心と身体は一体ではない、というのが実感。
栞が好きだったし、今は景さんに心ひかれる。
でも、栞とは心通わす意味で抱き合ったりキスしたりしただけ。
景さんとだって一緒にいるだけで、気持ちの外側の殻が溶けてゆくような心地よさはあるけれど。
性行為に及ぼうなんて考えもよらない。

自慰に耽るとき、栞のことを思い出すことがある。
でも、それは今では抱きしめた時の感触だけ。
思い出を穢したくないからとか、背徳感からではないと思う。
景さんの下宿で一緒に過ごす時。
マニッシュな景さんがふと女性らしい仕草を見せた時にちょっとどきりとする。
でもそれまで。
栞は天使。景さんは親友。
例え性欲を昂ぶらせて混濁した意識の中でその表情が浮かんでも、それはファンタジーを形成するモザイクのひとかけら。

祐巳ちゃん。
慌てようが面白くて、つい構ってしまう。
特に祥子の前でなんて最高だ。
抱きついてた時の反応も楽しい。
それにそんなときでも祐巳ちゃんはあばれたりしない。
びっくりしていても人を怪我させたりしないようにしてしまうのだろう。
これが本当の狸寝入り、なんていっても許してくれるだろうか。
たった今。私の腕に絡め取られた君に。



まだ日が高い時間、バス亭に立つ祐巳ちゃん。
うれしい偶然だったからつい声を掛けた。
遊びに来ない?って。

ここからが見ものだった。
表情が真剣だから、宿題のことかな?
ちょっと緩んだな、予習復習かおうちのお手伝いのこと?
目線がくるりって、きっとテレビのことだろう。
そして瞳がまたくるり。私の瞳をみつめて。
うれしいです、よろしければぜひ!

バスの中でその話をしたところも、また見ものだった。
ぷくーとなったり、真っ赤になったり。
そして、よくわかりますねって尊敬?された。
その時の瞳は少しだけ曇っていた。

同世代の女の子ってどういうことが楽しいのかよくわからない。
だから私の部屋にはあまり余り祐巳ちゃんの面白がるものってないと思っていた。
でもお茶を飲みながら予習を見てあげている間中、祐巳ちゃんはいろんなものに興味を示した。
でもきっとそのもの自体が面白いのではない。
それらは私を形作っているもののひとつだからだろう。

テキスト等をかばんにしまい、少なくなったミルクティーを飲み干して。
祐巳ちゃんの目が期待でキラキラ輝いている。
そんなわけはないのに、私の部屋が宝物であふれている様に。



難しそうですね、この本
うん、だから私も読んでない
そ、そうですか
そんなもんだよ

この三個組の小物、かわいいですね
蓉子にもらったの。江利子も持ってるよ
そうなんですか、仲良し三人組の友情のあかし、じゃないですか?
だからこいつの、つるんとした頭は江利子のおでこだと思うのよね〜
、、そ、そんなつもりでプレゼントするおひとじゃありませんよ!違います!

祐巳ちゃんは、はしたなくてすみませんと謝りながら、でも笑って説明する私がうれしいのか、お宝探しを続ける。
ちゃんと私のプライバシーに繋がりそうなものを避けながら。
人の心を大切にする、やさしい子。

ベットサイドの目覚し時計。
ちょっと変わった形をしていて、祐巳ちゃんはそれに手を伸ばす。
失礼します、といってベットに膝をつき、手をつき、もう一方の手を時計に伸ばす。
祐巳ちゃんのおしりがぴょこん、ってなって。
私もそれを追いかけてベットへ。

私の気配を感じてちょっとこちらに振り返った表情はきょとんっとしていた。
そのまま腰を抱きながら、横になるようにベットに押す。
わっわっわわわっ
そういってびっくり顔になる。



祐巳ちゃんのことは好きだ。
でも栞や景さんとは違う。
私に信頼を寄せる後輩であり。
私を癒してくれた下級生であり。
私や仲間に大きな影響を与えてくれた存在であり。
そして欲情の対象である。

