祐巳とひとつのベットにいられる。
なんて幸せなんだろう。
ふたりともはだかんぼう。
乾燥したシーツの感触が心地よい。
そして、お互いのはだを指でなぞり。
てのひらで撫で。
頬擦りをし。

シャワーなんて後から。
だってそのままの素肌が気持ちいいから。
汗ばむまで、さらさら。
心が高まるまで、さらさら。

部屋は寒くもなく、暑くもなく。
でも、あらわになった小さな肩に何かしてあげたい。

長い黒髪。祐巳が綺麗と言ってくれる黒髪。
これを開くように、そしてそっと肩にかけてあげる。
瞬間くすぐったそうに。
でももっと私の髪にくるまれるように。
すぐにすり寄って来てくれた。

「あたたかいですね。」
「祐巳は長くしたことはないの?」
「肩ぐらいまでしか、、背中まで伸ばせばこんなにあたたかいんですね。」
「喜んでもらえてうれしいわ。じゃ、あげる。この髪はあなたのものよ。」
「はい。でも、もう私はすべてをお姉さまに捧げた身ですけど。」

微笑む、祐巳。


最近の祐巳はちょっとへん。
二人のきずなはもう揺らぐことはない。
見守るのが、支えるのが、なんてお姉さまは話していたそうだけれど。
私達はお互いに守り合い、支え合う。
肌を逢わせるまでになってしまったけれど。
あぁ、どちらからともなく、、、どちらからだったろう。

いつもはそんなことはない。
学園でも、館でも、休日に会えた時でも、。
でも、こんな時だけ、微笑む瞳に翳りが挿す。
微笑みそのものは幸せで満ちているのに。
だから、訊く。
「何かあって?」
「っ?なんでしょう?」
「笑顔が、少しだけ曇っているから。話せるようになってからでよいのよ。」
「、、、抱いてください。」

キス。ふわっと全身に感動が広がる。
長いキス。唇の柔らかさに少し気が遠くなる。
深いキス。おずおずと交わす舌の動きが滑らかになってきたころ、スイッチが入る。
キスを続けながら、指を手櫛にして。
祐巳のうなじから頭頂部に向かってかき揚げる。
一度目でもう甘い声が唇と唇の間から漏れる。
二度目は耳の後ろから。そして三度、四度。
普段髪をきっちりとゴムで留めている祐巳が、とても大好きな愛撫。
よいこよいこして貰っているみたいで、と言っていた。


訊いたことが後を引くことはわかっていた。
きっと祐巳は私に負い目を感じてしまうと。
でも、まず私の気持ちをちゃんと祐巳にわかって貰う。そうすればいつか祐巳はちゃんと話す。
だから沢山愛する。できる限りの愛を注いで気持ちのささくれを癒す。

指を頭から背中に。キスを頬、こめかみ、そして耳へと変えてゆく。
祐巳の身体も両腕も全部抱きしめて、背中を愛撫する。
祐巳の背中にはまだ薄く白いうぶ毛が残っている。
そのうぶ毛を。
てのひらをまっすぐして、うぶ毛だけを腰から肩へ撫で上げる。
背中に触れないように、何度も。
「はぁっあっ!」
耳元でささやく。
「背中でもこんなに感じてくれるのね。」
「あぁっはっ、そんなそっっとっ撫ぜるなんって、意地わぁっるですっ」
「好きよ、祐巳のうぶ毛。赤ちゃんみたい。」
「す、すみませっ、ん、すみっ、ませっ、んっすみま、せん、、」
何度もあやまりの言葉を繰り返す。
そんな祐巳にうっとりとしながら、負けないぐらいささやく。
「何をあやまるの?好きなのよ、好きなの。好きなの。好きなの。」
そういって耳たぶの後ろをできるだけべったりと舐めあげてあげる。
「っいいいぃぃぃぃっ」


抱きしめていた身体がガクガクと動く。
うぶ毛がすべて総毛立ち、鳥肌になっている。
それを肩越しに確認してから、今度はしっかりと背中を撫でる。
手のひらのあたたかさで、もとの肌に戻るように。
そしてゆっくりと寝かせる。
背中にあたったシーツがひんやりと感じたらしく。
ちょっとだけ眉をしかめた祐巳をまた愛しく思う。

荒い吐息が行き来していて、まだ唇は閉じられない。
肩が上下している。
つつましやかな胸も上下している。
私はその胸の上に顔を寄せる。
突端の赤いつぼみの上に舌を垂らす。
つぅーっと、糸を引きながら唾液を垂らす。
体温に近い唾液を垂らされていることに祐巳は気づかない。だからもう一方にも垂らす。
私は体を起こし祐巳に覆い被さるようにする。
そして、私と祐巳の突端同士を合わせる。
そしてくるりくるりとお互いの乳首がお互いの乳輪をなぞるように動かしてみる。
「あんっ」
お互いに、同時に同じ声。
私は自分で自分の胸を握り、自分より華奢な少女に乳首をこすりつけようと必死になっている。
そんな滑稽な姿を祐巳が見ている。
祐巳に見られている。
そんな程浅ましい姿をさらしてしまうなんて。
祐巳はどう思うだろうか。
羞恥と後悔と焦燥が一気に押し寄せる。


