「でも、俺の中ではクーパーなのさ」 「彼が自分よりも大きい相手と、どのようにプレーするのか をいつも見ていた」 「粘り強く、諦めることない選手だったよ」 「どんな相手にも110%の力を出していた」 ドラフト60位のクーパー同様、ボーエンは決してスター街道 を進んできた訳でない。 大学卒業後、彼はドラフトされなかった。 CBA・フランスリーグを経て、NBAに入った。 彼の堅守が評価されてだ。 そして、その後、彼は子供の頃のヒーローであるクーパーの ように、リーグ随一のディフェンダーの1人となった」 ☆クーパー 「ブルースは、とても優れたアスリートだ」 「200ポンドの体だが、250、260あって守備ができない ような選手をあざ笑うかのような優れた守備ができる」 オフェンシブな能力に優れたNBAプレーヤーは、将来的に スターになるかどうかは未知数だ。 NBAにおいて、攻撃だけではやっていけないからだ。 一方で、守備面で優れた選手は、ペイトン、エディー・ジョー ンズ、ムトンボ、シャック、コービーといったチームの勝利に 重要な選手が多い。 ボーエンの守備能力は高校時代から育成されてきたもの である。 しかし、そういった守備選手よりも攻撃ができる選手を 高校時代のコーチは重視したがる。 それゆえに、ボーエンはポジションを維持するのが大変 だったに違いない。 ☆ボーエン 「もし俺がディフェンスができなければ、NBAでは、プレー させてもらえなかったと思う」 「しかし、高校時代、いつもいわれてたことはボールがない ところで、点を獲れる選手はいないといわれていた」 「高校レベルでは、多くの人間が守備プレーヤーに否定的 だった」 「俺はチームの勝利にほとんど貢献していないに等しいプレ ーヤーと思われていただろう」 ☆Red Auerbach(NBA最高の守備プレーヤー、ビル・ラッセル を育てたコーチ) 「不運にも、多くのコーチが本当に優れた守備選手を評価 しない傾向がある」 「それゆえに、数の制限により、優れた守備プレーヤーが何人 もカットされてきた」 「リバウンドや点が獲れなくても、優れた守備プレーヤーと いうものは存在する」 「だから、多くのそういった選手が、スタッツしか評価しない人間 によって、クラブから追い出されていくんだ」 「コーチがスタッツを見て、3点3リバウンドという成績を見て、 『おい、お前、うちにはお前を雇いつづける余裕はないよ』なんて いうことがざらだ」 「いい守備をして、相手のプレーをシャットアウトしているにも関わ らず、そういったことが起きる」 80年代最高のディフェンダーともいわれるクーパーは、エディー ・ジョーンズとゲイリー・ペイトンを優れたディフェンダーだと評する。 ジョーンズとペイトンは点も獲れ、守備もできる選手だ。 ジョーンズはクーパーやボーエンのように、細い体ですばやい 動きと手の使い方で優れた守備をする選手だ。 去年、シャーロットでリーグ1のスティールを奪い、今年も上位 にランクされた。 ☆クーパー 「エディー・ジョーンズは、新世代のアウトサイドディフェンスプレー ヤーの1人だろうね」 「彼は、生まれつきいいディフェンシブポジションを獲る才能を持っ ている」 「彼のディフェンスで、12点から15点守られているだろう」 「スティール・ブロック・リバウンドとね」 オリンピック・オールスター・NBAファーストチームのペイトンは リーグでも優れたオフェンシブプレーヤーの1人である。 しかし、彼は激しいディフェンスでトップクラスのディフェンダーの 1人でもある。 ☆クーパー 「彼はグローブっていうあだ名がついているね」 「それは彼にぴったりだよ」 「彼のスティール力は並じゃない」 「スティールできるポジションにいつもいる」 「ゲイリー・ペイトンは、バスケ界1の盗人の1人さ」 ペイトン本人は、自分の守備についてこう語っている。 ☆ペイトン 「規律にそってやっているだけさ」 「つかれているときでも、足を動かしつづけ、獲れるか獲れない かを見定めながら、ギャンブルに出るのさ」 「うまくコントロールしながらのスマートな守備を心がけているね」 そして、ボーエンはこう語る。 ☆ボーエン 「NBAレベルで、すぐれたスコアラーに点を獲らせないには、とにかく 出きる限りの守備をするだけさ」 「守備はチャンピオンシップ獲得の最大の武器だと教えられてきたか らね」 そして、最高のディフェンダーと評されるラッセル。 ボストンで13シーズンの間、11回のチャンピオンをもたらした。 平均14、5点・23、7R。 一方、もう1人の優れた選手であるチェンバレンは、28、7点 28、7Rという成績を残したが、彼はチェンバレンからたった 1度しかチャンピオンシップを奪うことができなかった。 それだけボーエンのいうように守備の意味合いは大きい。 ☆Auerbach 「ビル・ラッセルは私の中で最高のディフェンダーだね」 「誰も近づきすら出来ない位置にいるよ」 現在、ラッセルのインサイド支配力に近つける選手はいないが、 ドライブしてくる選手に驚異を与えている選手がいる。 2001年のディフェンス王ムトンボだ。 ☆クーパー 「ムトンボの守備は、アフリカ製ビル・ラッセルだね」 「彼が優れている理由は、リングの下で的確な位置どりをし、 相手にいいシュートを打たせないことにある」 「相手にいいシュートを打たせないのも優れた守備の一つだ」 昨年のレイカースは、確かにシャックの存在により、オフェンス ばかりが目についた。 シャックは完全にリング下を支配していたし、チームは6位の得 点力を誇った。 しかし、ディフェンスはもっとすごかった。 相手のFG%41%、3P%32、6%、もちろん許した得点の 少なさも、すべてにおいて1位だった。 こうしてみても、守備は攻撃以上に勝利に重要である。 オフェンスは一般受けするかもしれない。 しかし、ディフェンスは勝利とリングをもたらすものなのだ。