The End Of EVANGELION After
灼眼の魔王
 
第一章・使徒再来・後編
 

 
 
 
強羅絶対防衛線
 
量産機に対してN2が使用されてから一時間が経過していた。その間にNERVは所有している零号機R、弐号機R、参号機Rの三機のEVA全てを、ここ強羅絶対防衛線に配置し目標に対する迎撃の準備を整えていた。
三機のEVAはパイロットが乗り込んだ状態で片膝をついて待機している。
そして、エントリープラグではそのパイロット三人が発令所と通信をつなぎ最後の確認を行っている。
 
 
『アスカ、レイ、鈴原君、聞こえる?あと数分で目標が再侵攻を開始するわ。あなた達には強羅絶対防衛線の外側で目標を迎撃してもらうわ、いいわね』
 
 
「「「了解!」」」
 
 
発令所からのミサトの通信に返事を返す三人。続いてリツコが、
 
 
『目標の攻撃手段は左手からの光線と右手の大剣よ。光線の方はMAGIでも解析不能、大剣の方は恐らくロンギヌスの槍のコピー、これはATフィールドを無効化するから気よ付けて』
 
 
「わかったわ、それで目標の防御手段は何なの?」
 
 
リツコの説明に返事を返し今度は質問を返すアスカ。
 
 
『それが…恐らくは何らかの防御手段を待っているのだろうけど詳細は不明よ。ただ、ATフィールド以外のものである可能性が高いわ』
 
 
「……つまり、攻撃してみないとわからんちゅうことですか?」
 
 
リツコの言葉に問い返すトウジ。それに対して「そうね」とだけ答えるリツコ。そして、
 
 
『それで、フォーメーションだけど、前衛を弐号機と参号機、弐号機にはソニックグレイブ、参号機はスマシュホークを装備。後衛はポジトロンライフルを持った零号機が担当。弐号機と参号機が目標に接近、念のためATフィールドを展開、零号機がその間に援護射撃を銜えその後に弐号機と参号機による近接戦闘で目標を撃破。いいわね?』
 
 
「「「了解!」」」
 
 
ミサトの説明に納得し返事を返す三人。その時、サブウインドが開きシゲルが、
 
 
『……目標、自己修復を完了。再侵攻を開始しました。三分後に強羅絶対防衛線に到達します』
 
『三人とも聞こえたわね。作戦通り、オフェンスに弐号機と参号機、バックアップに零号機、直ぐに配置についてちょうだい』
 
 
「「「了解!」」」
 
 
その報告を聞き直ぐに三人に指示を出すミサト。その言葉に返事を返し迎撃のフォーメーションを取る三機のEVA。
 
 
 
三分後、自己修復を終えた量産機と三機のEVAが強羅絶対防衛線にて対峙した。
 
 
 
 
 
強羅絶対防衛線を望む高台
 
大学を後にしたシン達三人は、車を木の陰に止めると防衛線を一望出来る場所まで行き、そこで対峙する四機のEVA の様子を眺めていた。
 
 
「……どう言う事だ、なぜメタトロンは本来の姿を取らないんだ?」
 
 
呟くようにシンは疑問を口にする。するとそれを聞いたエルが、
 
 
「解りません。本来の姿にならないのか、それともなれないのか………」
 
 
「でも、あのうつわはよりしろとしてはじゅうぶんなの」
 
 
エルの言葉を否定するルイエ。それを聞いたシンは、
 
 
「……ならば、あえて本来の姿を取らないって事か…………まあ良い、どちらにしろ来たなら屠るだけだ」
 
 
冷静に結論付けるシン。
 
 
「マスター、これからどう動きますか?」
 
 
「そうだな………今回はアレは使わなくて良いだろう。メタトロン……ヤツが全力を出さないんならこちらが出してやる義理は無い。それに切り札はなるべく温存しておく方が良い」
 
 
エルの問いに答えるシン。それを聞いた後、
 
 
「「わかりました、それでは………」」
 
 
エルとルイエ、二人が声をそろえて言った直後、二人はそれぞれ、黒と蒼の輝きに包まれ………そして、光が収まるとそこには、シンと初めて逢ったときの服装に身を包んだ二人が立っていた。
 