そのとき、祐巳が自分の胸に手を添えた。
そして私の動きに合わせようと動かし始めた。
「うれしいです、、。」
こすりつけながら、祐巳は繰り返す。
「お姉さまを気持ちよくさせられるのですもの。」
「お姉さまに気持ちよくなってもらえるのですもの。」
「お姉さまに一緒に気持ちよくなれるのですものっのっぉっ。」

唾液は次第に乾き、すべりが悪くなる。逆に垂らす前より摩擦が酷くなってきた気がする。
それでも動きは止められない。
少し痛くなってくる。
でも止められない。
表情が、お互いの表情が。
手を止めさせない。

無理な姿勢で背中が痛くなってきて、身体を離す。
そんな私を追うように、祐巳はかわいらしい胸を絞るように掴みながら身体を寄せてきた。
私に乳首への刺激を迫る、その姿がいじらしくてうれしくて仕方なくなる。

自分の痴態を観察されていることにやっと気付いたらしい。
ハッとした表情。そして両手で顔を覆い隠す祐巳。
本当にまっ赤。
「、見ないで下さい。」
「見るわ。」
「恥ずかしいんです。」
「でも、うらやましいから。」
「、わからないです。意味わからないです。」
「祐巳が無意識でも激しく私を求めてくれた。私もそんなふうに。祐巳を求めることだけになってみたいの。」


また祐巳に覆い被さる。
両手の指と指を絡ませて、キスをする。
そして頬に、目じりに、まぶたに。
おでこに、耳に、耳たぶに。
首筋に、うなじに、肩に。
そして、、胸に。
今度はちゃんと唇で。
絡ませていた指がぎゅっとなって、また緩む。でも、震えてるのが伝わる。
「我慢しなくていいのに。」
「我慢なんてしてません。」
「キスのたびに指に力が入ってたわ。」
「そんなことないです。」
「胸のときはぎゅうっと握っていてよ。」
「そんなことないです。」
「”すべてをお姉さまに捧げた身”って言ってくれてうれしかったわ。」
そういってちょっとあま噛み。
途端に祐巳はぴくんとなって。
また指に力が入って。
「お姉さま、ごめんなさぁい。」
「祐巳ははずかしがり屋だもの、許すわ。」

そのまま、唇と舌と歯で両方の胸を同じぐらい愛撫。
今度は素直に反応してくれる。
何度も何度も私の名を呼びながら。
その様と声に、つい赤くなるまで責めてしまう。

息をあらげた祐巳の身体を、胸からお腹、おへそへとゆっくりと舌でなぞってゆく。
そして祐巳の若草の生え際にたどり着く。


祐巳の力がすっかり抜けていたので、ちょっと指と指をほどく。
すぐ、すがるように放たれた手を振り回し、私の手を探す。
その隙に私は祐巳の脚の間に潜り込み、両膝を持ち上げさせてからその手を繋ぐ。
私の頭はもう祐巳の両膝の間にある。
目の前に祐巳のすべてが。

一瞬ひざを閉じようとしたが、なんとかこらえたよう。
でも顔は斜め上を向け、なんとか私に表情をみせまいとしている。
そんな祐巳の、やわらかな若草に頬をよせながら。
「ここもわたしのもの?」
「はい。」
舌を脚の付け根にはわす。
「ここも?」
「はい。」
べろりと舐める。
「っ。」

大陰唇からちょっとだけ小陰唇が覗く。
小さな唇。本当に小さな、かわいい唇。
潤って光っている唇。
そっと口づける。
フレンチキス。
ちょっと触れただけのキスなのに、つぅーっと糸を引いた。
糸はつんっと切れて私と祐巳の唇に。
下唇を舌でなぞると、祐巳の蜜の味がする。
そして何度も何度もキスを繰り返す。
フレンチキス。
やさしいキス。


身体の力がどんどん抜けてゆく。
キスするたびに抜けてゆく。
でも、もちろんそれだけで終わらない。
唇を離し、クリトリスに舌をはわす。
祐巳には予感があったのだろう。
それでも、ひぃ、と小さな声が漏れる。
舌先でゆっくりとクリトリスと包皮の間をなぞる。
それでも祐巳は、膝で私の頭を挟まぬように。
そして絡めた指を強く握らぬよう、こらえてくれる。
いっそう背中をこじらせ。
いっそう顔をあらぬ方へ向けて、こらえてくれる。

そんな祐巳を楽にさせてあげる。
そう、遠慮も優しさも恥じらいも何もかも忘れてあげる。

上唇で包皮を剥き、そのままクリトリスに吸い付く。
強く吸い上げる。
「んっんぁっっ」
吸って膨らんだクリトリスを舌で激しくねぶる。
ほら。
両膝が、両手が。
私の舌を求めるように、私の舌から逃れようとするように、私の頭を包んでくれる。
ふと生首を弄ぶサロメ、そんなイメージが浮かぶ。
息が切れるたび深呼吸し、また吸い付く。
息苦しいのに止めることができない。
もう舌の付け根が痛い、でももっとねぶりまわしたい。

