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The End Of EVANGELION After
灼眼の魔王
第三章・紅き鬼械神・後編
NERV本部・第一発令所
芦ノ湖にほど近い場所に射出された二機のEVA、単眼に青い装甲に機体EVA零号機と四つのカメラアイに赤い装甲のEVA弐号機。その二機は直ぐにリフトオフされ傍らにある兵装射出用のコンテナビルからパレットライフルを手に取り、芦ノ湖湖上に佇むリベル・レギスに照準を合わせる。
発令所のモニターでそれを確認したミサトはモニターに映るレイとアスカに話しかける。
「レイ、アスカ、準備は良い?EVAの発砲と合わせて兵装ビルと偽装砲台からも射撃を開始するわ」
『……了解……準備完了です、葛城一佐』
『…こっちも何時でも良いわよ……』
二人からそれぞれ返事が入り、それを聞いたミサトは満足そうに頷くと、
「……良し……………攻撃開始!!」
ミサトの言葉と共にEVA二機と周辺の兵装ビル、偽装砲台から砲撃とミサイルによる攻撃が開始される。
リベル・レギス・コクピット
粉々に打ち砕かれ風に流れて逝ったラツィエルに静かに黙祷を捧げていたシンは、気が済んだのかそっと目を開く。
「………マスター?」
「…終わったな………エル、帰還する!」
心配そうに声を掛けるエルに短く言葉を返すシン。そのシンの言葉に従い顕現しているリベル・レギスを帰還させようとしたエル。しかし次の瞬間、
「…っ!マスター!!」
ドォン!!
ドッドドドドッドドドドドドドォォオン!!!!!!
エルの声とほぼ同時に砲撃が着弾する。そして一発を皮切りに次々とリベル・レギスに着弾する砲撃とミサイル。その衝撃に揺さぶられるコクピットでシンはエルに対し、
「……エル!何処からの攻撃だ?!」
「…はい……………これは!?NERVの兵装ビル、偽装砲台、それにEVA零号機と弐号機からです。マスター!!」
「…ちっ!障壁展開!!」
エルの報告を聞き、直ぐさま砲撃の来る方向にリベル・レギスを向け、そして全面に魔術障壁を展開するシン。モニターに映し出された、こちらに向かってパレットライフルを発射する二機のEVA。そして次々に飛来し障壁に当たり爆発するミサイル。
「………エル、損傷は?」
「……特にありませんマスター。どうやら概念兵装ではなく通常兵器のようです」
着弾の衝撃が収まったコクピットでエルに問いかけるシン。エルはその問いに冷静に答える。それを聞きシンはモニターに映る二機のEVAを睨みながら、
「……敵対行動か?フランケンシュタインの出来損ないで、このリベル・レギスに攻撃を仕掛けるとは………」
「………よっぽどのばか?じさつしがんしゃ?」
「……身の程知らずですね………NERVには愚物しか居ないのでしょうか?」
「……どうされますか?マスター?」
シンの言葉に続きルイエ、マリア、の順に侮蔑の言葉が放たれる。そしてその後のエルの問いに対しシンは、
「……攻撃を仕掛けられたんだ……だったら通信を送る前に少し反撃をして黙らせるか…」
「……判りました、マスター」
エルの返事を聞きながら、シンは着弾するミサイルや砲弾を魔術障壁で平然と受け止めながら、リベル・レギスを二機のEVAに向けてゆっくりと前進させるのだった。
NERV本部・第一発令所
攻撃を開始したNERV本部の発令所。ミサト、キョウコ、そしてオペレーター達は次々にリベル・レギスに着弾するミサイルと砲弾をモニター越しに見ている。するとモニターに映るリベル・レギスが射撃を続ける二機のEVAの方を向き、金色に輝く障壁を展開する。そして、
