メイドとして雇われているならそれなりに。
あんなヤツでも、雇い主には変わりない。
でも料理は苦手だから、せめてお給仕ぐらいはしないとね。
近付けばロクなことがないってわかっていても。
そう思ってみつきの作った朝食を、取り見目素晴らしく盛りつける。
はみ出したソースはキュッと拭き、サラダの彩りに気を配り。
淡い期待かもしれないけれど、これならアイツも驚くかもね。
トレイにパンとかオレンジジュースとかどんどん並べる。
でもバターナイフの位置にも気をつけて。
今日の朝食はダイニングでということだから。
みつきの応援を背に、トレイを持って厨房を出発。
カートを使うほどじゃないけれど、この館は広いから。
食事を作るところと食べるところ、もっと近くていいのに。
あ、安奈ちゃん、ここにいたの?
ふと思いついてお願いする。
お願い私に付いてきて、ダイニングの扉を開けて欲しいの。
両手はトレイでふさがっているから。
え。ええ。ええええ。ええええええええっ!
何で私の後ろに回るの!何で背中に張り付くの!何で私に両手をはわすのぉ〜!
トレイの上の朝食は落としたくないから、逃げられないし手も使えない。
安奈、ダメ、ダメだってばフォークが落ちちゃう。
動かないでって言われても、でもペチコートの下にまで手を差し入れないでよぉ!
あ、あ、あ、ショーツ、だめ、ずらしちゃ、ダメ、ダメダメダメ!
ぃやあああぁ〜〜〜〜〜〜〜!!!
トレイが空中に舞って。
朝食も空中に舞って。
落ちるところはひっくり返った私の上。
オレンジジュースは…安奈ちゃんの手の中か、助かった〜、いや全然助かってない!
せっかくのみつきの料理がぐちゃぐちゃ。
メイド服も汚れてしまった。
はぁぁ、どうしよう。
と、気がつくと目の前に、義貴が立っていた。
こぶしを握りしめて、涙を流しながら。
そしてひとこと。
「いずみ、でかしたぁぁぁぁ!メイド女体盛り朝食!これから毎朝これで頼む!」
いやコスチュームは毎朝変わった方がいいな、とかなんとか義貴の意識は異次元の彼方。
ばっかやろーーーーーーーー!
はぁーっ、という声と共に目の前が白んでくる。
頭の中はまだぼぉっとしている。
だけど自分のため息で目が覚めたことはわかっている。
掃除が終わってソファーで眠ってしまったんだな。
薄目を開けて見えたクッションの柄でそう思う。
そのクッションから帰ってくる自分の体温にほっとする。
あぁ起きなきゃ、こんなちっちゃなメイド服じゃ身体を冷やしちゃう。
視界が輪郭を取り戻す。
白い頬と長いまつげ。
安奈ちゃんの顔が目の前にある。
びっくりして飛び上がりそうになったけれど、その途端に。
「ぁ…ぅん…」
なんて安奈ちゃんの吐息を聞いてしまったら、もう動けない。
それに安奈ちゃんの腕が私の肩から背中にあって。
暖かいけど逃げられない。
肩を冷やさずに済んだのは安奈ちゃんのおかげ。
それにお掃除も(ちょっと空回り気味だったけど)一生懸命だった。
なんだか私のことを好きって思ってくれているみたいだし。
私がしてあげられるご褒美ってこれぐらいだし。
でもいつまでもこうしてはいられない。
今度は安奈ちゃんの身体が冷えちゃうから、起こしてあげなきゃ。
そう思って寝顔を見ると。
ピンクのやわらかそうな唇。
ふるふるっと。
ごくり。
え、今、私。息を飲んだ。
安奈ちゃんのこと…意識しちゃってる!?