卒業式の前日。
放課後。
頬へのキス。
あのシークェンスは何度となく私のファンタジーに現れた。
私から駆け出し、すぐ立ち止まって振り向く。
怯えているかのごとくふるえながら、両こぶしを強く握り締める。
本当に困りながら、頬を紅く染める。
こちらを見る瞳が小動物のように。
でも、次の瞬間、その瞳には。
光がさし、力が宿り。
草原を駈けるように私に近づき、一気に目の前まで。
その時、私は祐巳ちゃんとひとつに重なる。
私は祐巳ちゃんになる。
私も祐巳ちゃんのように鼓動が早鐘を打つ。
スローモーションのように二人の距離は縮まる。
距離がなくなる。
ゆっくりと、手のひらに背中を感じ、背中に手が廻されて抱きしめられてゆくさまを感じる。
そして私の頬と唇はぽぅっと暖かくなる。
喜びと高揚。
暖かみは熱へと変わり、私は絶頂を迎える。



私は祐巳ちゃんに性欲を感じる。しかし愛しているとは思いにくい。
もちろん栞への罪悪感なんてものを抜きにしてもだ。
なにせあのファンタジーの中の私は祐巳ちゃんのような子に愛される私で。
ファンタジーの中の祐巳ちゃんは祐巳ちゃんのようになれた私なのだから。

とりあえずベットに押し倒してしまったが、この和んだ雰囲気の最中、当然欲情していたわけではない。
いつものスキンシップ。
この子狸ちゃんを、ちょっと抱きしめて、困らせて、にかっと笑って、おしまいにす、、。

祐巳ちゃんが、何かつぶやく。

わたしが、ほしい、ですか?

映像と音声が合っていない感じがした。

硬直する。
硬直してしまったことに、焦る。
マズい。
祐巳ちゃんは何を言い出すんだ?
わかっているのにそんなことを考え、つい目を見てしまう。
その瞳が語るささやきを聞いてしまう。
いつものスキンシップ、いつもの冗談。
もうそんなことで終わらせることはできない。
一線(俗な言い方だが)を越えるか。
二度と会わないか。
どちらかを選ぶしかない。



何を考えているかわからない。
祐巳ちゃんは表情も仕草も硬く。
でも表情にも瞳にも。
軽蔑とか畏れとかそんなものはなかった。
私に抱かれることを覚悟している。

胸に刻まれた、自分から一歩退く、と言う言葉。
でも。
頬へのキス。
一歩、私に踏み込んできて。
今の一言。
祐巳ちゃんはまた一歩、私に踏み込んできた。
私は反射的に一歩退こうとする。

私が好き?
はい
私の気持ちを知っているの
、、恋愛の相手とは思っていただけてないことはわかっています、、

祐巳ちゃんはどうなの?
、、、
祐巳ちゃんの気持ちを知りたい。祐巳ちゃんにとって私は恋愛の対象なのか
、、、



無言になる祐巳ちゃん。
祐巳ちゃんは正直だ。今なら引き返せる。祐巳ちゃんにはそれを可能にする存在がいるから。

祥子のこと、好きなんでしょ


しかし、それは逆に。
扉を開ける鍵だった。


祐巳ちゃんはタイをほどいた。
しゅるり。
その小さな音はしかし部屋の静寂のなかで大きく。
不在をわかっているのに、家族に聞こえないかとどきりとする。
祐巳ちゃんの手が背中に廻される。
されるがままに身を寄せてしまい、そのまま口付ける。
祐巳ちゃんの腕にだんだん力が入り、強く唇を押し付けられる。
そのキスは不慣れで不恰好。でも秘められていたのは激情だった。
その激情にめまいを覚え、ふらふらになる。

間抜けな話だが本当に覚えていない。
いつのまにか、私はタンクトップしか身に纏わず。
祐巳ちゃんも制服を脱ぎショーツだけになっており。
私の右手はそのショーツの中に差し入れられていた。