「………目標、障壁を展開しました。障壁の波形パターン黒。障壁はATフィールドではありません!」
「…障壁に阻まれミサイル、砲撃共に無効化されています。目標、目立った損傷はありません!!」
「!っ、目標、EVAに向かって移動を開始!」
「……くっ!アスカ、目標の接近に合わせてパレットライフルからソニックグレイブに装備を変更、近接戦闘を仕掛けなさい。レイはアスカに援護射撃を、良いわね!!」
オペレーター達からの立て続けに入る報告に舌打ちをするミサト。そして接近してくるリベル・レギスに接近戦を仕掛けるように指示を出す。レイとアスカはそれを聞き、
『『…了解!』』
返事を返し、ライフルを捨てソニックグレイブに持ち変える弐号機のアスカ。その間にもライフルで射撃を加える零号機のレイ。兵装ビルからもミサイルが発射され、砲台からも次々と砲撃が打ち込まれる。
その砲撃を易々と魔術障壁で受け止めながら、悠然と二機のEVAに近づいてくるリベル・レギス。
そして発令所の面々が見守る中、両者の距離が五十まで詰まる。
『………こっのおぉぉぉっ!!』
悠然と距離を詰めてくるリベル・レギスの様子に挑発されたのか、アスカは雄叫びを上げながら弐号機を突撃させる。それと同時に兵装ビルと偽装砲台からの砲撃が止み、
『……弐号機を援護します…』
淡々と言葉を告げながらレイは零号機から援護の射撃をリベル・レギスに打ち込む。
リベル・レギスは全面に展開していた魔術障壁を消すと、弐号機を迎え撃つようにゆっくりと右手を挙げる。
弐号機は強く踏み切ると大きく跳躍し、そして頭上でソニックグレイブを回転させ勢いを付けると、一気にリベル・レギス目掛けて振り下ろす。
両者が近づいたため零号機からの援護射撃が止んだ中、振り下ろされるソニックグレイブ。しかし、その渾身の一撃は、パシッ!!と、音を立ててあげられたリベル・レギスの右腕によって、容易く受け止められる。
『「「「「「……なあっ!?!?」」」」」』
驚愕の声が、弐号機のアスカと発令所の面々から挙がる。と、次の瞬間、
ドゴォ!!
『……ガハァッ!!』
ソニックグレイブを受け止めると同時に、カウンターで繰り出されたリベル・レギスの左拳が弐号機の腹部に深々と突き刺さり機体をくの字に折り曲げる。そして轟音と共にフィードバックを受けたアスカの短い悲鳴が発令所に木霊する。
「「………アスカ(アスカちゃん)!!!」」
ミサトとキョウコが悲鳴を上げるなか、弐号機の手からソニックグレイブがこぼれ落ちる。そして、
『…!!アスカを援護します!!』
レイの言葉と共に零号機のパレットライフルから、再びリベル・レギスに向かって銃撃が放たれようとする。
すると、それを見越したのか、リベル・レギスはソニックグレイブを受け止めていた右手で弐号機の頭部を掴むと、盾にするように零号機の方に弐号機の機体を向ける。
弐号機を盾にされ、発砲する事の出来ない零号機。そのまま硬直状態に陥ると思われた、次の瞬間、リベル・レギスが弐号機を零号機に向けて放り投げた。
「……なっ!?レイ、弐号機を受け止めて!!」
放り投げられた弐号機を見て直ぐさまレイに指示を飛ばすミサト。それを受け、パレットライフルを捨てて弐号機を受け止めようと両手を広げるレイの零号機。
ゴォ!!
音を立て弐号機を受け止める零号機。レイが、そして発令所の面々がほっと胸を撫で下ろした、次の瞬間、
ドッッゴオォォォォォォォンンン!!!!!
