がまんしなきゃ、てお姉さまは。
何度も何度もおっしゃるけれど。
噂は全然収まらない。
学園長のお話でも。
ホームルームでの先生からの言葉にも。
そんな事実はなかった、って暗に含めて。
皆に説いてはいるけれど。
噂は全然収まらない。

会釈。
ごきげんよう。
ちょっとした会話。
それだけ。
大勢の生徒のなかで、ぽつんと。
それがお姉さまの学園での一日。

ゆっくりと名誉回復っていわれても。
せめて、なにか機会があればいいけれど。
でも人とのかかわりが希薄な、今のお姉さまには。
なかなかそんなチャンスは与えられない。

「イエローローズ」だってそうだ。
あの事件がお姉さまのいうとおりだったのなら。
学園長と一緒に、学園を守るために敢えて引き起こした事件だったのなら。
それが原因で推薦入学が望めなくなったのなら。

くやしい。くやしいよ、お姉さま。



紅薔薇様のためならばと、汚されてきた手。
それはお姉さまの決意だから、わたしにはなにもいえない。
でも学園のためにしたことでさえ、お姉さまを苛むなんて。

でも作為的な記事なんて作れない。
今のわたしにはそんなの作れない。
すぐ読者に見破られる。
お姉さまにも怒られる。
なにより。
そんなお姉さまのされてきたことを侮辱するようなかわらばんは出せっこない。

でもせめて。
なにかお力になることができれば。
おこころをいやすことができれば。

そろそろ中間試験。
試験が終われば試験休み。

だから、そっとお訊ねする。

試験休みはご予定ありますか?
よろしければ
よろしければ
お姉さまのお部屋に、、、おじゃましていいですか?
あの、夏の日のように。



にへら〜へら〜

あぁ、もうこの人は。

お誘いしてからこの調子。
孤立しててもへら、へら。
試験前日でも、へら、へら。
なんか小さく唱えてる。
唇の動きをたどってみると。
わたしの名前をくりかえしてる。

そうこうするうち中間試験。

お姉さまの名を穢すまいと。
お姉さまのお噂を否定しようと。
一生懸命に試験勉強。

時々の休憩時間。
お茶を飲みながら。
お姉さまのことを考える。

わたし、がんばってます。
お姉さまも、がんばってください。
そして思い浮かぶのはお姉さま、、、のにやけ顔。

あぁ、あんな約束するんじゃなかった。



思い出のあの日からもう随分経っている。
あの時は暑い日で冷房をしていたけれど。
今は早めの暖房が入っている。

だからさむくない。
二人ならさむくない。
はだかんぼうでも、さむくない。
肌を寄せ合えば、さむくない。

あぁ〜かわいい〜かわいい〜かわい過ぎる〜〜
(すりすりすり、すーりすり)

、、、はぁ、、

もうお姉さまは壊れ気味。
試験から、受験から、全てから逃避してるみたい。
あんな約束するんじゃなかった?
いえ、そんなことはない。
お姉さまはきっと大丈夫。
きっと元のお姉さまにもどる。
あ、いやそれは、、、元は困る。取消し。
とりあえず。
わたしがお姉さまにできることをする。

お姉さまのほうを向き直り、抱きしめ返す。



え、あ、なに?

耳のしたに、うしろにキス。
背中のブラの跡に指をなぞらせて。
腰をうしろからなで上げて。
ふっうぅっ
お姉さまの声。

ブラの跡をそのまま伝って、指は乳房へ。
もう一方はショーツの線をたどり。
そっと耳元でささやく。

きょうはわたしが
お姉さまをいただきます

そのまま唇で耳たぶを。
同時に乳首をこすりあげて。

お姉さま、今日は。今日だけは
わたしの愛撫を受けてください
わたしのきもちをこころゆくまで
受け取ってください

お姉さまは目を閉じたまま。
ため息をはくかのように、わたしを呼んだ。
とろけるように、なんども。惚けるように、なんども。



お姉さま、お姉さま。
好きです、好きなんです。
だから、お姉さまに会えたこの学園も。
好きなのに、好きだったのに。

お姉さまが自分のためでなく。
学園のためにしたことなのに。
何もかも承諾済みなはずなのに。
そんなの、かなしい、くやしい。

お姉さまが判断されたことってわかってます。
お姉さまが納得済みってわかってます。
ご自分を落としいれようとした人を許したのも。
もう手は汚さないってわたしとの約束を。
守るためだってわかってます。

でも、かなしいんです、くやしいんです。

こんなにすてきなお姉さまなのに。
誰もわかってくれないなんて。

だからわたしが。
わたしだけのお姉さまに、こころを込めて。
気持ちよくなってください。
溶けてしまうほど、狂ってしまうほど。



お姉さまはお美しかった。
わたしの愛撫を素直に受け取り身悶えし。
指がなぞる曲線の振幅にあわせ髪を振り乱す。
そして、うわごとの様に唱えられたお姉さまの願い。
そしてわたしの願い。

