卒業を控えて、祥子と薔薇の館で二人きりのお茶会。
 何気ない会話の中にも以前とは違う祥子を感じる。
 祐巳ちゃんから良い影響を受けている祥子。
 私も安心してこのリリアンを去ることが出来そう。
 と、窓の外から話し声が聞こえて来た。
 五六人、いやもっと多くの生徒がやって来たみたい。
 一団は薔薇の館のなかに入ったようで、今度は一階が騒がしくなる。
「せっ整列してくださ〜い」ってちょっと慌てた祐巳ちゃんの声もする。
「何の騒ぎかしら」
「祐巳が来たようですね」
「…何が始まるのかしら?祥子」
「きっとびっくりなさいますよ」

 トントントンと階段を上る音は祐巳ちゃんのだけど。
 すぐにたくさんの足音でかき消されてしまう。
 ノックの後、開かれた扉からは祐巳ちゃんとたくさんの見知った顔、顔。
「ごきげんようお姉さま、皆さんお揃いになりました」
 それは十名を超える、中等部高等部を通じて見知った生徒達。
 同級生だったり、後輩だったり。
 バレンタインにチョコをくれた子や親衛隊を自称していた子達まで。
「ありがとう、祐巳」
「いえ、それはロサキネンシスをお慕いしている皆さんにおっしゃって下さい」
 祥子の言葉に慌てて手を振る祐巳ちゃん。
 そしてその中から一人歩み出て。
「祥子さん、祐巳さんありがとうございます」
「そしてロサキネンシス、申し訳ありませんが今日はよろしくお願いいたします」
 何かわたしのことで始まるようだけれど、なにがあるのかわからない。
 妹達に何が始まるのか目線で問いただしても、二人はにっこりするだけ。
 そして祥子がみんなに話しかける。
「では、始めることにいたしましょう」
 その瞬間、みんなが私にわっと群がってきた。


「やめなさい!やめなさい!…やめて!!」
 たくさんの生徒の中で私だけがパニックを起こす。
 しかしみんなの動きに無駄がないことから念入りに計画されていたことを悟る。
 手と肘、足と膝、腰をそれぞれに一人ずつ。
 頭を振って抵抗しても誰にも当たらないのに、絡みつく手、手、手。
 そんな私に祥子が諭すように言う。
「卒業式を控えられておられるのに、そんな身体に痕を残されるような振る舞いはいけませんわ」
『おとなしくなさってください、もう逃れられないのですから』
 その言葉は私に抵抗する力を弱らせる。
 ろくにあらがうこともできないまま一枚ずつ、一枚ずつ全て剥がされてしまう。
 いつの間にかテーブルの上のティーセットが片付けられており、代りに私が持ち上げられ、横たえさせられる。
 歓声が沸き、次に溜息が広がる。
 四肢を開くように押さえつけられて何も隠すことが出来ない私。
 密かにコンプレックスだった控えめの胸と薄い恥毛を晒されて目を閉じそうになる。
 周りをぐるりと囲むたくさんの顔は照明から逆光となって表情が読み取れない。
 ただギラギラと光る眼だけはわかる。
「やめて……いや、やめて…」
 私の嗚咽混じりの声だけが繰り返される。
 すぅっと輪の一部が開いて、祥子と祐巳ちゃんが現れる。
「では最初は紅薔薇姉妹からお願いします」
 祥子の、それは今まで見たことのない笑顔。
「私にたくさんの愛情を注いでくださったお姉様に感謝を込めて。」
 祥子の唇が私の唇へと近付き、思わずそれを避けようと右を向こうとした。
 しかし新たな手が私の顔を押さえつけ、別の手があごを押さえ唇を開かせる。
 祥子の唇の感触は柔らかくあたたかくて、こんな時なのに少しだけ安堵してしまう。
 しかしだんだん祥子の舌が私の口を犯し始める。
 舌を絡ませ、歯の裏側をなぞり、上あごをこそぐ。
 唾液を飲み干されては送り返してくる。
 そうされるうちに身体を這い回る感触に気付く。