安奈ちゃんがメイドになるってやって来た朝。
安奈ちゃんは私をキスで起こしてくれた。
あのときは息が出来なくて、死ぬかと思って、慌ててて、それで。
でも愛情の込められたファーストキスだった。
どうだったんだろう、この唇が触れたとき。
大切なことなのに、全然思い出せない。
安奈ちゃんにとっても、そして私にとっても。
今度は私が起こしてあげる番、だよね。
いいよね。お互い様なんだから。
お返しなんだから。
安奈ちゃんが目を覚ます前に、離れればわからないよね。
もうちょっと身体を寄せる。
それに合わせて安奈ちゃんの腕がより私を絡め取る。
後戻りできない。
そっと触れる。
私は息を飲んだままだけど、安奈ちゃんは寝息を続けているから。
お互いの唇の間から吐息が漏れる。
その吐息はとても甘くて。
もっと欲しくなって。
でももう離れる。
そうよ、私みたいに息できなくなったら困るもの。
「安奈ちゃん、起きて」
安奈ちゃんに包まれた身体を揺すりながら声を掛ける。
「あ、ん……うん…」
目覚めつつある安奈ちゃんの腕をほどきながら身体を離そうと、すると。
するり、と胸元があらわになる。
!、!!、!!!!
肩紐も背中のホックもはずされてる!
安奈ちゃんたら私が寝ている間にこんなことを!
隠そうと思う前に安奈ちゃんが飛び込んできて(素早!)
はだけた胸で抱きしめたようになってしまう。
イ〜ヤ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!
その後は散々だった。
振りほどこうとしても安奈ちゃんは放してくれないし。
その騒ぎを聞きつけたポチまで飛びかかってくるし。
逃げ回っているうちに隠しカメラを発見したので画像を速攻削除して。
そうよ、あんな恥ずかしいこと、誰にも知られたくないじゃない。
結局またメイド服はぼろぼろになって。
目覚めの時のため息と、また別のため息をつく。
「へ、部屋に戻って身支度直してくる……」
そう言い残してリビングを後にする。
安奈ちゃんは返事を返さない。
ただ、ゆっくりと指を唇に運び。
頬を赤らめるだけだった。
広い庭園の手入れはとっても大変。
もちろん定期的に庭師には入ってもらってても。
日々のお世話はやっぱり私の仕事。
もちろん女の子に出来ることは限られるから。
水をまいたり雑草を取ったり落ち葉を集めたり、程度なんだけど。
いつもはお掃除好きなみつきも一緒にするけれど、今日は安奈ちゃんと二人きり。
青々とした芝草が気持ちいい、思わず寝ころびたくなるけれど。
お水をあげなくちゃいけないから、それは止めとく。
道具を片付けながら「安奈ちゃん、蛇口を捻って」ってお願いしたら。
ぶわぁぁっぁぁっぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁあっぁぁ!!!
轟音と共に青い蛇が激しく暴れまわってる!何なのよこれ!!
でもそうと思ったのはほんの一瞬。
「蛇口間違えてるよ!すぐ水を止めて〜!」
安奈ちゃんの立っていた足下にはスプリンクラーの蛇口があったんだけど。
気付かなくてホースのところへ行って、その蛇口を思い切り開けたみたい。
私もよそ見してて、そんなことをしてたって気付かなかった。
でもなんでかな〜、ぐしょ濡れになったの私だけ。
まったくいつもこうなんだから。
でもまぁ。
安奈ちゃんの身代わりと思えば悪い気はしないか。
ふりふりメイド服だから透けることもないし。
天気は良いし、まだしなきゃいけない庭仕事もあるし。
お日様に乾かしてもらうことにして、そのまま仕事を続けることにする。
一気に終わらせてお風呂に入ろう。
そう思って頑張っていたら。
まだ生乾きなのに風が出てきて。
ちょっと冷えちゃったかな。
あ、どうしよう。
ちょっと。
おトイレ、、に。
いつも使用するトイレは決めているけれど、ここからはちょっと遠い。
