The End Of EVANGELION After
 灼眼の魔王
 
第三章・紅き鬼械神・中編
 

 
 
 
 
NERV本部・第一発令所
 
リベル・レギスがその姿を現す少し前、モニターに映った大天使の姿とそこから発せられる神氣に固まったままの第一発令所。ミサト、キョウコを始め、各オペレーター達もモニターを凝視したまま固まっているそんな中、一人のオペレーターが自分の目の前の端末に表示されたデータを見て悲鳴に近い声で報告を上げる。
 
 
………目標の至近、距離百に高エネルギー反応!全てのゲージが振り切れて測定が出来ません!!
 
 
「…!何ですって!!直ぐにモニターに表示しなさい!」
 
 
オペレーターも言葉に、正気に返り直ぐに指示を出すキョウコ。その言葉に他のオペレーターも正気に戻り、直ぐさま端末を操作する。そしてメインモニターが分割されその一方に映像が映し出される。
 
そこには、黒い十メートルほどの球体が映し出され、その球体は発令所の面々が見守る前で砕け散る。そして球体の砕け散った空間からゆっくりとした動きで巨大な機械の人型が姿を現した。
 
 
「………何なのアレは?」
 
 
「……波形パターン黒!MAGIは判断を保留しています!!」
 
 
「葛城さん!?!」
 
 
呆然としながら疑問を口にするキョウコ。シゲルはMAGIの解析結果を報告し、そしてマコトはミサトに判断を仰ぐ。
 
 
「チルドレンは?」
 
 
「まだ本部に到着していません!」
 
 
「そう………チルドレンは到着次第EVAに搭乗、それまでは現状維持、良いわね?」
 
 
「「「「了解!!」」」」
 
 
爪を噛み、モニターに映るリベル・レギスを睨み据えながら指示を出すミサト。オペレーター達は戸惑いながらもミサトの指示を実行するのだった。
 
 
 
 
 
芦ノ湖湖上・リベル・レギスコクピット内
 
その巨体を芦ノ湖湖上に顕したリベル・レギス。そのコクピット内、シンはマギウススタイルのまま、両肩にルイエとマリアを乗せた状態で球状のモーショントレーサーの中に立ちゆっくりと目を開く。そのシンの目の前には、コンソールの上の球体に両手を当てたエルの背中がある。するとシンが目を開いたのに気が付いたのかエルが球体に両手を当て、正面を向いたまま、
 
 
「……リベル・レギス、顕現完了、システムオールグリーン。マスター!」
 
 
「……判った。じゃあ征くか!」
 
 
エルからの報告を聞き両手を強く握り締めるとシンは、ゆっくりとリベル・レギスをラツィエルに向けて進ませるのだった。
 
 
 
 
 
芦ノ湖湖上
 
出現したリベル・レギスはゆっくりとラツィエルの正面約二十メートルまで向かい、停止する。それを見たラツィエルは組んでいた両手を降ろし、そして、
 
 
『…貴公ガ我ガ同胞、メタトロンヲ消滅サセタモノカ?』
 
 
声ではない念が強烈な威圧感を纏ってリベル・レギスに向かって放たれる。それを聞きリベル・レギスの中のシンもまた、ラツィエルの放つ威圧に対抗するようにプレッシャーを放ちながら、
 
 
『……そうだ、俺は九重シン。この機体は我が鬼械神リベル・レギスだ……コクマーの大天使ラツィエルだな?』
 
 
『ソノ通リダ、人間ヨ…………我ガ同胞メタトロンノ無念、コノラツィエルガ貴公ヲ討ツ事デハラサセテモラウ!』
 
 
言葉と共に、虹色に輝く刀身を持った一振りの大剣をその手に出現させるラツィエル。シンはその様子を見るとリベル・レギスの両手を手刀に変え、その両手に漆黒の魔力を宿す。そして、
 