「ロサキネンシス……」
 声の方に黒目だけを向けると祐巳ちゃんが私に身体を合わせてきていた。
 控えめな胸、薄い体毛、祐巳ちゃんも何も身につけていない。
 でもそれは大人の身体になってしまった私と違い、少女らしいみずみずしさに満ちている。
 さらさらとした祐巳ちゃんの肌の感触に感情の一部が抗えなくなる。
「ロサキネンシスたらあなたを見つめていてよ」
「恥ずかしい、ですけど、、うれしいです」
 この狂った宴にあってこんな会話をする二人に気が遠くなる。
 しかし膝を曲げながら押し広げられ、完全に陰部を晒されようとすれば再び心が抗い始める。
「やめなさい!やめて!ダメ!ダメー!」
「こんなに潤っておられるなんて。ロサキネンシスもこうなるんですね」
「祐巳にとっては好都合ね。頑張るのよ」
 祐巳ちゃんは、はい!と張り切った返事を返して、私に片足を絡める様にしながら陰部同士を合わせ始める。
「ダメよ祐巳ちゃん、ダメ、ダメ、や、いやぁー!!」
「今日のために剃毛してきたんです。『貝合わせ』、させていただきますね」
 ぴちゃり、ぐち、ぬち、ぐち、ぬち、ぐち………
 湿った淫猥な音が周期的に、そしてどんどん早くなってゆく。
 見知った生徒達の前でこんなことを、そう思ってこらえようとしても、いつの間にか声が止まらなくなっている。
 狂信者達が取り囲む祭壇で行われる、魔女と生け贄による饗宴。そうだこれはサバトなのだ。
「ロサキネンシス、みんなロサキネンシスが大好きなんです」
 荒い呼吸の中で祐巳ちゃんが恐ろしい呪文を口にする。

美しく凛々しくお優しいロサキネンシス
わたしもお姉様もみんなみんなロサキネンシスをお慕い申しておりました
でも、ロサキネンシスは卒業なさるだけでなく
外部の大学を選ばれてリリアンからいなくなっておしまいになる
わたし達を置いてリリアンを去ってしまわれる
それならば、ロサキネンシス
せめて私たちに良き思い出を
そしてロサキネンシスにも
一生涯消し去ることの出来ぬ、思い出を。


 いつの間にか私は目を固く閉じ、一年生の祐巳ちゃんの動きに身を任せていた。
 押さえつけられている痛みは感じず、私と祐巳ちゃんの繋がりだけに意識が集中してしまう。
 時折身体の奥が暴れ出す瞬間があって、子宮なのか膣なのか下半身の温度が上がる感じがする。
 その時は祐巳ちゃんとの感触が滑らかになるから、軽くイってしまって愛液を垂れ流したのだとわかる。
 祐巳ちゃんも何度か声が裏返りリズムが乱れ、感触が滑らかになる。
 きっと感じやすくて多いのだろう、その度祐巳ちゃんの愛液も熱さが私のお尻どころか背中までしたたり落ちる。
 そして私達にとって丁度だった早さが急に速度を増し、祐巳ちゃんの声が嬌声から絶叫へと。
 私もそんな祐巳ちゃんに強制的に絶頂へと引き摺り上げられる。
「イイっちゃう!イっちゃう!イっちゃう!イっちゃう!イっちゃう!イっちゃう!イっちゃう!イっちゃう!」
「祐巳ちゃっ、祐巳ちっ、祐巳っ、祐巳っ、ゆみっ、ゆみっ、ゆっ、ゆっゆみぃぃぃぃぃぃっ!!」
 一瞬身体が熱量だけの存在になって重力から解き放たれる。

