「我々も行動を開始しよう」
御影草時は千唾馬宮の手を取ってエレベータに乗り地上へと向かう。
ふたりともタキシードに身を固めていた。
「ミツルさんたちの邪魔が出来ないよう、根室記念館のまわりにいるうるさい奴らを足止めする」
「ふたりだけで出来るでしょうか?」
「我々の後ろには百人の英霊がついている」
「毛唐の亡者など何人来ようが物の数ではないよ」
御影は馬宮の肩に腕を回し顔を上げるように背筋を伸ばさせた。
そうしながら御影は不思議に思っていた。
いったい自分は何時から、
あの魔性の娘にこれほど肩入れしていたのだろうか?

「ミツル、主催者挨拶も済んだからアンシーたちを迎えに行っても良いかな?」
「ええ、姉様」「是非、おふたりに紹介して頂きたいです」
ウテナはテラスの自分たちを見上げているアンシーとジャンヌに気付いていた。
ちょっと会釈して微笑んだのだけれど、ふたりはまるでウテナを見ていないようだった。
夜会の照明は雰囲気のある陰影を作り出すのために、
人の表情をハッキリと映し出しはしないから仕方ないのかも知れない。
でも、ふたりとも凄く恐ろしい顔をしてこちらを睨んでいるように見えた。
もし、噂通りオルレアンと剣財閥が抜き差しならないほどの対立関係であるならば、
自分がミツルにアンシーやジャンヌを引き合わせようとしているのは、
余計なお世話以外のなにものでもないのだろうか?
ウテナが知るアンシー。ウテナが知るジャンヌ。そしてウテナが知るミツル。
三人とも思いやりがあってそれぞれの深い優しさがある。
例え、所属する組織同士が対立していたとしても、
ウテナの知っている彼女たちならきっと判り合える。
仲良くなってくれる。
ウテナはそう信じて疑わなかった。
ただ、ウテナは心の中にほんの微かに頭を擡げたある考えを否定する為に、
三人に仲良くなってもらえると頑に信じようとしてるのかも知れないとは、
自分自身では気付いていなかった。

ウテナが思考として形になることを赦さずに打ち消していた考えとは、
アンシーとミツルは自分を取り合って争っているのではないかという疑い。
…まさかそんなことあるわけない…
ウテナは、あくまでその考えが形を成すことを赦さなかった。
自分の価値を客体化して評価するなど、
ウテナには全く不向きなことだったのだ。
また、例えそう出来たとしても、ミツルとアンシーのウテナに対する執着は、
常軌を逸した計り知れないものであったから、
この争いを避けるためにそう役立ちはしなかっただろう…。

夜会のメイン会場となっている根室記念館の1階ホールで、
ウテナを挟んで両者はついに対峙した。
「アンシー、ジャンヌさん。ようこそおいでくださいました」
「ボクの妹を紹介します」
ウテナは少し斜めになって自分の後ろにいた少女を直ぐ側に招き寄せる。
「初めまして、剣ミツルと申します」
「初めまして、姫宮アンシーです」
「ジャンヌ・ド・オルレアンです」
その19 その21
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