絶頂の回数はもうわからなくなってしまった。
祐巳はぐったりと、それでもまだ身体をひく付かせている。
私は顔から胸元まで愛液でぬれている。
疲労感と満足感に満たされて、祐巳の隣に寄り添う。


しばらくそのままで息を整える。
たくさん祐巳を愛し、祐巳も答えてくれた。
一眠りしたら、ぬるめのバスに入って。
紅茶と多目のお菓子でゆっくりと過ごして。
そして眠ろう。
そう考えながら、愛しい祐巳の方を向く。

悲しみ、怒り、侮蔑、屈辱、絶望、諦め、懇願、全てが入り混じった瞳。
祐巳はまっすぐ私を見ていた。

また、私を奪ってはくれないんですね。

私はお姉さまのものになりたい。

私をお姉さまのものにしてください。

お姉さまに捧げたいんです、一生に一度きりを。

「ダメよ。」
声が震える。
祐巳が怖い。
祐巳の真摯な思いが怖い。
でも、そんな畏怖を必死でねじ伏せて、諭す。


さんざ愛し合っておきながら、と自分でも思う。
でも、そんな祐巳の、一生に一度のもの。
祐巳の純潔を手折ることは私にはできない。
祐巳が好きだ。
祐巳が大切だ。
だからこそためらう。

「何度も話したはず、あなたの処女はあなたの伴侶となるべき人のものよ。私は祐巳が大事だからこそ守るの。祐巳もそんなことはしないって約束したはずよ。」
「はい、、」
くどくどとお説教を言う姉。それに従う妹の返事。
しかし表情は変わらない。

「わかって。」
「、、お願いがあります。」

祐巳はそういってベットから下りる。
白い背中。
小さな背中。
まだ身体は熱いはずなのに。
とてもひんやりとして見える。

祐巳は自分のかばんから何かを取り出す。
かわいらしい、紙袋。
ファンシーショップの包装。
一度、デートの時に連れられて行ったお店のもの。


ラッピングなんて飾られたものはされていない、ただの紙袋を祐巳は開けている。
セロファンテープを丁寧に開ける。
裸体の祐巳の手の中の、不恰好な花。
中から出てきたものは四角い箱が2つ。同じかたち、同じ色。

「お姉さま、お願いがあります。」
繰り返す、祐巳。
「それは、なに?」
「ピアサーです。」
「ピアサー?でも高等部ではまだピアスは」
「しるしを下さい。」
「聞きなさい、何を言ってる、、」
「しるしを下さい!」

「私の胸に、しるしを下さい。」
「ピアスならしばらく外していればまたふさがるそうです。」
「一生の傷にはならないそうです。」
「お姉さまと共に歩める間、」
「お姉さまのことが好きでいる間、」
「その間だけでいいんです。」
「しるしを下さい。」
「あかしを下さい。」
「痛みを下さい。」
「枷を下さい。」

とつとつと言葉を紡ぐ祐巳。


自傷行為。いえ、私に傷付けさせようとする倒錯した行為。
祐巳の目に浮かぶ思いは多すぎて、複雑すぎて、私には受け止めきれない。
その願いも受け止めきれない。
でも。
私は姉。
姉は、、妹と共にある。
だから決意を口にする。

ベットに上げ、座らせる。
「祐巳。」
「はい。」
「好きよ。」
「私もです。」
「しるしをあげる。」
「っ、はい!」
驚きと喜びの混じった返事。
「今からの痛みは私が授けるもの。ゆっくりとその痛みを噛み締めなさい。」
「はい!」
「かわいいピアスを用意してあげる。私の最愛の妹であるあかしよ。」
「はい!」
「私が望んだら、いつでも見せるのよ。何時いかなる時でも、何処であろうとも。」
「はい!」
「右に欲しい?左に欲しい?」
「っ、えっ?」
「私は祐巳と反対側にするわ。」
「っそ、そんなっ」
「私も開けるわ。」


「お姉さまにそんなことさせられませんっ!
「いやよ。私は祐巳とお揃いがいいの。」
デートの度に繰り返された言葉。
そのときと同じ笑みを浮かべながら。
祐巳は困っている。
でも、私の決意は変わらない。
デートの度に繰り返された言葉。
一度も翻したことはない。

それから私の思い通り、バスタイムにして、ティータイムにして。
その間、ピアサーの説明書を二人で読む。
ゆっくりくつろいでから、お互いにピアスを開けた。

祐巳は左に、私は右に。
祐巳は失敗してはいけないからまず自分から、と言って聞かなかった。
てのひらに収まる小さな装置。
太い針の作りは荒そうで、これで大丈夫なのかと思う。
それでも。
ガシャンッと機械音がして、祐巳の胸の突端に乳白色のピンが留まる。
祐巳は一瞬顔をしかめ、でも左胸のあかしを見下ろしてうれしそうに私を見た。

次は私。
やはり躊躇する祐巳の手を取り、私は話し始める。

かわいいピアスを選んであげる。
おそろいのピアス。
二人を繋ぐことのできる銀色をしたリングのピアス。

そう、それは二人のエンゲージリングよ。

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