気のゆるんだ一瞬の隙をついて、ソニックブームを巻き起こしながら突進してきたリベル・レギスの体当たりが弐号機と零号機を吹き飛ばす。
虚を突かれ、まともに体当たりを受けた弐号機と零号機は、そのまま直線上にあるビルに激突し両機ともビルにめり込む。
「…!ッ!レイ!!アスカ!!」
「……パイロット両名、共に意識不明!」
「零号機、背部装甲板に亀裂発生!弐号機、胸部、及び腹部装甲板大破!!」
「EVA零号機及び弐号機、完全に沈黙!」
ミサトの悲鳴に続けて、次々とEVAの状況報告が入る。
発令所の面々が呆然とモニターを観る。
モニターに映るリベル・レギスは二機のEVAが突っ込んだビルに向かう。そしてゆっくりとした動きで瓦礫の中から二機のEVAを掘り起こすと、零号機の左腕と弐号機の右腕を纏めて、右腕で持ち上げる。そしてそのまま二機を晒し者にするかのように、宙づりにすると動きを止める。
「……!!目標から全周波数で通信が入りました!」
「…!なんですって!!!」
オペレーターからの報告に叫び声を上げるミサト。それを横目でちらりと見たキョウコは、視線をモニターに映るリベル・レギスに戻しながら、
「……どうするの、葛城一佐?」
キョウコの言葉に、モニターのリベル・レギスを睨み据えながら右手親指の爪を噛むミサト。そして、
「………通信を開いて!」
ミサトの言葉と共に発令所のサブモニターにシンのバストアップが映し出される。そして通信が開いたのを確認したシンは、発令所を一度、ぐるりと見回すと、
『…こちらは国連軍第666特務連隊DEMONBANE、戦闘部隊フェンリル所属鬼械神リベル・レギスパイロット九重シン特務中将だ。特務機関NERV、そちらの行った警告無しの発砲及び敵対行動は国連並びに国連軍に対する敵対行動と判断するが、よろしいか?』
「「「「「………!なっ!!!」」」」」
「………ぬぁんですって!!!……………………ふざけるんじゃあないわよ!!どうして対使徒戦で国連軍がしゃしゃり出てくるのよ!優先権はNERVにあるはずでしょうが!!!」
シンの言葉に驚くオペレーター達とキョウコ。しかしミサトだけはシンの言葉に激昂して逆に優先権を主張する。シンはそのミサトの言葉を聞き軽く眉をひそめる。そして、
『……何を言っている?NERVに現時点で戦闘に対する優先権は無いはずだが?有りもしない優先権を主張するとはどういう事だ………警告無しの発砲に対しての謝罪も無しか?』
「………知らないわよ、そんなもの!!…そっちこそEVAを二機も大破させておいて謝罪もしないつもり!?!!!!」
シンの言葉を突っぱね、逆に謝罪を要求するミサト。と、そのやり取りを聞いていたマコトが怖ず怖ずとミサトに声を掛ける。
「……かっ葛城さん?今日朝一で回った書類に目を通していないんですか?!」
「…日向君?書類って何よ?!」
「……使徒戦における優先権の一時凍結の書類です。必読の印があったものをデスクの上に置いておいたはずですが?」
「………………………」
マコトの言葉に沈黙するミサト。気まずい沈黙が発令所に流れる。 シンはそのやり取りを聞きやれやれといった風に頭を振る。そして冷ややかな視線を発令所の面々に送ると、
『……NERVの人間は必読の書類にも目を通さないのか……………まあ良い、謝罪も訂正も弁解もない以上、現時刻をもって特務機関NERVは国連に対し反逆したと判断し、国連軍の特務部隊としてこれより特務機関NERVの戦力を無力化する行動に移らせて貰う!!』
そのシンの宣言と共に、モニターに映るリベル・レギスの左腕に白いオーラが宿る。それを感知した計器を見たオペレーターが悲鳴に近い声で報告を入れる。
「……目標左腕に高エネルギー反応!これは?………使徒を消滅させた攻撃です!!」
『…安心すると良い…痛みも苦しみも感じずに一瞬で無に還るだけだ!』
慌てるオペレーターを後目に冷酷な言葉を吐くシン。その言葉に合わせたように、モニターに映るリベル・レギスがつるし上げた二機のEVAに対し左の手刀を突き入れようとする。
と、その時、プシュッというエアーの駆動音と共に発令所司令塔のドアが開きそこから、副司令であり、今まで外部折衝で姿を現さなかったユイが姿を現す。
