「どうしちゃったんだろ。」
ため息がでる。
少し涙が出る。
祐巳の大事な姉、祥子。
尊敬と崇拝の気持ちは変わらない。
そんな憧れの人に気に留めて貰えたこと。
未熟だけれどその人の手助けができること。
そして、好きなの、と告げられて。
大好きです、と答えることができて。
お互いが必要な存在となれたこと。
もうそれ以上何を望むだろう。


薔薇の館でのデスクワーク。
声をかけられ、祐巳は祥子に寄り添うようにその椅子の斜め後ろに立つ。
仕事のお願い。
集められたプリントから要旨をまとめて欲しい。
祥子には何か考えがあるらしく色々と注文が付く。
祐巳は聞き漏らさぬよう気を配る。
同時に。
大きく首をかしげる。
祥子からも誰からも目を、見られぬように。
相づちも不自然にならぬように。

アイボリーのセーラーカラーの内側。
祥子の胸元。
その奥。
話に合わせプリントに目を落とすが、すぐにまた視線を戻す。
白い素肌。自分のような産毛の残る幼いそれでなく、大理石のようななめらかな素肌。
つい指が反応してしまい、その手を口元に持ってゆく。
考えるふりを取り繕う。
不意に祥子は片手で黒髪をかきあげる。
ブラの肩紐から脇までが覗いたが、祐巳は細心の注意を払い動じぬふりを保つ。
そして広がる髪のにおい。
肩も胸も腹部も動かさぬよう、でも出来る限り息を吸い込む。
鼻から肺に祥子の甘いにおいが流れ込み、血液に混ざって全身に広がってゆく。
手足の指先までサイダーのようにぴりぴりとする。
祥子はまだ話し続けている。
カラーの片方が少し浮いたままになり、肩紐が覗いたままになっている。
豊かな胸のせいで肩紐と肌の間が少し浮いている様までわかる。
祐巳は唇を開く。
〜はどうしましょうか?
これから話そうと思っていたところなの。
少し甘さを含んだ言葉が返ってくる。
察してもらえて祥子はうれしそうだ。
熱心に聞いている妹、でもその妹は視線を合わせない。
合わせられない。
知られてはいけない。
気づかれてはいけない。


夜、お風呂に入り今日のショーツも洗う。
湿ったままの内布に白い粘性のものがべっとりとつき自己嫌悪に陥る。
身体にも未だ残っていないかともう一度シャワーで洗う。
少し乱暴に。感じないように。感じることで姉をこれ以上穢さないように。
ため息がでる。
涙が出る。

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