 
『……メタトロンの敵討ちか?だがヤツは勝手にこちらを侮ったせいで無様な死に方をしただけだぜ?いわば自業自得だろう?』
 
 
『…確カニソウカモシレン。相手ヲ侮ルナド武人トシテハ愚ノ骨頂ダ………ダガ同胞ノ敵ハ討タネバナラン!』
 
 
憮然としながらもしっかりとした口調で告げるラツィエルに、シンは苦笑を浮かべ、やれやれと言った感じで、
 
 
『……仕方がない、相手をしようじゃないか……俺を失望させてくれるなよ、大天使ラツィエル!!』
 
 
『………征クゾ、九重シン!我等大天使ノ真ノ力、思イ知ルガ良イ!!』
 
 
言葉と共に背の翼をはためかせリベル・レキスに向かい突進するラツィエル。シンはそれを迎え撃つようにリベル・レギスの左手を腰に、右手を胸の前に挙げ、半身に構える。
 
 
ゴォゥ!!
 
 
凄まじい風を周囲に巻き起こしながら、真っ直ぐリベル・レギスに突進したラツィエルは、大きく剣を振りかぶると一気に唐竹に振り下ろす。
 
その一撃を後ろに下がる事でかわすリベル・レギス。と、次の瞬間、
 
 
ドォバァァァァンンンン!!!
 
 
凄まじい勢いで芦ノ湖の水面に叩き付けられた大剣により、水が壁のように跳ね上がり、両者の視界を隠す。
 
一瞬ラツィエルの姿が覆い隠され動きの止まるリベル・レギス。と、水壁を切り裂きながら大剣が斜め上に向かって振られる。
 
その一撃も下がる事でかわすリベル・レギス。そして次の瞬間、水壁の向こうのラツィエル目掛けて踏み込み左手の手刀を突き出す。
 
 
ギィィン!!
 
 
金属同士の噛み合う音が辺りに響き、ゆっくりと水が湖面に落ちる中、リベル・レギスの手刀を大剣の腹で受け止めたラツィエルが姿を現す。
 
一瞬、両者の動きが固まる。が、次の瞬間、ラツィエルが受け止めていた手刀を外側に弾くと同時に下からの切り上げを放つ。
 
 
ギィィ!!
 
 
リベル・レギスはその刃を右手に魔力を集め掌で受け止める。しかし、その勢いまでは止める事が出来ず僅かに浮かび上がるリベル・レギス。と、次の瞬間、
 
 
ドォン!!
 
 
リベル・レギスの掌で爆発が起きる。掌に集まっていた魔力が爆発を起こしたのである。そして、その爆風に乗り後ろに下がるリベル・レギス。
 
ラツィエルはその爆発に怯むことなく再び踏み込むと、今度は横殴りに大剣を振るう。
 
リベル・レギスはその薙ぎ払うような一撃を、機体を腰の少し上まで芦ノ湖に沈める事でやり過ごす。そしてラツィエルのがら空きの胴目掛けて、左の拳を繰り出す。
 
 
ドゴォオ!!
 
 
剣を振りきった直後の反撃に、振りきった剣を戻す間も無くまともに直撃を受けるラツィエル。リベル・レギスはそのまま留まることなく、ラツィエルの胸にある左の拳をそのまま、剣を握った両腕目掛けて跳ね上げる。
 
 
ドゴォオ!!
 
 
両腕を万歳をするように跳ね上げられるラツィエル。リベル・レギスは止まる事無くさらに、今度は右手に掌底を作るとそのまま半分沈んだ機体を、水中から持ち上げる勢いを利用しラツィエルの顎先を跳ね上げる。
 
 
ドォォン!!
 
 
流れるような三連撃にのけぞり無防備な体を曝すラツィエル。
 
リベル・レギスは戻した左腕を腰に戻し、一瞬溜を作る。するとそれまで漆黒の魔力で包まれていた左手が白い輝きを宿す。
 
そして左手の手刀をラツィエルの胸の中央目掛けて繰り出そうとした、その時、
 
無防備を曝していたラツィエル。その跳ね上げらた顔が元に戻りリベル・レギスを睨みつける。そして跳ね上げていた両腕に握られている大剣が斜めに振り下ろされる。
 
リベル・レギスは手刀を繰り出そうとしていた左腕でその一撃を受け止める。
 
 
ギィィィィイィンンン!!!!!
 
