その夜遅く、薫幹の携帯に思わぬ人から着信があった。
いままでそのひとから直接、連絡が入ることなどなかったから、
正直驚いたのだが、自分に電話をくれたことには素直に喜びを感じた。
「もしもしミッキー?久しぶり」
「ウテナさんッ!!」
「元気だった?」
「ウテナさんこそ、大丈夫なのですか?」
「おかげさまで、鳳学園に帰って来ることが出来ました」
「ところで、話は変わるんだけど、実はミッキーにしか聞けないことなんで電話したんだ」
「ボクにしか聞けないことですか?」
幹は、いきなり気合いが入った。
「寮の前にいるんだけど、いまから、出て来れるかな?」
「勿論!!!!」
幹は妹がもう寝入っていることを見極めると、そっと寮を出た。

「久しぶりッ!ミッキー!」
「ウテナさんッ!」
ふたりは両手を差し出して手を握り合った。
幹としては抱きしめてしまいたかったが、そこまでの勇気がないのが悔しかった。
「で、ボクに聞きたいことってなんですか?」
「そうそう、どうしてもミッキーでないと」
「それって…」
「双子の妹がいるってどんな感じ?」
…話はやはり、そのことでしたか…
剣財閥の跡取り娘、剣ミツルの転入の場面を目撃した生徒たちからあっという間にそのニュースは広まっていた。
剣ミツルと天上ウテナは双子の姉妹である。
何らかの事情があって別々に育てられ、お互いにそれを知らずに暮らしていたが、
鳳学園から失踪した後、なぜかウテナは剣財閥の跡取りである妹と再会することになったらしい。
そして、今日、その妹と共に剣財閥の強力な後ろ盾をもって鳳学園に戻って来たのだった。
「それは、剣さんのことですか?」
「さすがに情報が早いね」
ウテナはちょっと頭をかく仕草をして話し始めた。
「ボクはずっと自分はひとりっきりだと思って来たんだけど、ミツルは前からそのことを知っていてボクを探していたらしいんだ」
「だからかもしれないけど、なんでもかんでも一緒にやりたがる」
幹はニッコリと笑って、皆まで言うな、という仕草をしてみせた。
「うれしいけどちょっとだけ鬱陶しい?」
ウテナはパッと顔を上げ目を丸くした。どうして判るのと言いたげだった。
「だから、ウテナさんはボクに話を聞きに来たのでしょう?」
「そうそうそう、そうなんだよッ!!!妹がいるってことが判って本当に嬉しいんだ、嬉しいんだけど…」
幹はその困ったような照れくさいようなウテナの表情が可愛らしくて仕方なかった。
…先輩に対して可愛いはちょっと失礼かな…
「ミツルさんのことが嫌いなんですか?」
「とんでもない!!初めは何者かと思ったけど。根はとても優しい娘だよ」
「なら、いいじゃないですか。そのうちにお互いの居心地のいい距離が判りますよ」
「ボクも梢には随分振り回されましたけど、もし梢がいなかったらとても寂しくて耐えられないと思います」
幹が寮を抜け出してから、ふたりを密かに付けて来ていた梢は、
いまの兄の一言で赦してやってもいいかなと思うのだった。

しかし、その三人をさらに離れて見張っている人物は、あまり寛容な気持ちでいるとは言えなかった。
…生徒会役員、薫幹。姉様に馴れ馴れし過ぎる…
ミツルの視線は攻撃的だった。

その1 その3
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