二人とも横になって、背中から祐巳ちゃんを抱くような格好。
左手は人差し指で乳首を転がす。
右手は中指でお尻近くから陰核へ何度も何度もなぞる。
祐巳ちゃんの粘液を塗りこめるように、何度も何度も。
そうしながら、うなじにキスをする。
正直、セックスなんて初めてでどうしたらいいかわからなかった。
だから、いつも自分でしているようにするしかなかった。
だから。
左の人差し指で。
右の中指で。
キスで。
それらの動きにシンクロして嬌声をあげる祐巳ちゃんに気付いた時。
やっと私もセックスの快楽を感じることができた。
祐巳ちゃんのキスのように私の愛撫も不器用だった。

やさしく。
時に早く。
タイミングを外したり、じらしたり。

そして人差し指は陰核に集中する。
包皮と粘液の中で激しく踊らせる。
自分自身でしているかのような錯覚を覚える。



祐巳ちゃんへの尋問を開始する。
祐巳ちゃんのために。

なぜ、こんなことをするの?
好き、、だから
私でなく、祥子が好きだから、だよね
はい、お姉さま、が好き、だから
こんなこと、裏切ることにならない?
違いま、す、
何が違うの?

いつのまにか祐巳ちゃんはぼろぼろと泣き出していた。
執拗な愛撫の快楽のなかで、泣きながら懺悔を始めた。

お姉さま、と、一緒に、いたい
お姉さまと、お話、したい
お姉さまに、誉められ、たい
お姉さまに怒られ、たい
お姉、さまと泣き、たい
そ、して、お姉さま、と、愛し合い、たいんっですぅっ

でも、お姉さまに、とって、私はいも、おとで
ここ、ろは、通って、いるって、信じたい、けれ、ど
けれ、ど、けれ、ど
このまま、では、わたし、はいもう、と、の、資格なん、てないん、です
今の、ままで、まん、ぞく、できない、わたしに
おねえ、さまに、こんな、気持ちに、なる、わたしに
罰を、罰を、下さいいぃ

ごめん、なさい、ごめん、なさい、ごめん、な、さい
でも、こんな、お願いが、できるのは、私には、私、には
ひとりしか、いない、ん、です
ごめん、なさい、ごめ、ん、なさいぃ



私は興奮していた。
祥子の祐巳ちゃんへの思い。
祐巳ちゃんの祥子への思い。
その食い違いはこんなにも祐巳ちゃんの心を苛み、燃やし尽くそうとしている。
祐巳ちゃんは祥子の思いのために、それにそぐわぬ自分の贖罪のために、自分を生贄として燃え盛る炎に身を投じたのだ。
本当は愛する人に捧げるべきな自分の身体を他にゆだねることで、自分の身を滅ぼすことで心を再生させようというのだ。
そしてその儀式の一切を執り行なっている司祭こそ、私なのだ。

乳首を親指と人差し指の爪でつぶし、耳たぶに歯を立てると、祐巳ちゃんは高い声をあげて、そしてぐったりとなった。
それに合わせるように私も全身に強いオーガズムを迎えた。
儀式は厳かに終わった。

まだ息は切れていたが、祐巳ちゃんを正面から抱きしめ直した。



見破られたとおり私は祐巳ちゃんを恋人にと思ったことはないよ
でも祐巳ちゃんでオナニーしたことは何度もあるよ
これは私からの懺悔
祐巳ちゃんだけ、なんてズルいからね
それに私とのこと気に病んじゃダメだよ
私にも心と身体がバラバラになりそうなぐらい、栞のことを思っていた、経験があるから
でも、ね
祐巳ちゃんのおかげで考えが変わったよ
祐巳ちゃんは私に抱かれて身体を犠牲にすることで
心のなかの祥子との思いを守ろうとしたんだと思う
でもそれは心と身体が結びついているからなんだ
やっぱりみんなひっくるめてひとつなんだ
だから心と身体をバラバラにしちゃだめだ
そうしないと今度は心がバラバラになっちゃうよ
もし、またそうなりそうなときはいつでもおいで
たくさんかわいがってあげる
私は祥子ではないけれど
祐巳ちゃんにとって、こんなことがお願いできるだたひとりの人なんでしょ

私の胸に泣きながらしがみつく祐巳ちゃん。
小さな声で。
でも、少しだけ力の戻った声で。

聖様のバカ
もうこんなこと二度とありません

ありがとうございます

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