シンは二人が本来の服装に戻ったのを見ると、
 
 
「ルイエ…」
 
 
静かにルイエの名を告げ、手を差し出す。ルイエが差し出されたシンの手を取る。
その瞬間、シンとルイエの二人は蒼の輝きに包まれる。その輝きも一瞬のうちに収まり、収まった後のそこには長い黒髪を銀色に変え、身体にフィットした蒼いボディスーツを着たシンと、そのシンの肩に身体を縮ませデフォルメ化したルイエの姿があった。
 
マギウススタイル、魔術師が魔導書の本来の力を引き出す為に一体化した姿である。
 
 
「………シン、これからどうしますか?NERVの道化芝居をここから観戦しますか?」
 
 
マギウススタイルとなったシンに問いかけるエル。シンは少しの間考え、
 
 
「……いいや、どうせなら近くで見物させてもらおう」
 
 
「わかりました。では………」
 
 
シンの答えを聞きエルは短く答える。そしてシンに寄り添うように近づき、片手に剣指を作ると中空に五紡星を描く。すると五紡星から光があふれ出しシンとエル、そしてシンの肩に乗っているルイエを包み込み、次の瞬間、僅かな光の残滓を残し三人の姿は高台から消え去ったのだった。
 
 
 
 
 
NERV 第一発令所
 
強羅絶対防衛線にて、NERVの三機のEVAと量産機が対峙してから十五分の時間が流れていた。
 
 
『きゃぁぁぁぁぁ!!』
 
 
ガシャァン!
 
 
通信からアスカの悲鳴が発令所に木霊し、モニターに映る弐号機は防衛ラインにある兵装ビルに突っ込んだ。
 
 
「アスカ!」
 
 
「弐号機、第四十七兵装ビルに激突」
 
 
「EVA弐号機、大きな損傷はありません」
 
 
「弐号機パイロット気絶!バイタル、その他に異常ありませんが、意識がありません!」
 
 
ミサトの悲鳴に近い声の後、オペレータの報告が入る。そしてリツコが、
 
 
「拙いわね、零号機、参号機は大破、弐号機はパイロットが気絶、どうするのミサト?」
 
 
「……………」
 
 
その問いに無言で量産機の映るモニターをにらみつけるミサト。
 
戦闘開始から十五分、僅かそれだけの時間で三機のEVAのうち二機が大破、一機が戦闘不能に陥っていた。
 
詳細はこうである。
 
量産機と対峙したEVA三機は当初の作戦通り弐号機と参号機が先行しATフィールドを展開、その直後に零号機がポジトロンライフルを発砲、放たれた陽電子は真っ直ぐに量産機に向かう。誰もが直撃を確信した次の瞬間、量産機の前に白く輝く壁が展開され陽電子は壁によって簡単に弾かれる。その様子を見て誰もが唖然とするなか、展開されていた壁が消え、次の瞬間返礼とばかりに量産機の左手から光線が放たれる。その光は零号機の放った陽電子の軌道をなぞるように零号機へと向かい直撃。これにより零号機は胸部装甲を大破、パイロットは気絶することとなる。
 
弐号機と参号機は零号機が大破したのを見て我に返り量産機に接近戦を仕掛ける。スマッシュホークとソニックグレイブによる波状攻撃により徐々に量産機を後退させていく弐号機と参号機。遂にバランスを崩す量産機、好機とばかりに大降りの一撃でとどめを刺そうとする弐号機と参号機。弐号機は上段からの唐竹割を、参号機は中段からの横凪の一撃を放つ。誰もが勝利を確信した次の瞬間、量産機は体制を立て直し右手の大剣を袈裟切りに振るい弐号機のソニックグレイブを切断、返す刀で参号機の両腕を切り飛ばしたのである。両腕を切断されバランスを崩し地面に倒れ伏す参号機。参号機パイロットの悲鳴が発令所に木霊しリツコはすぐさまシンクロカットの指示を出した。
 
一気に攻勢に出でる量産機。残った弐号機は切断されたソニックグレイブを捨てウエポンラックからプログナイフを取り出し応戦する。しかしプログナイフと大剣では獲物の差がありすぎ、弐号機は防戦一方となる。そして遂にプログナイフが量産機の大剣の一撃により砕け、勢いを殺せずに弐号機は吹き飛ばされ、兵装ビルに叩き付けられるのだった。
 