 
一際大きな金属音が辺りに響く。そしてラツィエルはリベル・レギスの左腕と噛み合った大剣を大きく横に振る。
 
その勢いに押され大きくはじき飛ばされるリベル・レギス。
 
ラツィエルはそのまま湖面に着地すると、受けた三連撃のダメージを癒すためか、動きを止め大剣を構えたままリベル・レギスを睨み据える。
 
リベル・レギスも又、飛ばされた先で湖面に緩やかに着地すると構えをとったままラツィエルを睨み据える。
 
そして、両者は緊迫した雰囲気を漂わせたまま硬直状態に陥るのだった。
 
 
 
 
 
リベル・レギスコクピット内
 
 
「「「マスター(ますたー)!!!」」」
 
 
強烈な反撃に慌てたようにシンに声を掛ける、エル、ルイエ、マリアの三人。
 
 
「…問題ない。少しばかり手が痺れただけさ……しかし、流石大天使、やってくれる!」
 
 
シンは三人の言葉に応えながら嬉しそうにそう呟くと、フィードバックにより僅かに痺れた左腕を強く握る。そして、
 
 
「エル!左腕の様子は?」
 
 
「現在修復中です。後、五秒ほどお待ち下さい、マスター」
 
 
「判った………しかし、素手だと少し分が悪いか…………ルイエ!!」
 
 
「…!はい!ますたー!!」
 
 
シンの言葉に返事を返すルイエ。するとシンの右手に何かを握るような手応えが生まれる。それと同時にリベル・レギスの右腕にも蒼と金の刃を持った両刃の短剣が握られる。シンはその短剣を逆手に持ち直させると、
 
 
「……さて、今度はこっちの番だな………エル!?」
 
 
「……左腕の修復完了しました。いつでも征けます、マスター!」
 
 
シンはエルの言葉に満足そうに頷くと少し離れた位置にいるラツィエルを睨み据える。
 
 
 
 
 
NERV本部・第一発令所
 
モニターに映る、ラツィエルとリベル・レギスの激戦を唖然としながら見ている発令所の面々。と、
 
 
「………大したものね………使徒の方は人型だから解るけど、もう一機の方は明らかに機械、ロボットなのにEVAと同等かそれ以上の動きね、これは……」
 
 
感嘆とした様子で目の前のマヤの端末に映るデータに目を走らせるキョウコ。そんなキョウコの様子にミサトはとがめるように言葉を放つ。
 
 
「……!キョウコさん!!…………………それで、何か解ったんですか!?」
 
 
「……そうね………あのロボットの両手に纏っている黒いオーラのような物だけど、先日襲来した使徒の放った光線とエネルギー波形が酷似しているわね……最も似ているってだけで完全に同じとは言えないけど………」
 
 
ミサトの言葉に手元の端末を操作しながら答えるキョウコ。その言葉に「そうですか」とだけ答えると再びモニターに目を移すミサト。と、今度はマコトから報告が入る。
 
 
「……チルドレン、到着しました。ファーストとセカンド、エントリーを開始……………
 
…………………………………………………………………………………………………………
 
…………………………………………………………………………………………………………
 
EVA零号機、及び弐号機起動。両エントリープラグと双方回線、開きます」
 
 
言葉と同時にサブモニターにレイとアスカのバストアップが表示される。それを見たミサトは両者に視線を向けると口を開く。
 
 
「……アスカ、レイ、聞こえる?」
 
 
「「……聞こえます、葛城一佐」」
 
 
「状況を説明するわ……現在使徒は芦ノ湖上空において所属不明機と交戦中、状況は一進一退よ……」
 
 
「………所属不明機ですか?」
 
 
ミサトの言葉に疑問符を浮かべ、質問を口に出すアスカ。と、エントリープラグのモニターに芦ノ湖の映像が映し出される。それを見たレイが、
 
 
「……これが所属不明機…………葛城一佐、作戦は?」
 
 
「ええ、作戦だけど、現在交戦中の二機、その状況は一進一退です。ですので現状両者の決着が付くまで待機、その後決着が付くと同時に残った一機に対しEVA並びに兵装ビル、偽装砲台からの一斉射撃によりこれを殲滅します。良いですね?」
 