「妬けましてよお姉さま」
 祥子の一言が私を現実に引き戻す。
「ゆみ、ゆみ、ってはしたない口調で何度も何度も。いつもの『祐巳ちゃん』はどうされたのかしら」
 祥子はプリーツの左右をたくし上げてショーツを脱ぎながら、そんな軽口を叩く。
「それに祐巳も祐巳よ。あんなに何度もイくなんて本当にはしたなくてよ」
「はっはぁぁっ、すみません、でした、お姉さま・・・」
 すかさず生徒達から声が挙がる。
「ロサキネンシスと祐巳さん、本当にお綺麗でした!もう一生忘れません」
「祐巳さんも素敵でした!祐巳さんって分かり易いから私もつい一緒にきゅって…」
「ロサキネンシスも私達のことを忘れられて祐巳さんと二人っきりみたいな表情で・・・ドキドキしました」
 真っ赤になり目を白黒させる祐巳ちゃん。
 またプリーツをたくし、ショーツの代りに黒いベルトのようなものを身につけながら、祥子は続ける。
「だからこそ妬けるの。祐巳、早速罰を与えるわ」
『皆様、ここでみんなでロサキネンシスの蜜をいただくというのはどうでしょうか』
 そうして微笑みながら祐巳ちゃんに視線を変え。
「私の妹の蜜も混ざっていてもよろしければ、ですが。」
 場違いな黄色い歓声が上がる。
「へっ。わわわっ!お姉さまやめてください、恥ずかしいですー」
「だ、め、よ」


 生徒達はかわるがわる私の下半身に舌を這わせ出した。
 クリトリスや内陰唇を舐め回すもの。
 膣口から汲み出そうと舌を入れてくるもの。
 内腿に張付いたオリモノをすするものや、身体をつたって白く乾いた愛液をナメクジの様に舌で舐め取るものもいた。
 みんなはわざと音を立てて、私の被虐感を高めようとしている。
 それがわかっていてもその下品な音のせいで私は愛液を止めることが出来ず悔しさがこみあげてくる。
 そして手足を押さえていた者もするりと交代して参加するその手際の良さに、私は逃げられないのだと絶望する。

 私以外から湿った音が聞こえ始め、目をやると…祥子にかしずき頭を前後する祐巳ちゃんがいた。
 祥子は制服を脱ぎ上半身はタンクトップだけ、下半身は股間に張付く黒いベルト、そして…張り型。
「ひッ」
「お姉さまに見つかってしまいましたか。私はこのペニスバンドでお姉さまへの思いを遂げたいと思っていますの。」
「やめて、、、やめて祥子、、、そんなの、、そんなの!」
「祐巳、もっと濡らしてちょうだい」
 その言葉の返事を目で返す祐巳ちゃん。未だに何も着ていない。
 祐巳ちゃんの唇から見え隠れする張り型は案外太くない…でもあんなものを入れられたくないと思っていたが。
 もういいわ、と言われ祐巳ちゃんが口から出したそれは、ずるずる、ずるずるとまるで手品のように途切れない。
「あ、あ、ああ…そんな…そんな……」
「ッぷはぁっ、はぁっ、はぁっ、お姉さま、これきっと食道まで届いてましたよ、はぁっ、はぁっ」
「直ぐに気持ちよくなっていただきたいから太さよりも長さをと思いまして。これなら子宮まで届きますわ」
 テーブルによじ登る祥子の振る舞いは場違いな程しとやかだった。
 だが再びその股間にあるものが目に入ると、自分でもまだこんな力が残っていたかと思うほど私は抵抗した。
 手足にそれぞれもう一人ずつ付いても、祥子が私を「お見苦しいですわよ!」と恫喝しても、抵抗を続けた。
 しかし先端が膣口にあてがわれズッと挿入を始められると、もう手足を真っ直ぐ突っぱねることしか出来ない。
「だめ、入れないで、そんなの入れなっあぁっあぁぁぁあぁぁぁぁっ、いっいやぁぁぁぁぁ!」
 妹によってこじ開けられた感触に痛みと寒気が走る。
 同時になぜか涙が溢れてくる。嗚咽が漏れ、止められなくなってくる。
「あ、お姉さま…」
「なに、祐巳」
「…ロサキネンシス……出血されてません」
 祐巳ちゃんの言葉に場が騒然とし凍り付く。
 痛みよりもその空気の急変に私は恐怖する。


