○スターの成長 2002年12月12日。 売り切れ寸前の超満員。 夜更けのクリーブランドでCSUコンヴォケーションセンターは たった一人の高校生を見るために1万1000人の観衆が集まった。 それだけでない。 ESPN2のテレビクルー、そして報道番組のアナウンサー・・・ みんな彼を見るために・・・。 なぜ17歳の1人の少年のために? レブロン・ジェイムスは「選ばれしもの」としてスポーツ イラストレイテッドの表紙を飾った。 48年の歴史で高校生選手がそうなったのは彼を含めて8人目 の快挙であった。 その夜は、その能力を示す絶好の機会だった。 彼が本当にスターなのか、NBAですぐ活躍できるのか? レブロンは地元ではいつものように報道されていた。 そして高校バスケマニアにはすでに有名であったが、全国レベルでの お披露目は初であった。 知らない人が見れば、バスケットボールの試合が目当てでなく、 テレビ放送の有名人達がいるからだと勘違いするかもしれない ぐらい異様な光景だった。 ☆ビリー・パッカー(CBSアナウンサー) 「テレビはビジネスである」 「もし彼がそのレベルになければ、放送をしないだろう」 パッカーは多くの高校生スター選手と会っていたが、失敗も 多く見てきた。 基本的には高校生選手は大学にいくべきだと思っている。 レブロンについてこう語る。 ☆パッカー 「彼のことを最高の高校生選手というまえに、彼に州のチャンピオン になってほしいもんだね」 パッカーはいい点をついている。 しかしそれは間違いかもしれない レブロンはすでに2回州のチャンピオンを獲得している。 しかし、それがレブロンの価値を変えるようなものではない。 もうすでに彼は素晴らしい輝きと成熟を示していた。 ただレブロンにとって、この試合は周りに自分の価値を示すこと ではなかった。 すでに観客の多くは彼の素晴らしさを知っている。 とはいえ、テレビに自分をアピールするためでもない。 彼は以前にライバル校に負けた2敗のリベンジが一番の目標だった。 オークヒルアカデミー。 このチームは大学バスケ界に多くの選手を輩出する有数校である。 レブロンが2年のとき、オークヒルと体験して、圧倒されてた。 オークヒルには1年学年が上のカーメロ・アンソニーがいた。 カーメロと熾烈な得点争いをし、レブロン36点、カーメロ34点 で得点では上回ったが、結果はオークヒルの勝利であった。 そして3年になった今、今回の試合がレブロンにとって、ライバル を倒す最後のチャンスであった。 ☆レブロン 「ずっと待っていた」 「ここでやり返すつもりさ」 試合前のウォームアップの段階で、彼はちょっとしたショーを 示した。 まるで靴にバネがついているかのように大きく跳び跳ねて見せた。 しかし試合が始まると、彼も緊張があり、プレーは上手くいかな かった。 だんだんとリラックスしてくると、シュートが決まりだし、 31点13R6A。 結果はランキング1位校に対して、20点差をつけての大勝だった。 1人の有名アナウンサー、ディック・ヴィタルは「彼は正真正銘 の本物である」とカメラに向かって宣言した。 しかし、ヴィタルも他の人間もまだ彼の本当の真実を見た訳では ない。 今回彼の能力がすべて出された訳ではない。 ただこの若い奇才の成功の後ろには彼の周りの力もあった。 もし彼らがいなければ、ジェイムスはここまでこなかっただろう。 ファブファイブと呼ばれる仲間(ウィリー・マッギー、ロメオ・ トラヴィス、シアン・コットン・・・)とともに成長してきたのだ。 オンコート、オフコートでともに学び、そしてサポートしてきた。 ☆ジェイムス 「彼らは兄弟みたいなもんさ」 コーチのドルー・ジョイス3世も4年で3回ジェイムスを優勝に 導き、コーチとしてだけでなく、家族のように彼を扱った。 学校の方針も、人生が一番、学業が2番、そしてスポーツが来ると いった指導方針で、彼の人間としての評価の高さを高めた。 そして家族。 母親のグロリア、そしてレブロンが父と呼ぶエディー・ジャクソン もまたそうである。 エディーは何度か麻薬の密売で捕まるが、グロリアを愛し、そして 彼女の息子のために、そういった仕事をやめた。 決して成功しなかったが、レブロンは彼の努力を敬愛していた。 グロリアは高校で未婚の母となるが、決して悪い道には進まなか った。 友達や隣人の家を転々としていたが、常に子供のために頑張った。 レブロンが大きくなると、冗談で「グロリアとは兄弟みたいな もんさ」というぐらい、母親のことを好いている。 試合後、彼はメディアのインタビューにリラックスして答えた。 彼にはその周りには彼の家族達が取り囲んでいた。