でも絶対義貴に盗撮されたくないから、頑張って行ってこよう。
と思案していたらガサガサッて音がして。
植え込みの中から安奈ちゃんの顔が除いてる。
「いずみさん…お手洗いでしたらここでそうぞ」
何かもじもじしてらしたのでそうじゃないかな、と。
でもここからはお屋敷は遠いですから。
で、この植え込みの中にはカメラもマイクも無いことを確認しまして。
私が義貴君やポチが来ないか責任をもって見張ってますから。
「でも、こんなところで……」
「わたし、大好きないずみさんがお困りなら、ぜひ力になりたいんです!」
それに、そんないずみさんの姿、誰にも見せたくないんです…
植え込みの中でやっぱり生乾きのショーツをずらし、しゃがむ。
外からは安奈ちゃんの草を踏む音が聞こえる。
やっぱり躊躇する。緊張する。
あ、ティッシュ大丈夫かな、あぁ濡れてなかった、よかった。
植え込みの中は風が通らなくてお日さまのぽかぽかが集まっていた。
でも頬がなんだか熱いのはそのぬくもりのせいじゃない。
ふーっと息をはいてから、ちょっとずつ力を込める。
あだめ、なんか出ない。
もう一回、スカートをたくし直して、もうちょっとお腹に力を。
ぷしゅっって音にびっくりして慌てて力を抜いたけど。
細い流れは止まらない。
落ち葉を打ってパラララっって音を立てて。
そんな音を安奈ちゃんに聞かれたくなくて、おしりを動かしたけれど。
やっぱり音は止まらない。
力をもっと抜いて少しづつにしても、音を小さくしようとしても。
それは終わりが後になってしまうだけ。
あ、おしりにつたって来ちゃう。ヤダヤダ〜。
頬はもっと熱くなって、どきどきが激しくなって、おしりをもじもじさせて。
なんかとても恥ずかしくて、長い時間。
やっぱり、聞こえてたかな……恥ずかし〜〜。
後始末して植え込みから出ると、安奈ちゃんが敬礼して迎えてくれた。
「いずみさん、しっかり見張ってました!」
大丈夫何事もありませんでした、と報告する安奈ちゃんの顔。
その安奈ちゃんの、鼻から。
たらーり。
鼻血が一本垂れていた。
庭園の手入れはまだ少し残っていたから済ませてしまうことにする。
最後にほうきで草や葉を集めてぎゅうぎゅうとゴミ袋に詰めて。
敷地の端のゴミ収集場まで持ってゆく。
それから使った道具とかを集めて納屋に向かう。
園芸用スコップとか、雑草を取るのに使った鎌とか、
ちゃんと土を落としてから箱にしまい直す。
大きな剪定ハサミとかもぞうきんで拭ってさびないようにする。
巻かれたホースの中に水が残らないようにとリールを何度も回すと。
その度、先端からじょぼじょぼとしたたり落ちた。
なかなか水が抜けなくて時間がかかる。
やっとしたたりが収まったから、納屋の隅に納めようとすると。
安奈ちゃんが話しかけてきた。
「すみませんでした…」
私は応えない。
植え込みから出たときから、一言も話していない。
目も合わせない。顔もみない。手伝いもさせない。近寄らせもしない。
無視。
無視を続ける。
そう、無視し続けるしかないじゃない。
それでも声は防ぎようがない。
小さな声が繰り返し謝罪を繰り返す。
でもそれは私の感情を苛立たせる雑音にしかならない。
しゃべらないで、こっち見ないで、納屋から出て行って。
あぁ、もうイライラする。頭に血が昇る。
「…奥の壁の前の、脚立に座って」
「えっ……脚立に、ですか」
私の前を通り過ぎ、脚立に向かう安奈ちゃんにもう一言。
「座る前に下着を脱ぐのよ」
そう言った瞬間頭は一気に氷点下。
その分頬が一気に紅くなる。
安奈ちゃんは何かを言いかけ、そして何もいわずそのままつぐむ。
でも私の目の色をうかがってる、瞳を見つめ返される。
そんなことされたらもっと紅くなっちゃうから「早くして!」と急かす。
脚立の前の安奈ちゃん。
膝を付け、もじもじしていたけれど。