そして冒頭に戻り、
 
量産機は兵装ビルに突っ込んで動かなくなった弐号機を一瞥すると背中の翼を広げる。その様子をモニター越しに見ていたミサトはリツコの方を向き、
 
 
「……拙い!リツコ、弐号機のアスカを起こせない?」
 
 
「…………出来ないことは無いわ。「先輩!!」どうしたのマヤ?」
 
 
ミサトの問いにモニターから目を外していたリツコにマヤの叫び声が掛かる。その様子にモニターに目を戻す。そこには、何か巨大な力で上から押さえ付けられている量産機の姿が映っていた。リツコは、
 
 
「何が起こったのマヤ!?」
 
 
「はい、目標が飛び立とうとしたと時、突然背中の翼が切り裂かれたようにバラバラになり、そしてその直後、目標を中心とした半径十五メートルの範囲に強力な重力波を感知、現在その重力波によって目標が拘束されています」
 
 
観測された結果を報告するマヤ。それを聞いたリツコは暫しの間顎に右手を当てて考える。そして、
 
 
「………そう、ミサト、重力波のおかげで少しなら時間が稼げるわ」
 
 
「!!解ったわ、直ぐにアスカの意識を「目標の前方二十メートル、地上四十メートルに生体反応、波形パターン黒MAGIは判断を保留しています!!」 なんですって!!!
 
 
シゲルの報告に絶叫をあげるミサト。リツコは冷静に指示を出す。
 
 
「マヤ!映像をモニターに出して!」
 
 
マヤは「はい!!」と言う返事と共にコンソロールを操作する。するとモニターには、空中に立つ二人の人物が映し出された。長い銀髪を風にたなびかせ、蒼いボディスーツに身を包み両手に金と蒼の片刃の短剣持った青年『九重シン』と、その青年に寄り添うように佇む、黒いゴシックドレスに身を包んだ少女『エセルドレーダ』、その二人の姿が第一発令所のモニターに映し出された。
 
 
「…………人が宙に浮いてる…………」
 
 
発令所の誰かが呟く。唖然とした表情でモニターをみつめる発令所の面々。すると、リツコが、
 
 
「……なるほど、量産機を止めたのはあの人物達ね……」
 
 
「…………えっ!?」
 
 
ミサトが短く声を上げる。リツコは続けて、
 
 
「理由は簡単よ。まず、あの人物の持っている短剣に付着した赤い液体。それに彼等が浮いてるのは恐らく重力をコントロールをしているから。なぜなら彼等からは使徒のようなATフィールドもヘリや飛行機の内燃機関のような物も使っていない。それに重力を操れるなら量産機周辺の重力波も説明が付くわ」
 
 
理路整然としたリツコの予測を聞きモニターに目を戻すミサト。発令所の人々はモニターを唖然と見つめることしか出来なかった。
 
 
 
 
 
強羅絶対防衛線
 
兵装ビルに突っ込んだままの弐号機を背後に見ながら、シンとエル、それにシンの肩のルイエは姿を現し目の前にいるEVA量産機と対峙していた。シンは冷ややかな目を量産機に向けながら、
 
 
「…………さて、EVA相手の道化芝居は終わりだ。なあ、第一のセフィラー、王冠、ケテルに座する大天使メタトロン」
 
 
まるで人間を相手にするように話しかけるシン。すると、
 
 
《ナゼ、ニンゲンフゼイガワレノナヲシッテイル》
 
 
片言の日本語が響き渡る。シンはその声に気にする事も無くメタトロンに問いかける。
 
 
「そんなことはどうでも良いだろう。それより大天使メタトロンともあろう者が何故そんな醜悪な姿のままで居るんだ?何故本来の姿を取らない?!」
 
 
《フン、ナニヲトウカトオモエバソンナコトカ……カンタンナコトヨ、ニンゲンフゼイヲアイテニスルノニホンライノスガタヲトルヒツヨウハナカロウ……コノスガタトテシュウアクデキニイラヌガ、ヒトノツクリダシタオモチャヲアイテニスルノニ、ワレノホンライノスガタヲトルヒツヨウハアルマイ》
 
 
メタトロンの答えに納得するように頷くシン。そして、
 
 
「なるほどね、なら警告だ。無様な死に方をしたくなければ本来の姿を取れ!俺はNERVの道化達とは違う…」
 
 
シンは挑発するようにメタトロンに告げる。すると、
 
 
《タシカニ、ワレノツバサヲタチキッタノハミゴトダガ…………コノテイドノジュウリョクハデ、ワレヲフウジタトオモッタラ……ハァァァァァァァ!!!!!
 