「どういう事ですの、お姉さま」
 祥子の口調は静かだったが、目は端正な顔が崩れるかと思うほどつり上がっている。
「知ら…な…い…」
「大事なことですのよお姉さま、妹の私にならお話しいただけますよね」
「知らないわ…知らない……」
「嘘をおっしゃい!」
 祥子の激高し手を振り上げるその形相に心を潰され、私は思わず目を閉じる。
 しかし、手は振り下ろされなかった。
 祐巳ちゃんが祥子の腕を抱くようにして止めてくれていた。
「ロサキネンシスにそんなことをされてはいけません…」
「……ありがとう、祐巳、私ったらお姉さまを傷つけてしまうところだったわ」
 祐巳ちゃんは私と祥子に割り込み、脇から私の上半身を抱きしめてくれた。
 お互い裸だから触れあったところは冷たかったが、すぐ暖かくなった。
 さらさらの肌に包まれた薄い胸が私の胸に重なる。
 頬と頬が重ねられ祐巳ちゃんの高い体温が伝わってくる。
「ロサキネンシス…」
「祐巳ちゃん……」
 顔を上げにっこりとやさしく祐巳ちゃんが微笑む。
「…『始めて』はどうされたのか、教えていただけますよね……」
 絶望が私を包む。ここには私を助けてくれるものは一人もいない。
 祐巳ちゃんは放心し無言になった私の胸をわしづかみにし始める。
 爪が乳房に食い込み非道く痛い。
「いっ痛いっ!止めてーーっ!祐巳ちゃん、お願い、痛いーーーっ」
「…教えていただけますよね……」
 手を弛め笑顔で聞き直す祐巳ちゃんが恐ろしくて、また言いよどんでしまう。
 私の小さな胸は掴みにくかったのか、今度は細い指で乳首と乳輪をぎゅうと挟み、上下左右に引きちぎろうとする。
「あっあぁっ痛い痛い痛いっちぎっ千切れちゃうっ止めて止めてやめてぇぇぇっ!!」
 祐巳ちゃんの指は容赦なく、引っ張る方向が変わる度に私はわめくしかなかった。
 それでも祐巳ちゃんは笑みを絶やさぬまま私の胸を蹂躙し続け、私の声が弱まり哀願に変わるまで止まらなかった。
「…さぁお話しいただけますね、ロサキネンシス」


 みんなに取り囲まれながら恥ずかしい告白をさせられる。
 もう『あの痛みに苛まれるぐらいならなんでもする』ところまで追い込まれている。
 どんどん、追い込まれている。

「オナ、オナニーしていて……」
「オナニーですか」
「そう…中等部の時、ちょっと激しくしてしまって……」
「何か入れておられたんですか」
「いえ、指だったけれど、ほんの少し出血があって…多分そのとき……」
「オナニーは初等部の頃からされていたんですか」
「小学生の時から…中学受験でいらいらしていて…」
「だから出血が少なかったのかも知れませんね。男性経験はいかがですか」
「いえ、無い…誰ともそんなことしてない……信じて…祐巳ちゃん信じて……」
 祐巳ちゃんは『信じますよ』という微笑みを浮かべ、そして身体を起こし祥子の方へと振り返る。
 祥子も先ほどとはうってかわった、まるで花のような笑顔で私を迎える。
 亀裂の入った私の心を包み込むように、微笑む。
 