スカートの左右だけをたくし上げ、手をゆっくりと差し入れて。
ちょっとの間の後に、するりとふわふわしたものが滑り落ちてくる。
ひざ上でとまったそれば真っ白なシュークリームみたい。
内また気味に片足をあげ、ちらりと茂みが見えたかと思うと。
そのシュークリームは片足だけのものになった。
「下着はそのままでいいから」
だって黒のストッキングのチョコケーキに。
ショーツのクリームをデコレーションしたみたいだもの。
「スカートを持ち上げて、おしりを直に脚立にすわって」
木製の脚立はそう冷たくないはずだから。
「両膝を開いて」
おずおずと開かれる、密やかなところ。
「右脚を、、よこの棚に乗せて」
そうすればスカートの前がたくし上がってしまう。
安奈ちゃんは目を閉じる。
右膝が上がり、スカートが腿をすべってゆく。
白い内腿とおしりと、暗い柔らかな茂みが覗く。
「指で開いて」
いきなり安奈ちゃんの目がまん丸に開いて、私を見る。
高揚した自分を見られるのが恥ずかしくて目を背けそうになるけれど。
必死に堪える。
頬の熱さにも。
必死に堪える。
そして静かにゆっくりと恫喝する。
「安奈ちゃんは私の何を見たの?」
「音を聞いただけ?」
「立ち上がって下着を戻してるところ?」
「おしりをふいているところ?」
「出終わってしたたり落ちているところ?」
「音を立ててしているしているところ?」
「出始めで勢いよくしているところ?」
「出そうと力んでいるところ?」
「下着を降ろしてしゃがんだところ?」
「それともどうしようか、もじもじしてたところからなの!?」
「信じていたのに裏切られた!これぐらい当然でしょう!」
語尾だけ強く。でもそれはやさしい言葉。
償ってくれれば許すよっていうメッセージ。
そしてそれはちゃんと安奈ちゃんは伝わってる。
安奈ちゃんは壁に背を任せる様に身体を反らして、両指を運ぶ。
再び目を閉じて、人差し指を亀裂にあてがい、そっと開く。
透明な粘性の雫が、もう脚立の座面までとどいている。
「いつからこんなになってたの?」
「覗いた、時から、、」
「下着の内側がこんなに汚れてる。嘘つき、もっと前からでしょう?」
「…はい」
「本当はいつから?」
「お庭に出て、すぐ、です。いずみさんと二人っきりで、もうそれだけで……」
「私の背中とか腋とか脚とかも見てたんでしょ」
「はい」
「太ももとか下着とかも覗いたのね」
「はい」
「安奈ちゃん、もっと中まで開いてみせてよ」
もう命令口調はしない、でも安奈ちゃんは言うとおりにしてくれる。
人差し指はそのままに、安奈ちゃんの中指が内側の小さな唇に触れる。
中指の関節が機械仕掛けのように左右同時に折り曲げられて。
雫の源泉をあらわにする。
ピンクがちな白い細工が粘性のものに包まれていて、まるで桃のデザートのよう。
だから私は顔を近づけて安奈ちゃんのをうっとり見つめてたら。
安奈ちゃんの息が荒くなって。どんどん啜り泣くような声が漏れて。
でもあわてない、わかってるよ安奈ちゃん。
肩がちょっと上下して、指がひくつき始めて。
そうだよ、もうすこしなんだね、じゃあちょっとだけお手伝いするよ。
ふーっと一息吹きかけてあげる。
その瞬間安奈ちゃんは顎を上げ、一瞬の嬌声とともに身体をこわばらせて。
同時にさっきよりもっと粘性の高いものがあふれ出してきた。
それは強い臭気を漂わせていたけれど、ちっとも不愉快ではなく。
頭がくらくらし身体が熱くなる麻薬じゃないかと思った。
しばらくガクガクと身体と腰をふるわせて、そして息をついて静かになる。
私に見られていただけで達してしまったんだね、安奈ちゃん。
また無言に戻る。
身支度を調え、残りの片付けを済ませ、お屋敷に戻る。
でも今度は。
ふたり、手をつないで。
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