 
メタトロンが言葉を切り叫び声を上げる。するとメタトロンを縛っていた重力の楔が砕け散る。そして、
 
 
《………ニンゲンニシテハヨクヤッタトイッテオコウ……》
 
 
という言葉と共に瞬く間にシン達との間合いを詰め、そして右手に持った大剣を振り下ろす。シンはそんなメタトロンの様子を黙って見ている。と、シンの横に佇んでいたエセルドレーダが静かに右手の掌を下に向けたまま前に差し出す。
 
 
ガキィィィィィン!!!
 
 
振り下ろされたメタトロンの持つ大剣。その軌道は確実にシン達を捕らえたと思われた。しかし、その切っ先はシン達の前、エルの掲げた右手の下方中空から現れた、赤い装甲に覆われた巨大な腕に遮られ、そして、
 
 
「………そのような無粋なモノで私達の愛するマスターを傷つけさせはしません」
 
 
驚愕の雰囲気を浮かべるメタトロンを見つめながら、冷たい口調で告げるエル。大剣を受け止めたまま巨大な腕は横に振られ、メタトロンは大剣ごと十メートルあまり後方に弾かれる。そして音もなく巨大な腕は消え去り、シンは再度メタトロンに問いかける。
 
 
「………最後通告だ。メタトロン、本来の姿を取れ!」
 
 
《コトワル!》
 
 
驚愕を脱したメタトロンは憮然と答える。シンは軽く肩をすくめ、両手に持った短剣を消す。そして、
 
 
「ならば仕方がない…………その醜悪な姿のまま………」
 
 
シンは呟くように静かに告げると、タンッ!!という音と共に空間を蹴ると、先ほどのメタトロンの踏み込みを凌駕する速度で、一瞬のうちにメタトロンの顎先まで跳ぶ。
 
 
「…………逝け!!」
 
 
そして、その身体を深く沈み込ませると下から突き上げるような一撃、アッパーカットを放つ。シンの放った一撃によりメタトロンは上空百数十メートルまで吹き飛ばされる。
その様子を見ることなく、シンは再度タンッ!!と空間を蹴りエルの元に戻るとエルに目配せをする。エルはそれを受け静かに目を閉じる。
するとエルとシンの周辺に数十個のバスケットボール大の漆黒の球体が生まれる。エルは目を開きシンに目配せすると、上空のメタトロンを見据える。
すると二人の周囲に浮かんでいた無数の球体は一斉にメタトロン目がけて放たれた。
 
 
 
 
 
シンの一撃により上空に飛ばされたメタトロン。そのあまりの出来事に驚愕をするもそれも一瞬で、直ぐに平静を取り戻すと背にある翼を広げ体勢を立て直そうとする。と、
 
 
ドォン!!
 
 
メタトロンの左上腕で小さな爆発と衝撃が起きる。一瞬、立て直し掛けた体勢が崩れるがそれに気にすることなくそのまま体勢を立て直そうとする。と、
 
 
ドォン!!ドォン!!ドォン!!
 
 
今度は三回、右腕に二回、右足に一回衝撃が走る。今度は先ほどより衝撃が大きく、メタトロンは周囲を確認する。するとそこにはメタトロンを取り囲むように数十個もの漆黒の球体が浮かんでいた。
 
 
《………ナ二ッ!!》
 
 
驚愕の声を上げるメタトロン。その声に反応したのか、周囲の球体が一斉にメタトロンに殺到する。
 
 
《グオォォォォォ!!》
 
 
叫び声を上げると同時にメタトロンは自身の周囲に白く輝く障壁を展開する。防御に成功したことを確信して口元に笑みを浮かべるメタトロン。しかし次の瞬間その笑みは驚愕に変わる。障壁に触れそのままかき消えると思っていた球体はそのまま障壁をすり抜けたのだ。なすすべ無く次々と被弾するメタトロン。
 
 
《グハァァァァァァァァァァァァァ!!》
 
 
次々に飛来する球体を全身に受け、その衝撃で無様なダンスを空中で披露するメタトロン。
 
 
 
 
 