お姉さま
私はお姉さまから沢山愛していただきました
そして沢山のものを受け取りました
でも私からお姉さまに差し上げたものはあったでしょうか
受け取っていただけたものはあったでしょうか
お姉さまの愛を沢山受け取って、私の心はもう破裂してしまいそう
でも私をそうさせたお姉さまの心の中には私はどれだけあるのでしょうか
リリアンを去ってしまわれるお姉さまの心の中に私はどれだけあるのでしょうか
お姉さまからの愛はわずかほども疑ってはおりません
でもお姉さまの中にいるはずの私は
お姉さまにとって私はどれだけの存在だったのでしょうか
だからお姉さまがリリアンを去ってしまわれる前に
お姉さまの心に私を刻みつけなければならないのです
お姉さまの純潔をえぐり取り二度と癒えぬ傷を与えるのは私でなければならないのです。


 出血こそ無かったが始めて異物を押し込まれた痛みと不快感は耐え難かった。
 そして祥子の言葉は私に、私がどんなに願いすがっても無駄であることを思い知らせた。
 だから私にはもう泣きじゃくるしかなかった。
 ぼろぼろ涙をこぼし、わぁわぁとだらしなく泣くことしか。
 それでも祥子の動きに合わせて泣き声が大小し、その滑稽さがまた私を惨めにさせた。
 そんな顔をぐしゃぐしゃにして身体を強ばらせる私に祥子は裏返しのやさしさをみせる。
「祐巳、ロサキネンシスが痛くないように時々ローションを補充してね」
「承知しましたお姉さま」
「お姉さま少し我慢下さいね、まだまだこれからなのですから」
 その言葉通りだった。
 入って、出て、来て、戻る。押し込まれ、引き抜かれる。
 その度にほんの少しずつ深く、張り型は私の中に入ってきた。
 じりじりとこじ開けられ引き裂かれていく恐怖が高まってくる。
 時々ひやりとするのは祐巳ちゃんがローションを垂らしているのだろう。
 その様子が頭に浮かぶ。
 両手を押さえつけられ膝を割られて全てを丸出しにしている私。
 私に覆い被さり長い長い張り型で私の内臓まで犯そうとする祥子。
 その結合部に顔を寄せローションを垂らしながら観察している祐巳ちゃん。
 そのときの祐巳ちゃんは。
 祐巳ちゃんの表情は。
 さっきの祐巳ちゃんの表情・・・私の胸を引きちぎろうとしたときの表情・・・
 にっこりと笑いながら、でも容赦なかった祐巳ちゃんの。
 つり上がった唇から除く白い歯。瞳の中の、暗闇。
 恐怖が沸点に達し、その瞬間また絶叫をあげ身体が暴れ出してしまう。
 しかし突然で祥子も驚いたのか、押さえつけよう覆い被さろうとして。
 私も腰を突き上げるようになってしまい。
 そのはずみで私は一気に深く貫かれる。
「あひぃぃっ!っがはっあぁああああぁーーーーーーっ!!!」
 目の前が再び真っ白になった。