 
「………了解………所属不明機も敵と判断するんですね?」
 
 
「その通りよ、アスカ」
 
 
アスカの問いに頷き答えるミサト。と、それを聞いた発令所のオペレーター達の視線が、一斉にモニターからミサトに向けられる。そして恐る恐るマコトがミサトに声を掛ける。
 
 
「………か、葛城さん、幾らロボットの方が所属不明とはいえ、確認も警告も無しに敵として見なすのは………」
 
 
「問題ないわ……キョウコさんから聞いたでしょう?前回の使徒に近いエネルギー波形を持っているのだから、あの紅いロボットも使徒と判断します!」
 
 
「……し、しかし………」
 
 
「………これは命令です!!良いわね!!!」
 
 
「「「「「「「りょ、了解!!」」」」」」」
 
 
反論するマコトを一喝して黙らせるミサト。その声に押されるようにオペレーター達は返事を告げ、そしてそれぞれ作業に戻る。ミサトはそんな様子を見ながら満足そうに頷くとモニターに映るリベル・レギスを睨み付けるのだった。
 
 
 
 
 
芦ノ湖湖上
 
リベル・レギス、ラツィエル共に得物を構え、お互いに睨み合ったまま硬直状態に陥っている。と、その硬直状態を脱しようと、先ほどとは逆にリベル・レギスが動く。
 
 
『……術式展開……』
 
 
小さな呟きと共に、それまでリベル・レギスとラツィエルの戦闘により起こった乱気流で荒れていた湖面が静かになる。そしてその湖面に金色の魔法陣が描かれ、
 
            サ キ エ ル
……行け!!水を司る天使!!』
 
 
言霊と共に魔法陣が強く輝く。そしてそこから水で作られた無数の槍が出現し、一斉にラツィエル目掛けて放たれる。
 
『……ム!?』
 
 
飛来する槍を見て短く声を上げるラツィエル。そして構えていた剣を降ろすと、
 
 
『……陽光ノ加護ヨ、槍ト成リテ打チスエヨ!………Shine!!
 
 
言霊と共にラツィエルの周りに淡い金色の槍が出現し、飛来する水の槍を迎え撃つように放たれる。
 
 
ボッ!!
 
ボボボボボボボボボボボボボボボボボボッ!!
 
 
空中で激突する金と水色の無数の槍。お互いに打ち消し合い、小さな音を立てて消滅していく。と、次の瞬間、
 
 
ギィ!キィィィィィン!!
 
 
槍を打ち出すと同時に突進したリベル・レギスとラツィエルの両者の得物が噛み合い金属音を上げる。
 
鍔迫り合いの状態から体を離し、再び振り下ろされるラツィエルの大剣。逆手に持った短剣でその一撃を受け止めるリベル・レギス。
 
ギィィン!!
 
空いている左手を手刀に変えて繰り出すリベル・レギス。その一撃を剣から片手を離し受け流すラツィエル。
 
体の泳いだリベル・レギスに片腕一本で大剣を横薙ぎに振るい受け止めている短剣ごとリベル・レギスを振り飛ばすラツィエル。その横薙ぎに抵抗することなく、逆に勢いに乗り距離を開けるリベル・レギス。
 
飛ばされた一瞬を利用し、片手に握った二色の短剣を金と蒼の刃を持つ二振りの短剣に分け両手に持つリベル・レギス。
 
次の瞬間、少し開いた距離を瞬く間に詰め、勢い良く踏み込み突きを放ってくるラツィエル。
 
ギィィン!!
 