ユイはモニターに映る、今まさに二機のEVAに手刀を突き入れようとするリベル・レギスを見て、冷徹に告げられたシンの言葉を聞き、咄嗟に悲鳴に近い制止の言葉を吐く。
「…!止めなさい!!シンジ!!!」
その言葉にモニターに映るシンと、発令所にいる人々に視線がユイに突き刺さる。そして、
「………?シンジ君??」
「……そんな?一体どういう事だ?」
ザワザワザワザワ…………………
ユイの言葉にざわめきに包まれる発令所。
NERVの人間にとってシンジという名前は特別な意味を持つ。五年前にスケープゴートとして吊し上げた少年の名前だからである。特に、少年の母親であるユイが言った事でその名前に真実みを帯び、モニターに映る青年シンとユイの間を交互に無数の視線が行き来する。
シンは動揺の走る発令所を一瞥した後、ユイに視線を送る。そして、
『碇ユイNERV副司令、私は九重シンだと言ったはずですが?これで三度目です。いい加減、間違えるのは止めてもらえますか?』
「…………………………」
シンの言葉に沈黙を返すユイ。シンは再びやれやれといった風に頭を振ると、
『……はぁ〜……それで、どうして止めるのですか、碇ユイ副司令?先に攻撃を仕掛けたのはNERV、こちらの言葉を無視してありもしない優先権を主張したのもNERV、『国連に対する反逆か?』と言う問いにも答えずにいるのもNERV、ですが?』
「……その事については正式に謝罪致します。こちらの連絡不行き届きによりそちらに対し大変な迷惑をお掛けしました……」
シンの言葉に深く頭を下げ謝罪するユイ。シンはその様子に、ふっ、と小さく笑みを浮かべ、それと同時にリベル・レギスの左腕にあった白い輝きも霧散する。シンはその様子を確認した後に再び口を開く。
『……了解した。では、特務機関NERVに反逆の意志は無いと言う事で……………但し、今回の不備は国連にしかりと報告させて頂く。国連より追って処分が下ると思いますので、そのおつもりで…』
「……判りました………」
シンの言葉に、苦渋の表情を浮かべながら返事を返すユイ。
『……では、私は帰還させて頂きます……』
「…待って、一つ聞かせてちょうだい…………零号機と弐号機にはレイちゃんとアスカちゃんが乗っている、その事を貴方は知っているの?」
『……勿論知っていますが、それが何か?』
「……………っ!…いえ、何でもありません…」
『そうですか?…………では、私は帰還します。EVAはこちらに放置しておきますので…………』
シンの言葉と共に通信が切れる。
そして、モニターに映っていたリベル・レギスは右手に掴み上げていた零号機と弐号機を降ろすと、ゆっくりと動きを止め、全身から金色の燐光を吹き出す。そして次の瞬間、音も無く、最初から存在しなかったように僅かに光の残滓を残し、その場からかき消えたのだった。
「…………パターン黒、消滅…………」
シゲルが静かに報告をする。ユイはそれを聞く時を取り直しミサトに視線を向ける。そして、
「……葛城一佐、貴方の指揮によりEVA二機が損傷、NERVも危うく国連に反逆したと見なされるところでした。何か弁解はありますか?」
「……………………………………………………………………………………」
ユイにじろりと睨み据えられ沈黙するミサト。ユイは冷ややかにその様子を見た後、
「副司令権限により葛城一佐の指揮権を現時点で凍結、司令、冬月副司令が戻られるまで独房にて謹慎を言い渡します。青葉君、保安部を!」
「……了解!」
ユイの言葉に直ぐさま保安部を呼ぶシゲル。そしてミサトは現れた保安部員に身柄を拘束されそのまま発令所から連れ出される。ユイはそれを見送った後、
「……各員、事後処理を開始しなさい。EVA及びチルドレンの収容を最優先に!」
「「「「「「「「「「「……了解!」」」」」」」」」」」
疑問は残るもののユイの言葉に事後処理を開始するオペレーター達。ユイはそれを見まもりながら、パイロット控え室にいるトウジと、そのトウジからシンジの事を聞き、質問して来るであろうアスカとレイに対する対応を頭の中で考えながらも、自身も事後処理を始めるのだった。