空中で踊り続けるメタトロンを冷たい目で見つめていたシンは、
 
 
「…ルイエ」
 
 
静かに肩で佇むルイエに声を掛ける。ルイエはシンに小さく頷き、
 
 
ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるう るるいえ うがふなぐる ふたぐん
 
 
ルイエの口から不可思議な呪文が紡がれると同時に、シンの両手に蒼い輝きが集まる。
瞬く間にその輝きはシンの手が見えなくなるほどに強くなり、シンはそれを見て小さく頷くと、その両手を野球のサイドスローのようにメタトロンに向かって振るう。
するとシンの両手、そこに浮かんだ光からそれぞれ五本づつ、十本の蒼く輝く糸が上空にいるメタトロンに向けて放たれた。
シンの手から伸びた糸は空中を蛇のように這い、瞬く間にメタトロンのいる高度まで達する。そして蛇が鎌首を持ち上げるように停滞すると、次の瞬間、衝撃に踊り続けるメタトロンの全身を締め上げるように雁字搦めに絡みついた。
シンは両手の手首を軽く引き手応えを確認すると、
 
 
「勝負ありだメタトロン!その身体、魂に至るまで極彩と散るがいい!!」
 
 
くるうるうのようし……ざん!!」
 
 
歌うように告げるシンの声、それに合いの手を入れるルイエ。そしてシンは両手を大きく手前に引く。その動きに合わせて勢い良く蒼く輝く糸が巻き上げられメタトロンの身体を締め上げる。そして………、
 
 
バシャ!!
 
 
何かが水に落ちたような重い音が辺りに響き、上空から先ほどまでメタトロンだった大量の血と肉片が降り注いだ。
上空から地面に降り注ぐ、かつての量産機=メタトロンの血肉を冷めた目でみつめるシン。
そして、
 
 
「終わりだ………エル、ルイエ引き上げるぞ……」
 
 
「「はい、シン(しん)」」
 
 
シンの言葉に二人は返事を返し、エルは空中に指を滑らせ複雑な文様を描く。そして、描かれた文様から光があふれ、僅かな燐光を残し三人の姿はかき消えたのだった。
 
 
 
 
 
NERV 第一発令所
 
「………パターン青、消滅……………使徒の殲滅を確認………」
 
 
シゲルの声が発令所に響き使徒の殲滅が確認、報告される中、発令所の面々は呆然とした様子で、血肉の雨が降るのが映るモニターを眺めていた。
NERVにとっては悪夢でしかなかった。NERVの誇るEVAが容易くやられた相手を生身の人間?二人が簡単に倒してのけたのだから。
 
 
「………なんなのよ………………なんなのよあれは!!
 
 
映像を見つめていたミサトは訳もわからず激昂する。その声により我に返った発令所のメンバーは直ぐさま自身のやるべき仕事をこなし始めた。そして、そんな発令所の喧噪を冷ややかに見つめていたリツコはマヤに、
 
 
「マヤ、今の戦闘で採取出来たデータを直ぐに私の執務室の端末に転送しておいて」
 
 
「わかり「リツコ!!」た」
 
 
マヤの返事にかぶせるようにミサトは大声でリツコを呼ぶ。リツコは内心うんざりしながらミサトに対して、
 
 
「まだ、解析もしていないうちから結論は出せないわ。それより貴女もまだ自分の仕事が残ってるんじゃあないの」
 
 
冷ややかなリツコの声を受け俯き爪を噛むミサト。その様子を半ば呆れたように見ながら、
 
 
「………まだ戦闘態勢も解除してないし、それに大破したEVAを何時までも野ざらしにしておくつもり?」
 
 
リツコの言葉にようやくやるべき事を思い出すミサト。そして直ぐさまオペレーター達に指示を出し始める。リツコはその様子を見つめながら自身もマヤと共に事後処理に付くのであった。
 
 
 
 
 
第一発令所 司令塔
 
「「「……………………………………」」」
 
 
発令所と同じくここ司令塔の三人もまた、驚愕に目を見開き呆然としていた。
暫くの沈黙の後、発令所に喧噪が戻った頃コウゾウが口を開く。
 
 
「…………何なのだアレは………」
 
 
「「……………」」
 
 
ゲンドウ、ユイはその呟きに答えることはなくモニターを見ていた。と、暫くすると発令所にEVA各機の収容が報告され、それを聞くとユイは白衣の裾を翻すと司令塔を後にした。そして、
 
