その神聖なるトレーニングプログラムは11月27日に始まった。 その日、バンクーバーグリズリーズはニューヨークでニックスと 対戦する予定になっていた。 シャリーフ・アブドゥール・ラヒムの計画では、大きなボウル一杯 のオートミール、何枚かのパントースト、オレンジジュース、沢山 のフルーツ、そして沢山の水を、日が昇る前までに平らげることだ った・ ☆ラヒム 「脱水症状にならないように、とにかく多くのものを食べるように した」 「それから、色々なビタミンもとった」 「またそれ以上に、必要以上動かないように勤めた」 ムスリム暦9月に行われるラマダンの絶食のためのトレーニング だった。 ☆ラヒム 「ラマダンは、精神的により充実させてくれる」 「ときどきちょっと疲労状態に陥るけど、辛ければ辛くなるほど、 それは辛くなくなってくるんだ」 アフターヌーンゲームは特に堪える。 12月3日のサンアントニオ戦、そして17日のオーランド戦は デーライトゲームだった。 ラマダンは太陽が昇る限り、なにも食してはならない。 食物はもちろんのこと、水も摂ってはならないのだ。 タイムアウトの際も当然水の補給はできない。 ☆ラヒム 「水が飲めないからじっとしているんだ」 「誰1人俺に構ってくれないから、助かるよ」 「それはそれでちょっと辛いときもあるけどね」 ☆トロイ・ウェンゼル(バンクーバーチーフトレーナー) 「タイムアウト前に、ボールボーイにいつも警告するんだ」 「ラヒムの側には水をもっていかないようにってね」 「シャリーフは、『給水する必要があれば、自分は給水す るよ』っていつも私にいっているが、自分が必要無いときに 給水の誘惑をされることを望まないんだ」 「当たり前といえば、当たり前だけどね」 絶食という辛い試練だが、ラヒムはラマダンが好きである。 宗教的理由は別にして・・。 ☆ラヒム 「ラマダンのときにいつもいいプレーが出来るんだ」 「冗談ぬきでね」 「スタッツをみればわかるよ」 ラマダンの最中であっても、「慈悲深い神の使徒」ラヒムは手を抜く どころか、より一層プレーに力をいれる。 彼にとっては、絶食なんて気にならないものであるに違いないので あろう。 ☆ラヒム 「私はアラーの神が人生で一番、そして家族、友人が大事なんだ」 「バスケも非常に高い位置にある」 「なぜなら、バスケは神が私に授けてくれた財産だと思うからね」 「神は私にバスケをする能力を与えてくれた」 「私はそれをおろそかにすることはできないんだ」 「おろそかにするようなことがあれば、その能力は私から取り上げ られてしまうだろう」 ラマダンの摂生法は非常に辛い厳しいものであるが、彼はそれが 間違ったものでないという。 もちろん、普通の人達と立場が違うので同じ方法はとらないが・・・ ☆ラヒム 「容易いよ」 「朝起きて、日が昇る前に朝ご飯を食べる」 「それから、コーランを読むんだ」 「しかし、まったくイライラしないよ」 「練習とトレーニングがあるから、朝ご飯に十分な食事を 摂っているからね」 「私も一般のイスラム教徒であるのなら、普通の朝ご飯を 摂るけど、それらじゃ十分な体作りができないんだ」 ただラヒムの所属するバンクーバーは北に位置するために NBAの他の都市よりも日没が早いために、ちょっと早く解放 される、それが本人にとってもチームにとっても大きい。 ☆ラヒム 「日没の時をそんなに意識していないよ(笑)」 「日没すれば、ご飯が食べられるから、バンクーバーで試合 なら、12月には5時に日没する」 「試合が7時からなら、試合前に食事が摂れるのは大きいけ どね」 「とてもありがたいよ」 「一気に、パンやパスタ、そして沢山の水を補給しているよ」 ウェンゼル氏もバンクーバーに来て以来、ラマダン時に、ラヒム が高いレベルのプレーを維持できることを非常に驚いている。 ☆ウェンゼル 「彼は身体的にも素晴らしいが、精神的にも優れている」 「イライラ感に耐える力が備わっている」 「練習は10時からでも、9時には練習に来て、200本の シュート練習をして、それから練習をこなす」 「さらにポスト練習、ウェイトトレ、そして2時15分くらいで 自分1人になるまで練習をこなすんだ」 「まぁバンクーバーは8時30分くらいまで日が昇ってこないし、 そして日の入りも3時4時に落ちてしまう」 「バンクーバーの短い昼間はシャリーフにとって大きな助け である」 「ただ、ロードの時は別だけどね」 ところで、長いNBAの歴史の中で、ラマダンに耐える選手は ラヒムが最初ではない。 ヒューストンのハキーム・オラジュワンなどもいる。 オラジュワンは1995年のラマダンの月に平均29点 10R、FG%55、2でプレイヤーオブザマンスに輝いた。 ☆オラジュワン 「ラマダンは決して自分を苦しめるものでない」 「自分を奮い立たせてくれる」 「楽しみの一つだよ」 「イスラム教は、本当に自分の集中力の基礎になって いる」 「俺にバスケをプレーすることを楽しむ強さを与えてくれた」 「イスラム教のおかげで高いプレー能力がついたと思うよ」 ラヒムはオラジュワンをこう評する。 ☆ラヒム 「オラジュワンは全てのイスラム選手の励みになる」 「今までの活躍とかだけでなくね」 「彼の気高さは多くのイスラム選手の憧れなんだよ」 「他のイスラム選手のために、ラマダンでもできるという ことを示してくれた」 「彼の活躍が多くのコーチ達のラマダンに対する認識を 変えたんだ」 そして、ラヒムもラマダンシーズンを乗り越えるための個 人的な目標を据えようとしている。 ☆ラヒム 「毎年、なにか達成しようと思っているんだ」 「去年は、できる限り集中できるように勤めた」 「集中力に欠けるところがあったからね」 「去年は集中力の点でうまくいったと感じている」 「今年は、家族、友人、チームメートとともに、祝えるよう な生活を送りたいね」 「神が私に恵みを与えてくれるから、楽しく、そして一生 懸命プレーが出来るんだよ」