松代・NERV試験場
「………ミサト、無様ね……」
松代のNERV試験場、MAGIコピーのある部屋で本部第一発令所の様子をモニター越しに観ていたリツコはぽつりと言葉を漏らす。
松代に出張したリツコとマヤは、リニアを降りた際に迎えの保安部員から使徒襲来の一報を聞いた。二人は非常事態宣言が発令され、交通がストップする事を見越し本部に戻るのを諦めると、直ぐにそのまま松代の試験場に向かった。
そして試験場に到着して直ぐに、ここにあるMAGIコピーから本部のオリジナルMAGIにアクセス。監視カメラで映し出される第一発令所と外部での戦闘の様子をモニター越しに観戦していたのである。(因みにいくらMAGIコピーを使ったとしてもオリジナルから重要なデータを引き出す事は出来ない。リツコ達がそれを出来たのは、リツコがMAGIに対する上位アクセス権を持っているのと、リツコ、マヤの二人がMAGIのスペシャリストだからである。)
と、リツコの漏らした言葉にマヤが傍らの端末を操作しながら答える。
「……確かにそうですね………しかし、コレ、凄いですよ!彼から渡されていたソフトがなかったらエネルギーの解析なんてとても出来ませんでしたから……」
みると、マヤの操作している端末にはMAGIオリジナルでも解析が不可能だったリベル・レギスとラツィエルのエネルギーデータが映し出されている。リツコはそれをちらりと横目で見た後、
「…そうね………彼の言っていた話、受けようかしら?」
「…本当ですか?先輩!……でしたら帰ったら直ぐにでも彼に連絡を取りましょう!?」
リツコの言葉に驚きと喜びの混じった答えを返すマヤ。リツコはその様子を見て、くすりっ、と笑みを浮かべると、
「…そうね、そろそろ潮時だし……何時までも母さんの遺物に拘る事は無いし………それに、まだ見ぬデータの数々が向こうにはあるようだし、マヤ!短時間で四号機の最終調整と輸送準備を終わらせるわよ!」
最初のうちは自分に言い聞かせるように、その後はマッドな笑みを浮かべ、最後に吹っ切るようなイイ笑顔を浮かべるリツコ。そして計測していた端末から主要データを消すと勢い良く立ち上がる。
「…はい!先輩!!」
続けてマヤも又データを消去すると、立ち上がる。
そして二人はやる気のあふれた様子で部屋を後にするのだった。
???
何処とも知れぬ闇の中、リベル・レギスとラツィエル、NERVの戦闘とやり取りを映したモニターの様な物の前に、紫色のスーツに豊満な躯を包み込み、髪を後ろでアップにし、顔に小さな眼鏡を掛けた女性の姿をしたソレは佇んでいる。
一通りの映像が流れて、終わった後ソレは、
「……ふふふふふ、あはははは、あははははっはははっは!!……………………………………まさか、まさかまさかまさか!少し目を離した間にこんな事になっているとわね!!…………………素晴らしい!素晴らしいよ碇シンジ、いや、今は九重シンだったっけ?」
狂った様な笑いの後ソレは感極まった様に、放惚とした表情を浮かべる。そして、
「…ふふふ…あの老人達が居なくなって詰まらないと思っていたけど、君の様な存在が居たなんて…………コレならボクも舞台に立たなくてはいけないね………せっかく素晴らしい主演男優とヒロイン、そして道化が揃って居るんだから……………………………………ふふふふふふふふふふふふふふ!あははははははははは!あははははっははははっははははははははははははははっはははは!!幕が上がるよ!!壮大で!滑稽で!凄惨で!荘厳で!絢爛で!矮小で!脆弱で!狂乱で!悲劇で!喜劇で!狂気に充ち満ちた三文芝居の!道化芝居の幕が上がるよ!!!あは!あはは!あははははは!!あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!!!!!!!!!!!」
そのままゆっくりと闇が深く濃くなり、リベル・レギスと九重シンを映し出したモニターを、そして狂った様に嗤い続けるソレを覆い尽くし、全てはヤミの向こうに消えていくのだった。
第三章・紅き鬼械神・後編 了
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