 
「………碇、どうするのだ?このことが国連に知られると問題だぞ」
 
 
「…………問題ない。国連には改竄した報告を渡せばいい……」
 
 
平然と言い放つゲンドウ。その視線はサングラスに隠れ見ることは出来ないが、先ほどまでシン達が映っていたモニターに注がれている。その返事を聞きコウゾウは、
 
 
「………確かに国連の方はそれで良いと思うが、あの人物達はどうする?」
 
 
「………保安諜報部に言って身元を洗わせろ」
 
 
「どうするつもりだ?」
 
 
平然と答えるゲンドウに聞き返すコウゾウ。それに対し、コウゾウの方をゆっくりと振り返ると、
 
 
「………………交渉する」
 
 
返事を聞き直ぐに内線で保安諜報部に連絡を入れる。その様子を見ながらゲンドウはまたモニターを向き直り先ほどまでシン達の映っていたモニターを凝視するのだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
第二芦ノ湖畔
 
夕刻、特別非常警戒態勢が解除され避難命令が解かれた後、シン、エル、ルイエの三人は第二芦ノ湖まで来ていた。シン達は夕暮れに染まる湖畔をゆっくりと歩き、そして先日リョウジと会った場所まで来ると足を止め昨日と同じ石に腰を掛けた。エルとルイエもまたシンと同じく手近な石に腰を掛ける。
 
 
「…………まだ来てないみたいだな………」
 
 
シンはそう呟くと手に持った楽器ケースからチェロを取り出しエル達の方を向き、
 
 
「二人とも、リクエストはあるかい?」
 
 
シンの問いかけにエルとルイエは少しの間考えると、
 
 
「「シンにお任せします(おまかせします)」」
 
 
「そうか……………なら無伴奏チェロ組曲で良いかな?」
 
 
シンの返事に頷く二人。それを確認するとシンは弓を構え目を閉じるとゆっくりと演奏を始めた。
 
 
♪〜♪〜♪〜
 
 
と、チェロの音がゆっくりと風に乗り湖畔を滑っていく。エルとルイエは目を閉じその音色に耳を傾けている。
 
 
〜♪〜♪〜♪〜
   ・
   ・
   ・
   ・
   ・
 
 
 
 
 
〜♪〜♪〜♪
 
十五分ほどの時間が流れ、シンはゆっくりと弦から弓を離し演奏を終える。すると、
 
 
パチパチパチパチパチ…………
 
 
三人の背後から複数の拍手が響く。エルとルイエはその様子に慌てて警戒態勢を取るが、シンは二人を手で止めると楽器ケースにチェロをしまいゆっくりと振り向きながら背後にいる人物達に声を掛ける。
 
 
「拍手、ありがとうございます加持さん。それと五年ぶりになりますね。お久しぶりです、リツコさん、マヤさん」
 
 
と、拍手をした三人、リョウジとリツコ、そしてマヤに軽く会釈をするのだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
第一章・使徒再来・後編 了
 
 
解説
ここでは作中に出てきた物の解説をおこないます。
 
EVAタイプR
サードインパクトの際に大破した弐号機、依り代となったことを理由に永久封印された初号機に変わりNERV本部の碇ユイ、惣流・キョウコ・ツェッペリンにより大破した弐号機の素体を培養して作られたEVA。アダムの劣化コピーのコピーであるため本来の弐号機の十分の一程度の性能しかない。最もATフィールドが使用出来るため兵器としては高性能の部類に入る。またコアには人の魂ではなくダミープラグの応用でデジタル化した魂のコピーが使われている。
 
 
大天使メタトロン
セフィロトの樹の頂上、第一のセフィラーに座する大天使。今回使徒として現れた量産機に宿っていた存在。天使達の王と呼ばれており司るのは純白の光。
何故量産機に宿ったのか、また何故第三新東京市に来たのかは今のところ不明。
 
 
蒼と銀の短剣
シンがメタトロンの翼を切り裂いた雌雄の短剣。蒼い方が[タゴン]、銀の方が[ヒュドラ]の銘を持つ。ルルイエ異本によって呼び出される水妖の王と王妃の名を持つ短剣
 
 
クルウルウの妖糸
ルルイエ異本に載っている旧支配者の一柱、クトゥルー(クルウルウ:クトゥルーの別の読み方指し示す神は同じ)の名を持つ糸。蒼い輝きを放ち術者の両手より蛇のように伸びる魔力の糸。切れ味、長さ、糸の強度を術者自身で調節出来る。

BACK HOME NEXT

楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] ECナビでポインと Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!


無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 解約手数料0円【あしたでんき】 海外旅行保険が無料! 海外ホテル