その一撃を右手の逆手に持った剣で受け流す。それと同時に左の順手持ちの短剣を鋭く突き出すリベル・レギス。
 
その一撃を、剣を軸に体を入れ替える事でかわすラツィエル。そしてそのまま横凪の一撃をリベル・レギスに向かって繰り出す。
 
前にダッシュしその一撃を避けたリベル・レギスはその場で機体を回転させる。ラツィエルも又体を回転させリベル・レギスに向かい合う。立ち位置を入れ替えた両者、ラツィエルは再びリベル・レギスに上段から斬りかかる。
 
リベル・レギスもそれに合わせるように両手の短剣を連続で繰り出す。
 
 
ギィィン!!
 
 
ラツィエルの打ち下ろしとリベル・レギスの左の切り上げが噛み合う。
 
 
       ギィィン!!
 
 
右の逆手に持った短剣を横薙ぎに振るうリベル・レギス。ラツィエルは重さと取り回しの悪さを無視した動きで大剣を戻しその一撃を受け止める。
 
 
             ギィィン!!
 
 
受け止めた横凪を上に打ち上げるように跳ね上げ、また上段から切り下ろすラツィエル。それを斜めにした左の短剣で、刃の上を滑らせて受け流すリベル・レギス。
 
 
                   ギィィン!!
 
 
そのまま一歩前に踏み込み右の短剣をラツィエルの顔目掛けて振るうリベル・レギス。目の辺りを狙った横凪を、顎を引き兜で受け止めるラツィエル。
 
 
                         ギィィン!!
 
 
ラツィエルは振り下ろし、リベル・レギス脇にある大剣をそのまま斜め上に切り上げる。その一撃を両手の短剣を×字にクロスして受け止めそのまま振るわれた大剣の勢いを利用して大きく距離を取るリベル・レギス。
 
ラツィエルも追撃することなくその場に留まり、再び硬直状態となる両者。
 
 
しかしその硬直状態も長くは続かず、
 
 
『………次で決着を付けよう、ラツィエル!』
 
 
『………良イダロウ、九重シン!我モ最大ノ武ヲ持ッテ受ケヨウ……』
 
 
呟くように告げられるシンの言葉に応えるラツィエル。
 
リベルレギスは両手の短剣を消し、ラツィエルは大剣を頭上に掲げるように持ち直す。
 
両者の間に緊張が走る。リベル・レギスは両手に手刀を作ると右手を腰に、左を湖面に向けて突き出し、その両手に漆黒の魔力を凝縮していく。ラツィエルも又捧げ持った大剣に体から溢れ出す金色の輝きを流し込む。
 
両者から流れ出る膨大な力が大気を歪め乱気流を造り出し、その乱気流に煽られ湖面は激しく波打つ。そして、
 
              サ キ エ ル        バ ル ディ エ ル
『………術式展開……水を司る天使!!霞を司る天使!!
 
 
シンの言霊と共に波打っていた湖面が一瞬で静まり、その上に二つの金色の魔法陣が出現する。そして次の瞬間、リベル・レギスから膨大な霧が発生し、瞬く間にその姿を霞の向こうに隠す。
 
 
『…………ムッ!!!』
 
 
ラツィエルはそれを見ると、剣に力を流し込むのを止め剣を肩に担ぎ上げると切っ先をリベル・レギスの有るであろう方に向け水平に構える。
 
と、次の瞬間、先ほどに勝るとも劣らぬ数の水槍が霞の中からラツィエルに向かって放たれる。
 
ラツィエルに向かい一直線に飛ぶ水槍。ラツィエルはそれに動じる事無く自分の前面に金色に輝く障壁を展開する。
 
障壁に当たり音も無くかき消えていく水槍。
 
そして全ての水槍を受け止め消える障壁、と、次の瞬間霞の中からリベル・レギスが猛スピードでラツィエルに向かって突進してきた。
 
 
『…!貰ッタゾ、九重シン!!……陽光ヨ、剣ニ集イテ、敵ト共ニ爆ゼヨ!ShineExplosion!!
 
 
突進してくるリベル・レギスに向かって切っ先を突き出すラツィエル。その切っ先から放たれる金色に閃光。
 
高速で放たれたそれは一瞬でリベル・レギスに突き刺さる。そして、
 
 
パァァァァァァァンンン!!!!
 