 お腹の中の鈍痛と熱さに意識が戻ってくると、祥子の心配そうな表情がみえた。
 祥子、どうしたの。そんな顔をしないで。何があったの。祐巳ちゃんと何かあったの……。
 あ、笑みが浮かんだ。よかった、祥子、よかった。
「よかった、お姉さま、気を失って、おられたん、ですよ、」
 祥子の言葉の強弱に合わせて身体がきしみ灼熱の波が押し寄せてくる。
 今の私の憐憫は何だったのだと、再び涙と嗚咽が止まらなくなる。
 私が失神しても祥子は容赦なく私を犯し続けていたのだ、そんな祥子に私は。私は。
「でももう安心ですわ。ねっ祐巳」
「なにが、何が安心なのヨォォォーー!アァァァーーー!」
「ロサキネンシスはもうご自分の愛液ですっかり潤っておられるんですよ」
「私が突き上げる度にお姉さまが反応され始めたときは本当にうれしくなりましたわ」
 その通り…であることに愕然とする。
 いつの間にか私は身体は張り型の大きさに慣らされ、祥子の動きに合わせてあえぎ、腰を振っていた。
 浅く、浅く、深く。浅く、浅く、深く。浅く、浅く、深く。
 浅く突かれるごとにむず痒いような快感が生まれる。
 深く子宮を突かれると身体中に痺れるような衝撃が生まれる。
 それが幾度も繰り返され、快感も幾重にも折り重なっていって少しずつ私を押し上げてゆく。
 祥子は私の高まりに合わせて周期を早め、動きも激しくなってくる。
 祥子にイキそうなことを見透かされ恥ずかしい、しかしそんな思いとは逆に身体がはじけそうになってゆく。
 イキそう、イキそう、あ、あ、あ、ああああああぁぁぁイク、イク、イクイクイクイクイクイクイクイク……
 そんな時、急に祥子の動きが止まる。
「祐巳」
「へっ。は、はいお姉さま、何でしょうか」
「…私の動きに合わせて歌うのはおよしなさい」
「そっそんなことしてませんけど…」
「ブツブツと聞こえたわよ、こんな時に『マリア様の心』を口ずさむなんてまったく」
「わっわっわっすみません!」
 どっと笑いが起こる。
 その笑いは絶頂の寸前で止められ、必死に腰を振って続きをせがむ私を嘲笑するように聞こえる。
 そうだ。その時私はそんな姿を晒してでも祥子の張り型に突き上げられたくて仕方がなかったのだ。
 惨めさがつのる。


 祥子の動きはまたゆっくりしたものに戻り、私は歯を食いしばろうとした。
 そうでなければこの煮えたぎるような疼きに耐えられそうもない、そう思った。
 こんな目に遭わされながら尻を振って欲しがる女だと思われたくない。
 だがもうあごに力が入らず、あう、あう、とうめくことしかできない。
 それでも何とか口を閉じようとしていると、今度は腰をくねらすことを押さえきれない。
 だめだ、私はまだ人だ。まだ、まだ人間でいたい。
 おおげさかもしれないが、私はまだ大真面目にそんなことを考えていた。
 祥子はそんな私の葛藤を承知の上で、張り型の動きを早めようとしない。
「あぁっうっううっ!」
 お尻に何か、入って来る!
「んっんんっんんん〜〜〜っ!」」
「お姉さま、ど、どうかなさいましたか!?」
「…すみませんお姉さま、わたしのせいです。ロサキネンシスのお尻、てらてら濡れてひくひくしていたので…」
「つい指を入れてしまった……ということね」
「申し訳ありません……」
「良いわよ、祐巳。そのまま手伝ってちょうだい」
「はっはい!頑張りますお姉さま!」
 祐巳ちゃんはそのまま私のお尻を蹂躙する。
 祥子も負けじとお腹の奥まで突き上げ始めた。
 祐巳ちゃんの指使いは祥子の動きと同時だったり、段々同期がずれて交互になったり。
 前と後ろが奏でる祥子と祐巳ちゃんによるハーモニーは私を夢中にさせてくれた。
 私はひいひいよだれを垂らしながらあえぎ、祥子と祐巳ちゃんの名を何度も叫び、イク、イク、と声が裏返るまで連呼し続けた。
 ありがたかった。
 私は祐巳ちゃんのおかげで、一瞬でもこの現実から離れることが出来たのだから。
 イクゥ〜と、肺の中が空になるまで絶叫しながら、意識が遠ざかっていった。