いっしょに、、、いっしょにぃ、、

仰向けになり、放り出されたお姉さまの手のひらの上に座るように。
そしてその中指がわたし自身にあたるように。
わたしも手を伸ばし、お姉さま自身を包み込むように指を当てて。
そして、口づけ。
お互いに、お互いしか知らないところを、刺激しあいながら。
口づけはだんだん激しくなり。
指の上下も激しくなり。
何時のまにか乳房も押し付け合い。
唾液を交換しながら。
お互いの名をを呼びながら。
激しくこすりあう指。
突然目の前が真っ白になり。
指にカッと熱いものを感じ。
声が聞こえ。
でも、その声が。
自分の声なのか。
お姉さまの声、か、、、



お姉さまにしてあげるって決めてたのに。
今はお姉さまの胸の中。
でも、うれしいから、いいことにする。

ふふっ、、
なんですか、、お姉さま、、
妹から、しかも真美のような子からこんなことっ、、て、すごいなって思ったのよ、、
そんな、黄薔薇革命みたいなこと、言わないで下さい、、
そうね、でも私達にとっては革命的じゃない?
そうかもしれないですね、、
紙薔薇革命、とか
あまり、、、いい響きじゃない、ですよ、、
そう、、私は気に入ってるのよ、紙薔薇って、、新聞部の築山三奈子にはお似合い、、でしょ、、
そんなこと、、
あのね、いやなことはいつか忘れてしまうものよ、、
え、、
そしていつか私のことはなんでもない思い出のひとつになってしまっているわ、、、、
あ、、
愛撫しながら、あなた、口に出していたのよ、、
あ、い、いえ、、あ、あ、
ありがとう、私は他の誰がわかってくれなくても、あなたさえ、あなたさえ、、

涙がとまらなくて。

そんな私をずっと抱きしめていてくれて。



なんとかお姉さまの名誉挽回を。
もちろん、他の記事もおろそかにせず。
なんて、あらためて朝の教室で決意を新たに。
そこへ、リリアンにはふさわしくない、パタパタ走る音。

編〜集〜長〜〜!
な、なによ、いったい
すぐ、すぐ、来てください!

手を引かれ、教室から引っ張り出される。
そのまま廊下を、今度は二人でパタパタ。

なに、なに?この慌て様!
なによりあなた、こんなところシスターに見つかったら、どうするのよ!

シスターに見咎められることなく、目的地へ着く。
昇降口近くの掲示板。
うっ見たくない、、中間試験の結果が、もう貼り出されてる。
そんな私を一年生がなおも引っ張り、指差して見せる。

あんぐり。

三年 首席 築山三奈子 ・・・・点


えっ

えーーー!



リリアンは幼稚舎等からエレベータ式に上がってきた組と外部受験組がいる。
だけどそんな生徒同士で成績がかけ離れてしまうってことも困る。
だから試験問題は基礎から応用、難問まで幅広く出題される傾向にある。
きちんと授業を受けていれば平均点は簡単に取れる。
そしてそれなりに勉強すればそれなりに順位も上がる。
でも、上位に食い込むにはかなりの難問もこなさなければならない。
必死で勉強しなければならない、遊んでいる余裕などない、筈。

おそらくお姉さまはずっと試験の点数を押さえていたのだ。
ロサキネンシスとご自分とをかけ離れた存在に見せるために、あえて。
先生方の推薦が受けられなくなった、というのもきっと違う。
お姉さまは推薦がなくても全然困らない。
実力で合格可能なのだ。
そして今、ご自身でその「タカの爪」を披露することで。
ロサキネンシスを上回る成績をあげることで。
本当は真面目に勉強している優等生となって。
悪い噂を一掃されたのだ。

お姉さまの立場も新聞部の立場も、完全に回復した。
新聞部の力でなく、お姉さまの力で。

周囲の、お姉さまを称える言葉、言葉。
わたしにもお祝いと賞賛の声がかけられる。

その中で、わたしは.
わたしは。



編集長、?

、、ずっと、ずぅっと、わたしが、わたしが、、

あの、編集長?

どんな、、どんな気持ちで、、

あの、どうされ、

あの、おことば、、やさしい、おことば、、いったい、、

どうされたん、ですか?

わっわたしの、、きもち、を、、、また、ないしょ、で、、かってに、、かってに、、、


かっ

かっ

かっ

かみばらかくめいしてやるぅ〜〜〜〜〜!!!



怒りのあまり、少し。
うれし涙がこぼれた。

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