 
突き刺さった閃光は一瞬でリベル・レギスの全身を駆け回り、そしてその後、凄まじい音と共に爆発を起こす。
 
バラバラに砕け散り当たりに飛び散るリベル・レギスの残骸。勝利を確信し笑みを浮かべるラツィエル。
 
しかし次の瞬間、残骸を見ていたラツィエルの顔から笑みが消え、表情が驚愕へとかわる。
 
砕け散ったリベル・レギスの残骸が、空中で水へと変わり湖面へと落ちて行くのである。愕然としたままそれを見るラツィエル。
 
 
『馬鹿ナ…………分身ダト……ッ!?!』
 
 
突然言葉を詰まらせるラツィエル。見ると、ラツィエルの胸の中央に背後から紅い装甲に覆われた指先が刺さっていた。そして、
 
 
『……捕らえたぞ、ラツィエル!!』
 
 
『九…重シ…ン!?!』
 
 
愕然となり途切れ途切れに言葉を紡ぐラツィエル。シンはその様子を見ながら厳かに言葉を紡ぐ。
 
 
昇華呪法……ハイパーボリア・ゼロドライブ……
 
 
言葉と共にラツィエルに突き刺さったリベル・レギスの右手から純白の魔力が吹き荒れる。その魔力は−273,15℃の冷気となり瞬く間にラツィエルの全身を覆い尽くす。そして、シンとエルの声が完璧に同調して紡がれる。
 
 
『『……汝、青白き棺に眠りて永劫の安息、永久の氷獄へと還れ……』』
 
 
『『Sublimation!!!』』
 
 
その言葉と共に白い彫像と化したラツィエルの躯が音も無く砕け散り、そのまま風に流されて何処とも無く消えていく。リベル・レギスはそれを見送るとゆっくりとした動作で両手を降ろす。そして、黙祷を捧げるように暫しの間その場に佇むのだった。
 
 
 
 
 
NERV本部・第一発令所
 
モニターに音も無く砕け散り消えていくラツィエルが映し出され、それを見てシゲルが、
 
 
「………パターン青消滅!」
 
 
「……勝ったのはロボットか……まあ良いわ。EVA零号機、弐号機発進!!」
 
 
報告を聞き指示を告げるミサト。その指示を聞き零号機と弐号機が射出され、同時に芦ノ湖最寄りに偽装砲台、兵装ビルのロックが外される。
 
射出される二機のEVA。リベル・レギスをロックする偽装砲台と兵装ビル。
 
こうして鬼械神対EVA、DEMONBANE対NERV、の戦端が開かれる事となった。
 
これがNERVに取って致命的なミスになる事も知らずに………………。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
第三章・紅き鬼械神・後編 了
 
 

 
解説
 
術式・サキエル
 
裏死海文書にある、水を司る天使サキエルの力を利用して展開される魔術式。効果は水をコントロールする。作中の水槍、リベル・レギスの分身もこれをもって作られている。すでに存在する水をコントロールするため水の無い場所では術式自体が意味を為さない。
 
 
術式・バルディエル
 
裏死海文書にある、霞を司る天使バルディエルの力を利用して展開される魔術式。効果は空気中にある水蒸気を増加させて霧を造り出す。この術式も、すでに存在する水蒸気を増加させるため、空気中の水蒸気が極端に少ない場所では展開に時間がかかったり展開出来なかったりする。
 
金と蒼の両刃の短剣
 
第一章でメタトロンを相手にした時に使用した、タゴンとヒュドラの融合した姿。この形態の時には短剣としてだけではなく、魔術師の杖(魔力増幅効果)としての効果もある。
 
 
昇華呪法・ハイパーボリア・ゼロドライブ
 
リベル・レギスに装備されている一撃必殺の昇華呪法。手刀を突き刺し絶対零度の凍気により対象を分子活動レベルで停止さてから砕く。その力の前には高次元の存在すらもその存在を許されない。

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