 異臭で目が覚めた。
 なにか体中にまとわりいてとても重い。
 顔になにか熱いものがべちゃりと張付いていて不快になる。
 何か最初はわからなかったが、顔を背けながら横目で見ると、それはぱっくりと開いた女性器。
「ロサキネンシス、お目覚めになったんですね」
 遠くからそんな声と、それから歓声が聞こえる。
「私の…舐めていただきますね」
 そんな声と共にぐしゃぐしゃのそれを口に押しつけられる。そうか、これの臭いだったのね……。
 多分さっきから顔の上に座わり擦りつけていたのだろう、私は舌を這わしてその動きに答える。
「あああぁあぁっ、うれしい、ロサキネンシス、ずっと夢見てきたんです、あなたと、あなたとぉぉっ」
 すすり泣く声、その告白は歓喜に満ちていた。
 私の身体は床に敷いたマットに降ろされ、全裸の少女達が群がっていた。
 両腕にも腿にも臑にも少女達は性器を押しつけ激しく擦りつけている。
 手の指も足の指もべたべたに舐められ、彼女達のクリトリスや膣の中、肛門の中にまで導かれている。
 もう身体を動かす力は残っていないけれどせめてと思い指を動かしてあげると、途端に喜びの声があがる。
 私の膣や肛門も誰かが弄んでいて、私をまた絶頂に押し上げ、そのまま昂ぶらせ続ける。
 馬鹿になってしまうぐらい気持ちよかったけれど、お返しは出来ないから、ひたすら顔の上の性器をしゃぶった。
 少女達は絶頂を迎える度に何度も何度も入れ替わり、常に私の全身に愛液を塗り込み続けている。
 時折何人かが嬌声を合わせて同時に絶頂に至り、崩れそうな姿勢を抱き合って支えたりする。
 そんな時の彼女達は美しかった。
 だから、次から次へと私の顔に押しつけられる性器もすべて愛おしいと思った。
 舌で恥毛をかき分け、包皮をねぶりクリトリスをほじってぐるぐる舐め回し。
 尿道を吸い膣から愛液をすすり出して。
 途渡りにねっとりと唇を這わし肛門にも舌をねじ込んであげる。
 あ、このほくろは…さっきも舐めてあげた子だわ……いいわ、何度でも舐めてあげる。
 何度でも何度でもイって、イって、イってちょうだいっ
 その代り私を、イ、イ、イかせてッ、もっと、もっと、イカせてッ、イッ、イカセテッ、イカセテッ、えぇぇ……


 マットの上に一人横たわる私。
 あごが痛い。
 全身がひりひり熱い。
 少し動こうとすると顔や身体から乾燥した愛液がパサパサと粉末になって剥がれて落ちる。
 ところどころぬるぬるするのは漏らした小水で愛液がもとの粘液に戻ったせいか。

 「お姉さま」
 祥子は私の横たわるマットのすぐ側でひざまづいていた。
 そのとなりには祐巳ちゃん。
 そして私達を取り囲むように、みんながいた。

「さようなら……ロサキネンシス」

お姉さまはいつでも私達みんなのお姉さまでした
でもふとした折りに垣間見えたお姉さまの伏し目がちな表情
お姉さまは本当は
本当はロサキネンシスであるご自身がたまらなく厭だったのではありませんか?
もうご卒業なさるお姉さま
私達は今日いただいた思い出を心にしまって、
この思いを断ち切ります
もう『薔薇様』でなく『蓉子さま』にお戻り下さい
そしてもしお許しいただけるなら
お姉さまの重荷にならぬように、また
『お姉さま』、『蓉子さま』と呼ばせて下さい
さようなら、ロサキネンシス

 みな目には涙を溜めていたが、表情は明るかった。
 祥子にも祐巳ちゃんにもさっきまでの影はひとかけらもなかった。
 また目を閉じる。
 あんな目にあったのに、なぜか多幸感に包まれてゆく。
 暖かくなってゆく。


 卒業式当日。
 それでも、またやってしまった。
 病欠の卒業生の分の白いコサージュを二年生から預かる。
 それをてのひらに乗せて、なかなか変われないものだなとと思う。
 脱皮したてのように、まだ身体がギシギシきしむ。
 だがそれをつらいとは思わない。

 廊下に整列する時間だと、クラス委員が呼びかけ始めた。

 さぁ、卒業式が始まる。



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